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恒例行事

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「俺は、消灯祭なんかには行かないぞ。」

ゆうは、寝袋の中から言った。

「ゆう君‥。」

渚が寂しげに呟いた。

「じゃあ、俺もここにいる。」

「お前は、行けよ。」

消灯祭は、暗黙の了解で男女が告白する行事なのだ。

「ゆう!さっきも言ったけど。」

「分かってるよ。でもな、俺は、女の子が好きだ。あと、今は彼女作る気はねーよ。」

誠は、ガックリしてパイプ椅子に座った。

渚も舞も沈黙してしまい椅子に座ってじっとしている。

沈黙に、耐えられずにゆうは寝袋から出て部室からも出て行った。

ゆうは、屋上に出た。

そこから消灯祭の様子を覗いた。

泣いてる女の子、喜んでガッツポーズを取る男子と入り乱れている。

ゆうは、ため息をついて寝転がった。

「ゆう君‥まだ、あの人の事、忘れられないの?」

渚がいつの間にか屋上に来ていた。

「あぁ。」

「そっか、忘れられるまでわたしは待ってるから。」

「サンキュー。」

そう、ゆうには、忘れられない人がいるのだ。

心の奥底に眠っている扉‥。
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