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Vegetablesー1-
2週目 金曜日 1
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多分ここでヘルパーをする最終日。二週間、長かったような短かったような――そう思うとちょっと寂しい気分になった。今日は特に腕によりをかけて料理しよう。
ツルさんとのまったり時間。多分来週からは母が来られると言うと、ツルさんは「よかったなぁ」と笑って、昨日の幸子さんと同じように「美晴ちゃんもまたおいで」と言ってくれた。なんか目頭が熱くなる。だって、もう美晴としてここに来ることはないのだろうから。
昼食のメニューはチラシ寿司とアサリのお澄ましを準備した。ちょうど材料がそろっててよかった。
支度ができて、幸子さんに声を掛けに行こうと台所を出るとき、バッタリ律とかち合う。「おかえり」と声をかけようとした瞬間、壁に押し付けられてのキス。律はいつも強引だけど今日はなんかおかしいっ――。
息ができないっ……。わずかな空気を求めて唇を開こうとすると、すかさず律の舌が浸入してきて強く吸われる。
しゃべることもできない。
「……っふ……あ……」
荒い息遣いだけが耳の中に響き、頭がぼうっとしてきた。律に押さえられてなんとか立っているが、離されたら一瞬で崩れてしまうだろう。俺は必死で律にしがみついていた。
ようやく解放されたけど、俺はまともに立てずに律に捕まってなんとか姿勢を保ってるありさまだった。必死に息を整え、文句を言おうと顔をあげると、律は寂しそうな、苦しそうな、切ないような表情を見せていた。
初めて見る律の表情に戸惑ってしまって、喉まできてた文句が引っ込んでしまう。
もしかして、昨日から不機嫌そうに見えてたのって――俺がもうここに来なくなるからか――。
そう気づくと、なんだか律のことをものすごく愛おしく感じてしまったんだ。これは多分流されたわけじゃない、と思う。
「……ススキ、見せに連れてけよ……律」
俺は初めて律の名前を呼んで、初めて自分からキスをした。
律が驚いたようにこっちを見てる。勝ち負けじゃないけど、なんだか初めて律に勝った気分だ。
「二択だからな」
律が不敵に笑った。
「わかってるって」
いつの間にか答えは出てたんだけど、せっかくだから十五夜までは引き延ばしてやろう。
ツルさんとのまったり時間。多分来週からは母が来られると言うと、ツルさんは「よかったなぁ」と笑って、昨日の幸子さんと同じように「美晴ちゃんもまたおいで」と言ってくれた。なんか目頭が熱くなる。だって、もう美晴としてここに来ることはないのだろうから。
昼食のメニューはチラシ寿司とアサリのお澄ましを準備した。ちょうど材料がそろっててよかった。
支度ができて、幸子さんに声を掛けに行こうと台所を出るとき、バッタリ律とかち合う。「おかえり」と声をかけようとした瞬間、壁に押し付けられてのキス。律はいつも強引だけど今日はなんかおかしいっ――。
息ができないっ……。わずかな空気を求めて唇を開こうとすると、すかさず律の舌が浸入してきて強く吸われる。
しゃべることもできない。
「……っふ……あ……」
荒い息遣いだけが耳の中に響き、頭がぼうっとしてきた。律に押さえられてなんとか立っているが、離されたら一瞬で崩れてしまうだろう。俺は必死で律にしがみついていた。
ようやく解放されたけど、俺はまともに立てずに律に捕まってなんとか姿勢を保ってるありさまだった。必死に息を整え、文句を言おうと顔をあげると、律は寂しそうな、苦しそうな、切ないような表情を見せていた。
初めて見る律の表情に戸惑ってしまって、喉まできてた文句が引っ込んでしまう。
もしかして、昨日から不機嫌そうに見えてたのって――俺がもうここに来なくなるからか――。
そう気づくと、なんだか律のことをものすごく愛おしく感じてしまったんだ。これは多分流されたわけじゃない、と思う。
「……ススキ、見せに連れてけよ……律」
俺は初めて律の名前を呼んで、初めて自分からキスをした。
律が驚いたようにこっちを見てる。勝ち負けじゃないけど、なんだか初めて律に勝った気分だ。
「二択だからな」
律が不敵に笑った。
「わかってるって」
いつの間にか答えは出てたんだけど、せっかくだから十五夜までは引き延ばしてやろう。
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