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5月5日 サ終のあと
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連休も残り2日。
昨日、昼に動いて夜はきちんと寝るなんていう規則正しい生活をしたせいか、翼はまさかの朝7時に目覚めた。昨日の残りのヨーグルトで朝食を済ませ、立ち上げたパソコンで情報収集をはじめる。
コマからのウィスコードにも気づいたが、今は見なかったことにしようと決めた。多少なりともカナタのことを知っているコマとやり取りをすれば、翼のなかにある覚悟のようなものが萎んでしまうような気がしたからだ。
「緊急終了ってシステムトラブル以外は書かれてないよなぁ……」
ここにきて一体どうしたのだろう。トラブルで配信が遅れることは珍しくない。だけど、翼が知る限り、終了が早まるというトラブルは聞いたことがなかった。
「18時ってことは、ちょっと早めにログインしないとサーバーに入れないよな」
つぶやきながら画面の端っこにあるデジタル時計を見つめる。時刻はちょうど10時を過ぎたところだった。
ユーリと約束をして、今まさに翼が約束を破った10時だ。
「なんだったのかな……」
一瞬ログインしようかとも考えた。だけど、結局その先を想像して怖くなった翼は、ログインすることができない。
「会いたい。もっと一緒に探索したかった……なんでサ終するんだよ……」
不完全なサーバーでも残しておいてくれれば、自然に消えるまで徐々に離れていけたかも知れないのに。恨みがとめどなく溢れて止まらない。
画面には縦長のSNSが静かに流れていっている。
#ありがとうARKLEGEND
タグを辿れば、いろんなプレイヤーの思い出が尽きることなく表示される。
――最後の伝説
検索をすると、こちらも真偽不明な考察が次々と現れた。ただ、そのどこにも、あの最後の部屋は出てこない。数件ヒットした最後の水路のポストには、同行者を求めるリプライがいくつもぶら下がっていた。
「見つけたのって俺らだけなのかな……」
あの貴重な資料の数々と、目を輝かせるユーリのスクリーンショットを振り返る。
時間があっという間に過ぎていった。
さすがに食欲もなくなって、ゼリー飲料で遅い昼食を済ませると、翼はギュッと唇を結びログインボタンを押した。
時刻は15時。
すでにアクセスはかなり遅くなっている。いったいどれだけのプレイヤーが集まっているのだろう。
もうだれとも繋がりのないカナタが、たったひとりで最後の探索にでかける。
カナタは真っ先にアンスターチェ山脈に向かった。
「夏の富士山じゃん」
プレイヤーの姿がこれまで見たことがないくらいひしめいていて、思わずひとり言で笑ってしまう。でも、カナタたちも最後はここで迎えようと約束をした。ARK LEGENDの世界でこの山頂がいちばん美しい景色を眺められるのだ。
サーバーがパンク寸前なのか、画面の切り替わりに大きなタイムラグが生じている。カナタはアンスターチェ山脈をあとにすると、思い出す限りの場所をゆっくりと訪ねて回った。
16時、17時――時間が過ぎるのが早い。
「もっとゆっくりでいいよ……まだ回りきれないから……」
思い出の場所は無限にある。笑ったストーリー、泣いたストーリー。誰かが作った不思議な伝説。
それから、ユーリとの思い出。
もうすぐ全部なくなるのだ。
「……最後、あそこにしよう……」
つぶやいて移動の泉に飛び込んだ。目閉じて開ける。
そこは、はじめてユーリと出会った神殿だった。もうすぐなくなるなんて思えないくらい、いつもどおりの景色がそこにある。
噴水は絶えることなく水を湛え、青々と茂った植物には蝶が舞っている。
カナタは石畳を逸れて木陰にそっと座った。視点を変えれば木漏れ日が木々のあいだからキラキラと揺らいでいる。
神殿を最後の場所に選んだプレイヤーたちが、居場所を決めたのか徐々に動かなくなっていく。
あと5分。
「地球の最後の瞬間とかってこんな感じなのかなぁ……」
どうすることもできないなら、もう運命を受け入れるしかない。ただ、ジッと――。
画面が電波障害を起こしたように歪む。プレイヤーたちの姿が、弾き飛ばされるように消えていく。ひとり、またひとり。
カナタの順番はどこだろう。
