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# 冬

温もり⑦

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「だから、そんな人……これから二度とは現れない。俺には、ナオしかあり得ないんだ! 今まで、気持ちを伝えられないでごめん! 今日素直に告白するよ。俺は……ナオが好きだ」

 スローモーションだった周りの人波が、今度は完全に止まったように見えた。
 その中でも、ユウキの一直線な視線だけは、容赦ないパワーを感じる。
 夢にまで見ていたユウキからの告白が、今現実となるなんて。
 だけど、現実世界の私は……嬉しさよりも悲しさの方が先行していた。
 戸部君とユウキ、どちらかを選ばなければいけなくなってしまった、この現実に。

「なーんて! ごめん、急に。別にナオから何か言ってもらいたいわけではないんだ。どうしても今日言いたくて。また落ち着いたら、ゆっくり話をしよう」

「うん、わかった……」

「あとさ」

「え?」

「試験、頑張れよ」

 握り拳を私に見せつけて、精一杯のエールを送る。
 私は十分なリアクションが取れず、真顔のままで頷いてしまった。
 ユウキはその返事を受け取ると、微笑みながらUターンをする。

「あ、すいません!」

 ユウキが振り返ると同時に、近くにいた男とぶつかってしまった。
 その謝罪の声で、周囲の雑踏がクリアに聞こえてくる。

「大丈夫です」

 ぶつかった男が会釈をしながら答えると、ユウキは一礼してから駅の方へと向かった。
 一方私は、その場を動くことができずに、言葉を失っている状態だ。
 焦点をゆっくり合わせると、目の前で立ち尽くしている男と目が合う。
 私は、さらに息を飲んだ。
 目の前でユウキとぶつかった男は、紛れもなく戸部君だったから。
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