Vegetables

Vegetablesー３ー

正月休み １日目 １

「おはようございます」

　朝九時、ひさしぶりの葛西商店だ。けれど、どうも様子がおかしい。なんだかやけに忙しそうな―ー。

「あ、千章くん、きてくれたのね」

　幸子さんがクリーニング屋の大きな袋を手に出てきた。

「はい、律これ、あんたの分。千章くん、今日ね、悪いんだけど店番頼めないかしら？」

　袋から出しているのは喪服だ。不幸ごとでもあったんだろう。

「幸子さん、俺店のほうはあまりわかりませんよ？」

「レジ打つだけでいいの。なにか言われたら「昼には戻る」って言ってくれたらいいし、もしものときは電話して……あ、お昼はお膳を持ち帰るから待っててね」

　それくらいなら問題なさそうだ。俺は快く頷いてレジに座った。

　久しぶりにツルさんの食事を作るのを楽しみにしていたんだけど、そういうことなら仕方ない。

　レジはこの間、少しの留守を頼まれることがあって教えてもらっていた。あのクリスマス以来、なぜか幸子さんは俺に遠慮しなくなった。何を思ったのか、察したのか分からないけど、俺としてはうれしい変化だ。

「千章、なんかあったら電話しろよ」

「ああ」

　喪服とはいえ、律のスーツ姿を始めて見てしまった。体格がいいからすごく決まるよな。俺は一瞬見とれてしまった。

　喪服って結構色っぽいかも――何考えてんだ、俺は。自分で自分に突っ込んで、そして照れてしまった。

「おかしいか？」

　無言の俺に勘違いしたのか律が尋ねてくる。

「え？　別に似合ってるけど」

「喪服に似合うもなにもあるかよ」

　呆れたように言うと、律は慣れない服装に落ち着かないようで、しきりにネクタイのあたりを触った。

　じゃあ、お願いね、幸子さんはそういって律と出かけていった。