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Vegetablesー2ー
嫉妬と葛藤 5
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智もサービス業だから土日は基本的に仕事だ。とりあえず約束だけでもしておこうと、久しぶりにメシでも食いにいかないかとメールした。約束していないと智の場合は基本的に女の子と遊んでいる。
しばらくして、水曜日の晩ならOKとの返信。あいかわらずデコメがチカチカ点滅している。マメだよなぁ。
国道沿いのファミレスで待ち合わせを決めて携帯を閉じた。
どうやって聞き出そうかな――。
「智、おまえなんかあった?」
夜七時のファミレス、結局回りくどい駆け引きは苦手なので直球で尋ねた。智は今日もバッチリ決まっている。あの茶髪は会社的にOKなんだろうか。
「なにって……なんもないけど?」
うわ、あからさまに動揺した。これは本気でおかしいかも知れない。
「拓のやつが心配してた」
あれ? 今一瞬、拓の名前に反応したように見えた。
「拓となんかあったのか?」
「別にないって……拓、なんか言ってた?」
「合コン行っても元気ないし、女も口説かないってさ」
そういうと智は黙り込んでしまった。もしかして結構深刻な事態だったりするのだろうか。難しい話だったら環に聞いてもらったほうがよかったかも知れない。
「俺さ……気になる相手がいてんだ」
「うん、まぁいつものことだろ?」
「ち、違う! いつものとは違うんだよ! だからどうしていいか分かんなくてさ……」
しまった。恋愛相談なら俺は全くの役立たずだ。
「――ってか智、気になる相手がいてんのに合コンとか行くなよ……」
あ、これは俺が言っても説得力ないか。
「だからな、いつもと違うから「気のせいかな?」とか思って、確認するのに合コン行ったんだよ!」
「確認すんのに三回もかよ……ってか、それで確認できたわけ?」
「……多分……」
今日の智は本当に歯切れが悪い。思いつめているのは本当みたいだ。
「だったらさ、いつもみたいに告ったらいいんじゃないのか?」
智は気になると思った瞬間に告るような男だ。しかも成功率は半端なく高い。
「……絶対むりだし……その前に告る勇気ねぇ……」
「はぁ? なに、その子彼氏がいるとか、もっと言うと結婚してるとか? ……えーヤクザの彼女とか?」
「あのな、千章。おまえ俺をなんだと思って……。俺、人のもんには手ぇださねぇよ」
「だったら、なんで……」
呆れたように反論されるも、俺の頭ではこれ以上思いつかない。大体深刻そうなのは間違いないけど、どうにも的を射ない智がもどかしい。
「――千章、だれにも言わないでくれるか?」
「いや、言いたくなきゃ言わなくてもいいんだけど」
「おまえってそういうやつだよな。誰にも言うなってことはな、聞いては欲しいってことなんだよ! でも、広めては欲しくはないってこと!」
「お、おぅ、そんなもんか……」
この辺の機微がわかるかどうかが、聡い人間と鈍い人間の差なのかも知れない。俺はその点から言うと確実に鈍い人間だ。それも事なかれ主義で面倒事はなるべく避けたいタイプだ。こうしてみると全く相談役には向いていないよな――なんで引き受けたんだろう。
なんだか複雑そうな予感がして、話の前にドリンクバーのホットコーヒーを取りに行く。
「あのな、千章―……」
「うん?」
「その、気になるやつって言うのがな……」
「…………」
「……女の子じゃないんだよ」
「? ……ずっと年上ってことか?」
「千章って天然入ってるよな……だからさ、女じゃないんだよ」
「…………」
智は「わかったか?」とでも言うように気の毒な目を向けてきている。おかしい、俺が聞き役だったはずなのに。いや、その前に――今、何て言った?
しばらくして、水曜日の晩ならOKとの返信。あいかわらずデコメがチカチカ点滅している。マメだよなぁ。
国道沿いのファミレスで待ち合わせを決めて携帯を閉じた。
どうやって聞き出そうかな――。
「智、おまえなんかあった?」
夜七時のファミレス、結局回りくどい駆け引きは苦手なので直球で尋ねた。智は今日もバッチリ決まっている。あの茶髪は会社的にOKなんだろうか。
「なにって……なんもないけど?」
うわ、あからさまに動揺した。これは本気でおかしいかも知れない。
「拓のやつが心配してた」
あれ? 今一瞬、拓の名前に反応したように見えた。
「拓となんかあったのか?」
「別にないって……拓、なんか言ってた?」
「合コン行っても元気ないし、女も口説かないってさ」
そういうと智は黙り込んでしまった。もしかして結構深刻な事態だったりするのだろうか。難しい話だったら環に聞いてもらったほうがよかったかも知れない。
「俺さ……気になる相手がいてんだ」
「うん、まぁいつものことだろ?」
「ち、違う! いつものとは違うんだよ! だからどうしていいか分かんなくてさ……」
しまった。恋愛相談なら俺は全くの役立たずだ。
「――ってか智、気になる相手がいてんのに合コンとか行くなよ……」
あ、これは俺が言っても説得力ないか。
「だからな、いつもと違うから「気のせいかな?」とか思って、確認するのに合コン行ったんだよ!」
「確認すんのに三回もかよ……ってか、それで確認できたわけ?」
「……多分……」
今日の智は本当に歯切れが悪い。思いつめているのは本当みたいだ。
「だったらさ、いつもみたいに告ったらいいんじゃないのか?」
智は気になると思った瞬間に告るような男だ。しかも成功率は半端なく高い。
「……絶対むりだし……その前に告る勇気ねぇ……」
「はぁ? なに、その子彼氏がいるとか、もっと言うと結婚してるとか? ……えーヤクザの彼女とか?」
「あのな、千章。おまえ俺をなんだと思って……。俺、人のもんには手ぇださねぇよ」
「だったら、なんで……」
呆れたように反論されるも、俺の頭ではこれ以上思いつかない。大体深刻そうなのは間違いないけど、どうにも的を射ない智がもどかしい。
「――千章、だれにも言わないでくれるか?」
「いや、言いたくなきゃ言わなくてもいいんだけど」
「おまえってそういうやつだよな。誰にも言うなってことはな、聞いては欲しいってことなんだよ! でも、広めては欲しくはないってこと!」
「お、おぅ、そんなもんか……」
この辺の機微がわかるかどうかが、聡い人間と鈍い人間の差なのかも知れない。俺はその点から言うと確実に鈍い人間だ。それも事なかれ主義で面倒事はなるべく避けたいタイプだ。こうしてみると全く相談役には向いていないよな――なんで引き受けたんだろう。
なんだか複雑そうな予感がして、話の前にドリンクバーのホットコーヒーを取りに行く。
「あのな、千章―……」
「うん?」
「その、気になるやつって言うのがな……」
「…………」
「……女の子じゃないんだよ」
「? ……ずっと年上ってことか?」
「千章って天然入ってるよな……だからさ、女じゃないんだよ」
「…………」
智は「わかったか?」とでも言うように気の毒な目を向けてきている。おかしい、俺が聞き役だったはずなのに。いや、その前に――今、何て言った?
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