犬と殺人と夜の散歩

あらら

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隠し事

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「咲ちゃんさ、何かから逃げてるの?」

「ストーカーに狙われています。何て…。」

「別れた彼氏から逃げてるとか?」

咲はため息をついた。

「そうなんです…。」

「仕方ないよね、咲ちゃん可愛いし。」

「本当ですか?」

「うん、でもストーカーには気を付けないとね…。」

咲は、唸っている。

「彼氏どういう人間?」

「ナルシストです。自分と歩く女は美しくないと気がすまない男です。」

「そっかあ、それは面白いね。」

太郎は無精髭を触りながら言った。

「だから、咲ちゃんに執着するのか。」

「そうみたいです。」


「美しいのも罪だね。」

「あの…。木村さんの奥様はどんな人なんですか?」

「あずあずは、美人だぜ。」

いきなり春男が仮眠室の中に入って来て言った。

「やっぱり…。」

和製ジャンヌダルクは深いため息を吐いた。

「緑ちゃんも可愛いよ。」

「春男さんの奥さんですか?」

「そう、産休中のべっぴんさん。」

春男は照れている。


その時、咲のスマホが鳴った。

「ストーカー男?」

「はい…。」

太郎は、スマホを取って話し始めた。

「刑事の木村太郎です。咲さんに何か御用ですか?」

「誰だよ!俺は咲の彼氏なんだよ。」

「そっかあ、困ったな、もう彼女は君と別れて俺と付き合ってるんだよね。」

「ふざけるなよ!」

「ふざけてるのはお前だろ!警察舐めてるのか?」

太郎の、声色が変わった。
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