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1章
凶暴なマーメイド
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ポコポコと音を立てて水の泡が上に上がっていく。
横長の広い水槽を端から端まで泳いで見せればおぉ、と感嘆の声が上がった。
光の当たる角度によって虹色に見えるパール色の尾ひれをわざとらしくなびかせてみる。
分厚い水槽の壁の向こうには、爵位の高い服装をしている人々が覗いていた。
その中の一人、海のような青い髪の青年と目が合う。
私は彼と目が会った瞬間さっと逸らした。
お披露目の夜会が終われば、私に与えられた部屋に帰された。
部屋にも大きな水槽が設置されている。
現代の人魚は1日に1回は水に浸かれば元気でいられるのだが、やはり大量の水がある場所は落ち着くからありがたい。
水から出た途端尾ひれが人間の足になる。
準備されていたドレスを着てベッドに座った。
しばらくするとコンコンとドアをノックする音が聞こえた。
「お披露目おつかれさま。疲れただろう今日はゆっくり休んでくれ。」
そう言って入ってきたのはこの国、ラピス王国の王子、レイン王子である。
海のような青い髪。先程私を一番熱心に眺めていた青年であった。
「…」
「相変わらず君は俺のことが嫌いなんだな。」
そう言うと彼はベッドの上の私の隣に腰掛けてきた。
その瞬間私は彼の首根っこを掴みベッドに押し付ける。
「うっ!…」
「勝手に近づいてこないで!それ以上近づいてくるならこの首を締め上げるわよ。」
ぐっと力を入れた両手に彼の顔が苦痛で歪む。
人間よりも強い力を持つ人魚にとって、この首を絞め殺すのは簡単だった。
血が上りみるみる赤くなる顔を睨む。
「シ、シフォン…やめてくれ…」
苦しそうに呼んだ私の名前に手の力を抜く。
「ごほっ…ごほごほ」
彼は起き上がると全身で息を吸いながら咳をする。
「俺を殺してしまったら困るのは君だろう」
半ば無理やり連れてこられたものの契約をしてしまっているから、彼を殺したら私は罰を受けるだろう。
「まったく、横暴なお姫様だ。」
彼はよろよろと立ち上がると、部屋の花瓶に持ってきていた青いバラの花束を生けた。
「…花瓶にヒビが入っている。シフォン、また力加減を間違えたね?」
その言葉に答えるつもりのない私はそっぽを向く。
「久しぶりに声を聞けたと思ったら首を絞められるんだからまったく油断も隙もないよ。」
切なそうに言う彼に何の同情心だって湧かない。
人間よりも力のある人魚を妃にとる習慣は、自分の力を誇示するためだった。
美しい人魚を捕まえて、婚姻の契約をする。
力と力の争いをする人魚の世界と違って人間の世界は頭を使った騙し合いのような世界だ。
力のない弱い生き物が、彼ら自身よりも強い私たちという生き物を簡単には逃がさないように捕えられるのだからまったく侮れない。
この世の面積は陸よりもよっぽど海の方が広いのに、その小さな陸に住む人間がこんなに賢いのは不思議だった。
「そんなに睨んだら綺麗な顔がもったいない。」
首に締められた赤い跡を付けたまま殺そうとした相手に微笑む彼は少々狂っているのだろうか。
横長の広い水槽を端から端まで泳いで見せればおぉ、と感嘆の声が上がった。
光の当たる角度によって虹色に見えるパール色の尾ひれをわざとらしくなびかせてみる。
分厚い水槽の壁の向こうには、爵位の高い服装をしている人々が覗いていた。
その中の一人、海のような青い髪の青年と目が合う。
私は彼と目が会った瞬間さっと逸らした。
お披露目の夜会が終われば、私に与えられた部屋に帰された。
部屋にも大きな水槽が設置されている。
現代の人魚は1日に1回は水に浸かれば元気でいられるのだが、やはり大量の水がある場所は落ち着くからありがたい。
水から出た途端尾ひれが人間の足になる。
準備されていたドレスを着てベッドに座った。
しばらくするとコンコンとドアをノックする音が聞こえた。
「お披露目おつかれさま。疲れただろう今日はゆっくり休んでくれ。」
そう言って入ってきたのはこの国、ラピス王国の王子、レイン王子である。
海のような青い髪。先程私を一番熱心に眺めていた青年であった。
「…」
「相変わらず君は俺のことが嫌いなんだな。」
そう言うと彼はベッドの上の私の隣に腰掛けてきた。
その瞬間私は彼の首根っこを掴みベッドに押し付ける。
「うっ!…」
「勝手に近づいてこないで!それ以上近づいてくるならこの首を締め上げるわよ。」
ぐっと力を入れた両手に彼の顔が苦痛で歪む。
人間よりも強い力を持つ人魚にとって、この首を絞め殺すのは簡単だった。
血が上りみるみる赤くなる顔を睨む。
「シ、シフォン…やめてくれ…」
苦しそうに呼んだ私の名前に手の力を抜く。
「ごほっ…ごほごほ」
彼は起き上がると全身で息を吸いながら咳をする。
「俺を殺してしまったら困るのは君だろう」
半ば無理やり連れてこられたものの契約をしてしまっているから、彼を殺したら私は罰を受けるだろう。
「まったく、横暴なお姫様だ。」
彼はよろよろと立ち上がると、部屋の花瓶に持ってきていた青いバラの花束を生けた。
「…花瓶にヒビが入っている。シフォン、また力加減を間違えたね?」
その言葉に答えるつもりのない私はそっぽを向く。
「久しぶりに声を聞けたと思ったら首を絞められるんだからまったく油断も隙もないよ。」
切なそうに言う彼に何の同情心だって湧かない。
人間よりも力のある人魚を妃にとる習慣は、自分の力を誇示するためだった。
美しい人魚を捕まえて、婚姻の契約をする。
力と力の争いをする人魚の世界と違って人間の世界は頭を使った騙し合いのような世界だ。
力のない弱い生き物が、彼ら自身よりも強い私たちという生き物を簡単には逃がさないように捕えられるのだからまったく侮れない。
この世の面積は陸よりもよっぽど海の方が広いのに、その小さな陸に住む人間がこんなに賢いのは不思議だった。
「そんなに睨んだら綺麗な顔がもったいない。」
首に締められた赤い跡を付けたまま殺そうとした相手に微笑む彼は少々狂っているのだろうか。
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