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Vegetables―スピンオフ―
St. Valentine's Day 2
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「千章、なんだその格好……」
律が高い位置からおれの頭を見下ろしている。その目はやや不機嫌そうな色合いで、おれは心臓が早くなるのを自覚した。
「あ、あのこれは――」
横から美晴が一歩進みながら、多分言い訳をしてくれるのだろう声を上げた――けど……。
「美晴っ……荷物持って先帰ってて」
下手なことを言われるのが恥ずかしく、慌てて美晴の背を押した。ここからなら歩いて帰ってもそんなに家は遠くない。
美晴はやや怪訝な顔をしながらも「じゃあ」と車に向かった。
とりあえず胸を撫で下ろしつつ、もう一つの問題に立ち向かうべくゆっくりと律を振り返る。
「律……その――」
言いかけたものの上手い理由が見つからず目が泳いでしまう。近所のスーパーに女装して買い物に行く不自然じゃない理由って何かあるだろうか……。
律の無言の圧力がずしりとのしかかってくる。
はっきり言っておれには前科がある。今回は全く以って疚しくはないんだけど、正直に言い辛い状態ではどうやったって申し開きできないだろう。
しかも美晴と一緒だったとは言えナンパされてたし――。
「千章、正直に言えよ」
無言のおれに勘違いしたのか、律の声が一段低くなる。背筋に冷たいものを感じた。
「律、違うって、コレは――」
何て言えばいいんだ。ホントに……正直にって、でも――。
「美晴の買い物に付き合うのに……」
「付き合うのにその格好か?」
おかしいよな。ウン、おれでもそう思うよ……。
本当のことを言ったって多分律は何も思わないとは思う。でも、おれだって今日まで散々悩んだんだし、もしかすると呆れられたり、最悪嫌われたりするんじゃないだろうか……そう考えると理由を言う勇気が持てずどうしても言葉が出なかった。
言い訳が見つからず戸惑ったおれは地面に視線を落とした。
「ごめん――」
言葉が見つからず、言えないことに対して謝ってしまう。でもこの謝罪はきっと勘違いされる……。
案の定というか律の周囲の空気が緊張したような気がした。怖くて顔をあげられなかったけどなんとなくそう思ったんだ。
「千章、ちゃんと言えるようになるまで顔見せんな――」
淡々と告げられた言葉の意味を噛み砕いて、慌てて顔を上げたときにはすでに律の背中が離れていっていた。
呼び止めようと一歩踏み出して、でもおれはそのまま立ち止まってしまう。ちゃんと言えるようになるまで……今ならまだ間に合う? でもおれはどうしても動けなかった。
やっぱりおれは情けないままだ。多分こんなのどうってことないことなのに――。
そこからはどうやって家に帰ったのかよく覚えていない。
キッチンに入りスーパーの袋から材料を取り出している美晴を見て、おれはやっと我に返った。
律が高い位置からおれの頭を見下ろしている。その目はやや不機嫌そうな色合いで、おれは心臓が早くなるのを自覚した。
「あ、あのこれは――」
横から美晴が一歩進みながら、多分言い訳をしてくれるのだろう声を上げた――けど……。
「美晴っ……荷物持って先帰ってて」
下手なことを言われるのが恥ずかしく、慌てて美晴の背を押した。ここからなら歩いて帰ってもそんなに家は遠くない。
美晴はやや怪訝な顔をしながらも「じゃあ」と車に向かった。
とりあえず胸を撫で下ろしつつ、もう一つの問題に立ち向かうべくゆっくりと律を振り返る。
「律……その――」
言いかけたものの上手い理由が見つからず目が泳いでしまう。近所のスーパーに女装して買い物に行く不自然じゃない理由って何かあるだろうか……。
律の無言の圧力がずしりとのしかかってくる。
はっきり言っておれには前科がある。今回は全く以って疚しくはないんだけど、正直に言い辛い状態ではどうやったって申し開きできないだろう。
しかも美晴と一緒だったとは言えナンパされてたし――。
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無言のおれに勘違いしたのか、律の声が一段低くなる。背筋に冷たいものを感じた。
「律、違うって、コレは――」
何て言えばいいんだ。ホントに……正直にって、でも――。
「美晴の買い物に付き合うのに……」
「付き合うのにその格好か?」
おかしいよな。ウン、おれでもそう思うよ……。
本当のことを言ったって多分律は何も思わないとは思う。でも、おれだって今日まで散々悩んだんだし、もしかすると呆れられたり、最悪嫌われたりするんじゃないだろうか……そう考えると理由を言う勇気が持てずどうしても言葉が出なかった。
言い訳が見つからず戸惑ったおれは地面に視線を落とした。
「ごめん――」
言葉が見つからず、言えないことに対して謝ってしまう。でもこの謝罪はきっと勘違いされる……。
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「千章、ちゃんと言えるようになるまで顔見せんな――」
淡々と告げられた言葉の意味を噛み砕いて、慌てて顔を上げたときにはすでに律の背中が離れていっていた。
呼び止めようと一歩踏み出して、でもおれはそのまま立ち止まってしまう。ちゃんと言えるようになるまで……今ならまだ間に合う? でもおれはどうしても動けなかった。
やっぱりおれは情けないままだ。多分こんなのどうってことないことなのに――。
そこからはどうやって家に帰ったのかよく覚えていない。
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