ありもしない衝撃に備えるため、翼は歯を食いしばった。
昨日、昼に動いて夜はきちんと寝るなんていう規則正しい生活をしたせいか、翼はまさかの朝7時に目覚めた。昨日の残りのヨーグルトで朝食を済ませ、立ち上げたパソコンで情報収集をはじめる。
コマからのウィスコードにも気づいたが、今は見なかったことにしようと決めた。多少なりともカナタのことを知っているコマとやり取りをすれば、翼のなかにある覚悟のようなものが萎んでしまうような気がしたからだ。
「緊急終了ってシステムトラブル以外は書かれてないよなぁ……」
ここにきて一体どうしたのだろう。トラブルで配信が遅れることは珍しくない。だけど、翼が知る限り、終了が早まるというトラブルは聞いたことがなかった。
「18時ってことは、ちょっと早めにログインしないとサーバーに入れないよな」
つぶやきながら画面の端っこにあるデジタル時計を見つめる。時刻はちょうど10時を過ぎたところだった。
ユーリと約束をして、今まさに翼が約束を破った10時だ。
「なんだったのかな……」
一瞬ログインしようかとも考えた。だけど、結局その先を想像して怖くなった翼は、ログインすることができない。
「会いたい。もっと一緒に探索したかった……なんでサ終するんだよ……」
不完全なサーバーでも残しておいてくれれば、自然に消えるまで徐々に離れていけたかも知れないのに。恨みがとめどなく溢れて止まらない。
画面には縦長のSNSが静かに流れていっている。
#ありがとうARKLEGEND
タグを辿れば、いろんなプレイヤーの思い出が尽きることなく表示される。
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検索をすると、こちらも真偽不明な考察が次々と現れた。ただ、そのどこにも、あの最後の部屋は出てこない。数件ヒットした最後の水路のポストには、同行者を求めるリプライがいくつもぶら下がっていた。
「見つけたのって俺らだけなのかな……」
あの貴重な資料の数々と、目を輝かせるユーリのスクリーンショットを振り返る。
時間があっという間に過ぎていった。
さすがに食欲もなくなって、ゼリー飲料で遅い昼食を済ませると、翼はギュッと唇を結びログインボタンを押した。
時刻は15時。
すでにアクセスはかなり遅くなっている。いったいどれだけのプレイヤーが集まっているのだろう。
もうだれとも繋がりのないカナタが、たったひとりで最後の探索にでかける。
カナタは真っ先にアンスターチェ山脈に向かった。
「夏の富士山じゃん」
プレイヤーの姿がこれまで見たことがないくらいひしめいていて、思わずひとり言で笑ってしまう。でも、カナタたちも最後はここで迎えようと約束をした。ARK LEGENDの世界でこの山頂がいちばん美しい景色を眺められるのだ。
サーバーがパンク寸前なのか、画面の切り替わりに大きなタイムラグが生じている。カナタはアンスターチェ山脈をあとにすると、思い出す限りの場所をゆっくりと訪ねて回った。
16時、17時――時間が過ぎるのが早い。
「もっとゆっくりでいいよ……まだ回りきれないから……」
思い出の場所は無限にある。笑ったストーリー、泣いたストーリー。誰かが作った不思議な伝説。
それから、ユーリとの思い出。
もうすぐ全部なくなるのだ。
「……最後、あそこにしよう……」
つぶやいて移動の泉に飛び込んだ。目閉じて開ける。
そこは、はじめてユーリと出会った神殿だった。もうすぐなくなるなんて思えないくらい、いつもどおりの景色がそこにある。
噴水は絶えることなく水を湛え、青々と茂った植物には蝶が舞っている。
カナタは石畳を逸れて木陰にそっと座った。視点を変えれば木漏れ日が木々のあいだからキラキラと揺らいでいる。
神殿を最後の場所に選んだプレイヤーたちが、居場所を決めたのか徐々に動かなくなっていく。
あと5分。
「地球の最後の瞬間とかってこんな感じなのかなぁ……」
どうすることもできないなら、もう運命を受け入れるしかない。ただ、ジッと――。
画面が電波障害を起こしたように歪む。プレイヤーたちの姿が、弾き飛ばされるように消えていく。ひとり、またひとり。
カナタの順番はどこだろう。
ありもしない衝撃に備えるため、翼は歯を食いしばった。
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