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夜会のはじまり
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夜会の日はすぐに訪れた。
水晶の光る、キラキラのカーペットを淡いピンク色のドレスで歩く。
シルバーの大きなリボンがついたミュールは可愛くてお気に入りだ。
約2週間くらい、ノア殿下と言い合いをしてから彼とは一言も話していない。
目が合えばさっと先に彼が逸らす。
今夜の夜会は、私とノアが話すことはないかもしれない。
そうしたら、他の令嬢達が私たちの間の微妙な空気感に気がついて、今がチャンスだとばかりにノア殿下に近づき、そのうちの誰かともっと親密になるかもしれない。
そしてその人が新しい婚約者になるのかもしれない。
そうなればいいのだ。
物語のなかの悪役令嬢。私はそもそも彼に婚約破棄される運命なのだから。
その形が変わっただけ。
でも、悪意のある人間にこの世界を崩されるのは許せない。
今日は、誰かが転生しているレイアに会って話ができる。
緊張で冷たくなった手でドレスを握りしめた。
夜会が始まると、次々に色とりどりのドレスで煌びやかな令嬢たちがやってくる。
私が最初に話しかけたのは、会場の隅に佇んで動かない、女性だった。
「お久しぶりです。姉様。」
「あら、久しぶりココ。最近はどう?ノア殿下と仲良くしているの?」
「いや、それが…」
「まあ、早く結婚するなり、離れるなりしなさいよ。」
「えぇ?」
気せんのない物言いをする彼女。
薄紫色のロングの髪を縦にくるくると巻いている。
ココ・レイルウェイズ私の姉、リリア・ルーテルだ。
リリアは第1王子の婚約者だったのだが、遠い国の小国の王子と知り合い、恋に落ちて、駆け落ち同然で、その国のもとに嫁いだ。
破天荒で、自由気ままな姉である。
「私のせいであなたにかかるプレッシャーが大きくなったのかもしれないけど、あんな両親のことなんか気にしなくていいのよココ。好きにしなさいね。」
「え、…えぇ。」
私は両親と変わらず良好な関係を築いているが、リリアは両親と長い間まともに話していない。
「ミレサ王子はどちらに?」
ミレサ・ルーテル。それがリリアの結婚相手である。
「私のわんこちゃんならあそこに居るわよ。」
指さす先に、他の令嬢に話しかけられているミレサ王子がいた。
「姉様、旦那様をわんこ呼ばわりはよろしくないと思います。…というか、女性に大人気ですね。」
「ほんとね。まったくあの子は。よく言い聞かせないといけないわね。」
S気質の姉は、優しい王子を尻にひいているようだ。旦那というより、飼い犬のように接している姿に彼が心配になる。
「それにしても、今日はノア殿下狙いが多いのね。」
リリアの視線の先を見ると、華やかな令嬢たちに囲まれているノアがいた。
もともと仲のいい令嬢は多いのだが、今日は私とノア殿下の仲がよろしくないという情報がもう回っているのだろう。
いつもよりたくさんの令嬢を彼の周りに携えていた。
「ええ。そうです。私が彼と婚約解除をしたいと、考えているという情報が、令嬢達の間で知れ渡っているからです。」
そう言うとリリアは驚いた表情を浮かべた。
「まあ、そうなの。…まあ結局ノア殿下もユアン殿下の弟だものね。似ているのかもしれないわね。」
「え?」
リリアは、ミレサ王子と恋に落ちたからユアン殿下との婚約を破棄したのかと思っていたが、他にも理由があったのだろうか。
「でもユアン殿下よりずっとノア殿下の方が良いと私は思うわ。それじゃあまた後でね。」
そう言うと、リリアはミレサ王子を令嬢から引き剥がしに行った。
次は誰に話しかけに行こうと思っていると、向こうから走りよってくる足音が聞こえた。
「ご機嫌よう、ココ様、お元気でした?」
「あら、ライラ、ご機嫌よう。私は変わりないわ。あなたもお変わりない?」
「ええ。私は変わりないですわよ。でも、ココ様は、違いますでしょ?あの話はほんとう?」
ユーリアと同じ白銀の髪を耳の下でツインテールにしている目の大きな可愛らしい女の子は、ライラ・クリスフォード。
