続・思わぬ収穫? ~見聞録~

七月 優

文字の大きさ
36 / 69
見聞録

Who is ラシャンピニョン夫人 ? ①

しおりを挟む
 秋の週末。
 夜の帳が下り、着飾った招待者たちが、続々と同じ目的地に集う。
 とある国の会場で、毎年この時期になると、舞踏会が催される。今年も例外なく、それは実施された。
 会場内は、白・黄・金を基調とした、ラグジュアリーな空間が広がっている。シャンデリアなどの照明の色や明るさも調節され、夜の雰囲気にぴったりだ。
 
「素敵な場所ね。ここで今から踊れるなんて、とても楽しみだわ」
「それは良かった」

 そんな会話をしながら入り口から姿を現した二人に、視線が集中する。歓談していたざわめきも、ぐっと弱まった。

 一人は、暗黒時代の英雄であり、ロムト国の王子。
 所々色合いの違う銀の短髪。夏空を思わせる瞳。無表情で愛想がない印象を与えるが、他者を惹きつける美貌。太くはないが細すぎもしない、二十歳前の若々しさのある、服を着ていても分かる鍛えられた体。
 身分と外見も相まって、王子は人目を惹きつけた。
 また、王子は社交に極力顔を出さないことでも有名だった。珍しい出席者に、招待客たちの目が向くのも無理はない。

イグナシオ様・・・・・・はやはり人気者ですわね」

 周囲の視線を面白そうに眺め、イグナシオにエスコートされる女性は笑みを刻む。
 イグナシオは嫌そうな顔を今夜のパートナーに向けた。

「その呼び方は止めろ。俺も今後ずっと、ラシャンピニョン・・・・・・・・夫人・・と呼び続けるぞ」
「まあまあ、冗談でしてよ。そこまで機嫌を悪くしないでくださいな、イオ。では、今宵の間だけ、私のことはアンと呼ぶのを、お忘れなきように」

 ラシャンピニョン夫人であり、アンと呼ぶらしい女性は、ほほ笑みを絶やさない。

「分かっている」

 イグナシオは真面目な顔で正面を向いた。
 イグナシオは指摘しなかったが、周囲に視線を送られているのは、どちらかと言えばアンの方だ。
 本来であれば、イグナシオが同伴するのは、今年結婚した妻である。しかし、イグナシオの隣に立つのは、彼女ではない。

 見るからに柔らかそうなふわふわの長い髪は、丁寧に結い上げられていた。パステルカラーのようなピンク色で、よく目を凝らすとパステルカラーのような黄色の髪も混じっている。
 おっとりとした印象をもたらす、垂れ目がちな目。瞳の色は黒く、好奇心で輝いて見えた。
 厚ぼったい唇、大きな胸を持つ豊満な体は、大人の女の色香を漂わせている。

 イグナシオの同伴者を務める謎の女性アンは、一体何者なのか? その疑問をぶつけるかのように、招待客たちの視線は彼女に向いた。
 イグナシオとアンは、その疑問に答えるつもりはないと言わんばかりに、視線を気にしていない風を装う。そしてそのまま、二人は招待者に最初の挨拶を交わした。
 挨拶は和やかに終わるかに見えたが、二人の去り際、ホスト側の一人娘がアンをさり気なく睨みつけた。
 敵視され、アンはにこっと笑顔を返す。
 余裕しゃくしゃくのアンが気に入らなかったのだろう。一人娘は明らかに表情を険しくする。

 女同士の戦いが、火蓋を切る。
 イグナシオはしれっとした顔で、見て見ぬ振りをした。

 その一部始終を、会場の大きな窓の外から、何者かが見守る。影は複数潜み、それらのつぶらな瞳は、一人娘の身を案じていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...