Vegetables

Vegetables―スピンオフ―

あいつらの日常 ６

　アラームの音で起きると、拓はすでに起きていてルームサービスのメニューを眺めていた。

「あ、さとちゃん、おはよう」

　普通にあいさつしてきた……と思ったけど、やっぱり照れてるのが分かった。

「拓、起きたなら起こしてよ」

「だって、なんか恥ずかしかったもん」

「一緒に風呂入ろうと思ってたのに……」

　これは本当だ。なのに拓はすでに身支度も完璧。

　仕方なくオレは一人でシャワールームに行って、超特急で支度を整えてきたんだ。

「なんか食べてく？」

　メニューを見る拓に聞いてみた。

「んーなんかもったいないし、出てからにしよ？」

「じゃあさ、軽くコンビニとかで買って、戻ってから由乃屋にでも行かね？」

　ラブホの食事なんてまず旨くない。時計を見ると午前十時前、今から帰ったら下道でも昼には着く。

「さとちゃん、それ賛成」

　拓がおどけて片手を挙げてみせた。





「さとちゃん……帰り運転して」

　拓が黄色いクマのキーホルダーがついたキーを放ってきた。

　拓はあまり人にハンドルを渡さないのに珍しい……と思った瞬間、気付いた。

　車高下げた車って、乗り心地が堅いんだよな。つまり路面の衝撃がダイレクトに伝わるというか……。

「了解。拓……その、ごめん？」

「さとちゃん……恥ずかしいから言わないで？」

　助手席で拓が真っ赤になって外を見た。

　間違ってもぶつけたりしないように、安全運転で行かなくては……。

　オレは自然に緩んでくる表情を、必死で押しとどめていた。