上 下
4 / 173
プロローグ

プロローグ④

しおりを挟む
 数あるコースの中から、リフレクソロジーコースを選んだ。
 リフレクソロジーとは、足裏健康法のこと。
 足裏には体の臓器や器官が反射されており、これを反射区と呼ぶらしい。
 親指は頭とか、踵は腰だとか。
 その足裏に反射している場所を、セラピストの指で刺激することによって、身体全体の健康促進に繋げるというもの。
 
 全てパンフレットに書いてあることしか頭に入っていないけど、イメージは湧く。
 だけど反射区とかの知識よりも、私の興味を駆り立てたのは、温もりを伝えるということ。
 ユウキの動かない足に、温もりを伝えたい。
 それができるのは、地球上で私しかいない気がする。
 鋼のように固い意志を纏った私は、他のページを開くことはしなかった。
 資格を取るなら、足専門のセラピスト、リフレクソロジスト一択だ。
 
 この話も何回も母に伝えているのに、一向に理解してくれない。
 その度に同じ熱量で話す、私の身にもなってほしい。

「ま、ナオが決めたならそれでいいけどさ。ほら、夕食の準備手伝って」

「はーい」

 それから毎朝、ユウキと会えば進路の話。
 その度に適当にあしらっていると、あっという間にセンター試験が終わった。
 物理的に行けなくなったのにも関わらず、今度は浪人してまでも大学に行けと言われる始末。
 ユウキは無事に、まあまあの大学に進学することが決まり、もちろん私の養成学校行きも決まった。

 中、高一緒だったユウキと、初めて違う学校に通う。
 それは心配でとても不安だけど、帰る家は同じマンション。
 寂しさは全く感じない。
 

 期待と覚悟を胸に抱き、新たな生活が始まろうとしている……。
しおりを挟む

処理中です...