160 / 160
Vegetables―スピンオフ―
Starting happiness 15
しおりを挟む
「――冷た……」
頬に冷気を感じてゆっくり目を開けると、ミネラルウォーターのペットボトルを持った律が呆れたように見下ろしていた。
あ……――。
一気に記憶が呼び戻され、羞恥の余りうつ伏せに顔を隠した。おれってば何てことを……。
意識飛ばしたんならいっそのこと記憶もなくなってればいいのに――。
思ってみたところでもちろん記憶が消えるわけじゃないけど……。
「うわっ――」
今度は背中に冷たい感触――。思わず身体が跳ね上がる。
「お前、あんまり煽ってくんな」
憮然と呟く律の声に更に恥ずかしさが募る。
穴があったら入りたいってこういう事なんだと思う。いや、穴がなくたって全力で掘って埋まってしまいたい……。
手探りで見つけた布団を引き寄せ無言のままでその中に包まった。
何も言うな――何も言うなよ……。
おれの祈りなんか叶うはずもなくて――。
「――……っ!!」
蓑を簡単に引き剥がされ、更に丸まった身体をひっくり返され、正面から律に見つめられている。
――うぅ……何の拷問だよ、コレ……。
無言のまま見詰め合って……そして――。
「っ!!」
突如、律が笑い始める。いや、笑いを抑えようとしてるんだけど全然できてなくて、肩がフルフルと震えてるんだ。
「笑うな!」
悪い悪い――笑いの衝動の合間につっかえながら謝られたって余計恥ずかしい。
思わずむくれたおれに手に持ったペットボトルが手渡される。
そういえば喉カラカラ――って違うだろ。
「律――っ……いい加減にっ……!」
腕を掴んで上体を起こす。
しつこく震える肩を小突こうとした腕をすかさず遮られた。
「――っん? ……っふ……んんっ――!!」
文句を押し込めるように重ねられた唇。
そうやって誤魔化そうとする――。
強く押し付けられた唇が少し離され、そして啄ばむような軽いキス――。
いつも通りの律――。
――千章のメシが食いたい……。
首元で呟かれた律の言葉に笑いが込み上げる。
うん――もう特別な日は終りでいいや。
結婚式の空気は甘すぎておれも律もちょっとおかしくなってる……。
平穏で、少しだけ甘い……。
そんな日常が堪らなく恋しくなった――。
もちろん2人で過ごすのが大前提だけどな……。
<おわり>
長らくお付き合いいただきありがとうございました。
二一
頬に冷気を感じてゆっくり目を開けると、ミネラルウォーターのペットボトルを持った律が呆れたように見下ろしていた。
あ……――。
一気に記憶が呼び戻され、羞恥の余りうつ伏せに顔を隠した。おれってば何てことを……。
意識飛ばしたんならいっそのこと記憶もなくなってればいいのに――。
思ってみたところでもちろん記憶が消えるわけじゃないけど……。
「うわっ――」
今度は背中に冷たい感触――。思わず身体が跳ね上がる。
「お前、あんまり煽ってくんな」
憮然と呟く律の声に更に恥ずかしさが募る。
穴があったら入りたいってこういう事なんだと思う。いや、穴がなくたって全力で掘って埋まってしまいたい……。
手探りで見つけた布団を引き寄せ無言のままでその中に包まった。
何も言うな――何も言うなよ……。
おれの祈りなんか叶うはずもなくて――。
「――……っ!!」
蓑を簡単に引き剥がされ、更に丸まった身体をひっくり返され、正面から律に見つめられている。
――うぅ……何の拷問だよ、コレ……。
無言のまま見詰め合って……そして――。
「っ!!」
突如、律が笑い始める。いや、笑いを抑えようとしてるんだけど全然できてなくて、肩がフルフルと震えてるんだ。
「笑うな!」
悪い悪い――笑いの衝動の合間につっかえながら謝られたって余計恥ずかしい。
思わずむくれたおれに手に持ったペットボトルが手渡される。
そういえば喉カラカラ――って違うだろ。
「律――っ……いい加減にっ……!」
腕を掴んで上体を起こす。
しつこく震える肩を小突こうとした腕をすかさず遮られた。
「――っん? ……っふ……んんっ――!!」
文句を押し込めるように重ねられた唇。
そうやって誤魔化そうとする――。
強く押し付けられた唇が少し離され、そして啄ばむような軽いキス――。
いつも通りの律――。
――千章のメシが食いたい……。
首元で呟かれた律の言葉に笑いが込み上げる。
うん――もう特別な日は終りでいいや。
結婚式の空気は甘すぎておれも律もちょっとおかしくなってる……。
平穏で、少しだけ甘い……。
そんな日常が堪らなく恋しくなった――。
もちろん2人で過ごすのが大前提だけどな……。
<おわり>
長らくお付き合いいただきありがとうございました。
二一
0
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
あなたにおすすめの小説
陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。
陽七 葵
BL
主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。
しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。
蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。
だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。
そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。
そこから物語は始まるのだが——。
実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。
素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
見ぃつけた。
茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは…
他サイトにも公開しています
平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)
優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。
本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。
男子寮のベットの軋む音
なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。
そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。
ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。
女子禁制の禁断の場所。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
いつも楽しく拝見させていただいてます。
定期的な更新でありがたいです
最新話の【大仰際】というのは【往生際(おうじょうぎわ)】のことでしょうか?
お読みくださって、ありがとうございます。
誤字ですね。お目汚し失礼しましたm(*_ _)m
2つの作品読みました!!
どちらもすごく良かったです!
頑張ってください!!
応援してます(*´v`)
ありがとうございます(*´∀`*)
初恋returnsはあと少しですが、vegetablesはもうしばらく続きます。
どうぞお付き合いくださいませ(*´ω`*)