ロシェルと、ユーリアの親戚にあたる女の子だ。
「残念ながら本当よ。ノア殿下と婚約解除を考えているの。」
「やっぱりそうですの?!」
そう言うと少し考え込む表情をしたあと、私の耳に顔を寄せた。
「ココ様、わたし、ノア殿下本気で狙いに行ってもかまわないかしら?」
わたしはそう来るだろうなと想定していたから驚かずに頷いた。
「もちろんいいわよ。応援するわ。」
物語の中で、ココとライラは仲が良い。
なぜなら、敵の敵は味方。レイアのライバルという立場からして、近しいところにライラは居るのだ。
ライラはノア殿下に純粋に恋をしている。
立場を求めて彼に近寄る他の令嬢たちとは一味違うのだ。
物語のなかでは、嫉妬心からレイアに悪事を働き、その悪巧みが明るみに出て、ノア殿下からは嫌われてしまい、恋は叶わない。しかし今回は私が自分から引く隙に、頑張って欲しいと思う。
この子を見ていると、純粋に人を想う恋の楽しさを思い出す。
「ノア殿下のどんなところに惹かれているの?」
「そうですわね…」
頬に手を当てて考える姿勢に入ったライラの視線の先にはノア殿下がいる。
「私、ノア殿下は人に平等だなと思いますの。」
「平等?」
「ええ。一見、いろいろな令嬢たちに手を出す優柔不断な方と見受けられます。でもノア殿下は、きっともう二度と会わないような小さな村の娘にも優しくできるのだわ。ほんの少しの接点だけでも人の良いところを見つけてくださるのよ。」
恋愛フィルターが掛かっているからじゃないのかな、と思うけど、正直その理由はなんとなく私も理解出来る。
「高貴な令嬢にもそこらの町娘にも同じように接してくださる。だからこそ私のような貴族の女ほど、彼に恋するのだわ。町娘の良さまでも見つけられる方ならきっと誰にも見つけてもらえていない私の良さも見つけてくれるって。」
きらきらとした潤んだ瞳で語るライラがこんなにも可愛く見える。
あぁ、いいな。
『レイアと星の国』この物語を初めて読んだ小学生の時の私も同じ理由で彼に恋をしたっけ。
ずっと忘れていた気持ちを思い出しながら久しぶりにきちんと彼の顔を見た。
私がこの物語を好きな理由はやっぱりあなたにもあったのかもしれないね。
水晶の光る、キラキラのカーペットを淡いピンク色のドレスで歩く。
シルバーの大きなリボンがついたミュールは可愛くてお気に入りだ。
約2週間くらい、ノア殿下と言い合いをしてから彼とは一言も話していない。
目が合えばさっと先に彼が逸らす。
今夜の夜会は、私とノアが話すことはないかもしれない。
そうしたら、他の令嬢達が私たちの間の微妙な空気感に気がついて、今がチャンスだとばかりにノア殿下に近づき、そのうちの誰かともっと親密になるかもしれない。
そしてその人が新しい婚約者になるのかもしれない。
そうなればいいのだ。
物語のなかの悪役令嬢。私はそもそも彼に婚約破棄される運命なのだから。
その形が変わっただけ。
でも、悪意のある人間にこの世界を崩されるのは許せない。
今日は、誰かが転生しているレイアに会って話ができる。
緊張で冷たくなった手でドレスを握りしめた。
夜会が始まると、次々に色とりどりのドレスで煌びやかな令嬢たちがやってくる。
私が最初に話しかけたのは、会場の隅に佇んで動かない、女性だった。
「お久しぶりです。姉様。」
「あら、久しぶりココ。最近はどう?ノア殿下と仲良くしているの?」
「いや、それが…」
「まあ、早く結婚するなり、離れるなりしなさいよ。」
「えぇ?」
気せんのない物言いをする彼女。
薄紫色のロングの髪を縦にくるくると巻いている。
ココ・レイルウェイズ私の姉、リリア・ルーテルだ。
リリアは第1王子の婚約者だったのだが、遠い国の小国の王子と知り合い、恋に落ちて、駆け落ち同然で、その国のもとに嫁いだ。
破天荒で、自由気ままな姉である。
「私のせいであなたにかかるプレッシャーが大きくなったのかもしれないけど、あんな両親のことなんか気にしなくていいのよココ。好きにしなさいね。」
「え、…えぇ。」
私は両親と変わらず良好な関係を築いているが、リリアは両親と長い間まともに話していない。
「ミレサ王子はどちらに?」
ミレサ・ルーテル。それがリリアの結婚相手である。
