Vegetables

二一

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Vegetablesー3ー

始動 4

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 やっぱり木瀬は今でも律のことが好きなのかも知れない――。

「千章、おまえは無理すんなよ?」

 律が短くなったタバコを地面で消しながら、目を細めて呟いた。

 どういう意味だろう。

「悩むのは当たり前なんだ。だから無理すんな」

 ああ、そうか。今の律はある程度割り切ることに成功していて、俺のほうが悩んでいる。でも律は俺の悩みが分かってるから、なにも言わず待ってくれている。

 だから、俺が少しずつ前に進めたとき、心配そうに、でもうれしそうにしていたんだ。

 俺は律がそうして待ってくれていたから、安心して一緒にいられたんだな、と今さら実感する。

「分かったよ」と俺は答えて――ちょっと意地悪してみたくなった。

「その割にさ、おまえ最初むちゃくちゃ強引だったぞ?」

 車の中で始めてキスされたときのことだ。

「……あれは、勘違いしてた」

「勘違い?」

「おまえは俺のことが気に入ってると思ってた」

 だから絶対逃してやるかと思った――そういって律はにやっと笑った。

「は? どこをどうすれば、そんな勘違いすんだよ」

「笑いかけてきたからな」

 俺はあんまり人から笑いかけられることなんかない、と律が笑った。

「あれは営業スマイルだ……」

 ――というか、あのときは女だったらこうするだろうってのを必死で演技していたんだ。

「だから、おまえのは素か作ってんのかわからねぇって言ってる」

「最初、おまえ、むちゃくちゃ怖かったんだぞ」

 これは本音だ――。いったいどこからこんな惚れてしまったんだろう。

 それに、強引だったけど、逃げ道はちゃんと用意してくれていたし――な。

「次はおまえの番だ」

 律が不敵に笑った。

「え? 今言うのかよ?」

 俺の過去なんて今となっては恥ずかしいものばかりだ。

「おまえの場合は、他からばらされると困るんだろ?」

 確かに自分で言ったほうがマシなんだけど――どこから言おうか?

 俺の場合は超流されまくりの恋愛ばかりだったから、正直全部を覚えているわけじゃない。これを言ったらまた呆れられそうだけど。

 まだ昼飯には早い時間だし、逃げるのは無理そうだ。

 俺は覚悟を決めて深呼吸をした。

「笑うなよ……?」

 とりあえず、先に言っておく。無駄な気はするけど。
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