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# 春

きっとそれは恋だと思う④

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 ミートドリアとカルボナーラ。二人で分けるようにマルゲリータも追加。
 いくら落ち込んでいても、お腹は空く。
 テーブルに並んだ料理たちは、あっさりと女子二人の胃袋に吸い込まれていった。
 食後のコーヒーで一服していると、入来ちゃんが突然、話題を変えて話し出した。

「そういえば前に聞けなかったけど、どうしてナオちゃんはリフレクソロジストを目指したの?」

「え……」

 それまでの話の流れとかには全く関係のない内容で、ドキッとしてしまう。
 私がリフレクソロジストを目指した理由……それは家族以外誰にも言わないようにしていたけど、目の前の穏やかな入来ちゃんを見ていたら、力がゆっくり抜けていくように感じた。
 こんなに心を許せているのに、どうして力が入っていたのだろう。
 別に隠す必要もないのに。
 もっと、みんなを信用してもいいはずなのに。
 今までごまかしていた、私の全てを語ることにした。

「大切な人がね、車イス生活なの」

「車イス生活?」

 急な話の入り方で、入来ちゃんが困った表情をしている。
 その表情には気づいていたけど、あえて止めずに話を続けた。

「そう。その子の足にね、どうしても人の温もりを感じさせてあげたくて。それでリフレクソロジストを目指したんだ」

 困惑していた入来ちゃんの顔つきが、納得した顔に変わっていく。
 私が話しやすいように、合いの手の中に絶妙な質問を織り交ぜてくる。


「その子は、同級生?」
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