「私のわんこちゃんならあそこに居るわよ。」
指さす先に、他の令嬢に話しかけられているミレサ王子がいた。
「姉様、旦那様をわんこ呼ばわりはよろしくないと思います。…というか、女性に大人気ですね。」
「ほんとね。まったくあの子は。よく言い聞かせないといけないわね。」
S気質の姉は、優しい王子を尻にひいているようだ。旦那というより、飼い犬のように接している姿に彼が心配になる。
「それにしても、今日はノア殿下狙いが多いのね。」
リリアの視線の先を見ると、華やかな令嬢たちに囲まれているノアがいた。
もともと仲のいい令嬢は多いのだが、今日は私とノア殿下の仲がよろしくないという情報がもう回っているのだろう。
いつもよりたくさんの令嬢を彼の周りに携えていた。
「ええ。そうです。私が彼と婚約解除をしたいと、考えているという情報が、令嬢達の間で知れ渡っているからです。」
そう言うとリリアは驚いた表情を浮かべた。
「まあ、そうなの。…まあ結局ノア殿下もユアン殿下の弟だものね。似ているのかもしれないわね。」
「え?」
リリアは、ミレサ王子と恋に落ちたからユアン殿下との婚約を破棄したのかと思っていたが、他にも理由があったのだろうか。
「でもユアン殿下よりずっとノア殿下の方が良いと私は思うわ。それじゃあまた後でね。」
そう言うと、リリアはミレサ王子を令嬢から引き剥がしに行った。
次は誰に話しかけに行こうと思っていると、向こうから走りよってくる足音が聞こえた。
「ご機嫌よう、ココ様、お元気でした?」
「あら、ライラ、ご機嫌よう。私は変わりないわ。あなたもお変わりない?」
「ええ。私は変わりないですわよ。でも、ココ様は、違いますでしょ?あの話はほんとう?」
ユーリアと同じ白銀の髪を耳の下でツインテールにしている目の大きな可愛らしい女の子は、ライラ・クリスフォード。
ロシェルと、ユーリアの親戚にあたる女の子だ。
「残念ながら本当よ。ノア殿下と婚約解除を考えているの。」
「やっぱりそうですの?!」
そう言うと少し考え込む表情をしたあと、私の耳に顔を寄せた。
「ココ様、わたし、ノア殿下本気で狙いに行ってもかまわないかしら?」
わたしはそう来るだろうなと想定していたから驚かずに頷いた。
「もちろんいいわよ。応援するわ。」
物語の中で、ココとライラは仲が良い。
なぜなら、敵の敵は味方。レイアのライバルという立場からして、近しいところにライラは居るのだ。
ライラはノア殿下に純粋に恋をしている。
立場を求めて彼に近寄る他の令嬢たちとは一味違うのだ。
物語のなかでは、嫉妬心からレイアに悪事を働き、その悪巧みが明るみに出て、ノア殿下からは嫌われてしまい、恋は叶わない。しかし今回は私が自分から引く隙に、頑張って欲しいと思う。
この子を見ていると、純粋に人を想う恋の楽しさを思い出す。
「ノア殿下のどんなところに惹かれているの?」
「そうですわね…」
頬に手を当てて考える姿勢に入ったライラの視線の先にはノア殿下がいる。
「私、ノア殿下は人に平等だなと思いますの。」
「平等?」
「ええ。一見、いろいろな令嬢たちに手を出す優柔不断な方と見受けられます。でもノア殿下は、きっともう二度と会わないような小さな村の娘にも優しくできるのだわ。ほんの少しの接点だけでも人の良いところを見つけてくださるのよ。」
恋愛フィルターが掛かっているからじゃないのかな、と思うけど、正直その理由はなんとなく私も理解出来る。
「高貴な令嬢にもそこらの町娘にも同じように接してくださる。だからこそ私のような貴族の女ほど、彼に恋するのだわ。町娘の良さまでも見つけられる方ならきっと誰にも見つけてもらえていない私の良さも見つけてくれるって。」
きらきらとした潤んだ瞳で語るライラがこんなにも可愛く見える。
あぁ、いいな。
『レイアと星の国』この物語を初めて読んだ小学生の時の私も同じ理由で彼に恋をしたっけ。
ずっと忘れていた気持ちを思い出しながら久しぶりにきちんと彼の顔を見た。
私がこの物語を好きな理由はやっぱりあなたにもあったのかもしれないね。
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