155 / 173
# 冬
温もり⑦
しおりを挟む
「だから、そんな人……これから二度とは現れない。俺には、ナオしかあり得ないんだ! 今まで、気持ちを伝えられないでごめん! 今日素直に告白するよ。俺は……ナオが好きだ」
スローモーションだった周りの人波が、今度は完全に止まったように見えた。
その中でも、ユウキの一直線な視線だけは、容赦ないパワーを感じる。
夢にまで見ていたユウキからの告白が、今現実となるなんて。
だけど、現実世界の私は……嬉しさよりも悲しさの方が先行していた。
戸部君とユウキ、どちらかを選ばなければいけなくなってしまった、この現実に。
「なーんて! ごめん、急に。別にナオから何か言ってもらいたいわけではないんだ。どうしても今日言いたくて。また落ち着いたら、ゆっくり話をしよう」
「うん、わかった……」
「あとさ」
「え?」
「試験、頑張れよ」
握り拳を私に見せつけて、精一杯のエールを送る。
私は十分なリアクションが取れず、真顔のままで頷いてしまった。
ユウキはその返事を受け取ると、微笑みながらUターンをする。
「あ、すいません!」
ユウキが振り返ると同時に、近くにいた男とぶつかってしまった。
その謝罪の声で、周囲の雑踏がクリアに聞こえてくる。
「大丈夫です」
ぶつかった男が会釈をしながら答えると、ユウキは一礼してから駅の方へと向かった。
一方私は、その場を動くことができずに、言葉を失っている状態だ。
焦点をゆっくり合わせると、目の前で立ち尽くしている男と目が合う。
私は、さらに息を飲んだ。
目の前でユウキとぶつかった男は、紛れもなく戸部君だったから。
スローモーションだった周りの人波が、今度は完全に止まったように見えた。
その中でも、ユウキの一直線な視線だけは、容赦ないパワーを感じる。
夢にまで見ていたユウキからの告白が、今現実となるなんて。
だけど、現実世界の私は……嬉しさよりも悲しさの方が先行していた。
戸部君とユウキ、どちらかを選ばなければいけなくなってしまった、この現実に。
「なーんて! ごめん、急に。別にナオから何か言ってもらいたいわけではないんだ。どうしても今日言いたくて。また落ち着いたら、ゆっくり話をしよう」
「うん、わかった……」
「あとさ」
「え?」
「試験、頑張れよ」
握り拳を私に見せつけて、精一杯のエールを送る。
私は十分なリアクションが取れず、真顔のままで頷いてしまった。
ユウキはその返事を受け取ると、微笑みながらUターンをする。
「あ、すいません!」
ユウキが振り返ると同時に、近くにいた男とぶつかってしまった。
その謝罪の声で、周囲の雑踏がクリアに聞こえてくる。
「大丈夫です」
ぶつかった男が会釈をしながら答えると、ユウキは一礼してから駅の方へと向かった。
一方私は、その場を動くことができずに、言葉を失っている状態だ。
焦点をゆっくり合わせると、目の前で立ち尽くしている男と目が合う。
私は、さらに息を飲んだ。
目の前でユウキとぶつかった男は、紛れもなく戸部君だったから。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
0
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる