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私 x 異世界
「……おはようございます、剣聖様」
「ーーふぇ?! 私が剣聖?」
目が覚めたら、知らないベッドに寝かされていてフワフワの寝心地に二度寝を決め込もうとしていたら、突然現れたヴィクトリアン調のメイド服を着た女性に起こされた。
昨日は夜中三時頃までスマホでBL小説を読んでいたからまだ頭が回っていないけど、此処が私の自宅でない事は分かる。
「あっ、スマホ」
辺りを見回してもスマホどころか荷物も見当たらない。オタオタしていたらメイドさんが「こちらをお探しでしょうか?」と見慣れたガマぐちのポシェットを差し出してきた。
「ありがとうございます」
お礼をいって受け取ると、ボッーとした頭のままポシェットの中身を探る。
「ちがう、ちがう、違う、ちがーう」
お目当てのスマホは出ずに、最近やっとの思いで手に入れていたR18の文庫ばかりが出てきた。それも読みたいけど今はスマホが欲しいの。
やっと出てきたスマホの画面を確認すると。日付も時刻もなんだか適当な数字になってるし、何故か圏外だしwifiも繋がっていない。
「待って! 昨日の続き読めないの!? 私の生きる糧は!? 今日の推し様の新しい御姿は拝見出来ないの?」
よく分からない現実に、ショックでベッドに倒れ込んだ。
・
・
・
不意に、静かすぎると感じて顔を起こして横を見ると、さっき取り出した文庫を手に表紙だけを見て固まっているメイドさんがいた。
視線は固定されじっとり汗をかき、僅かに頬が上気して赤くなっている。
かすかに聞こえる鼓動が速く、強く。
待って! 私、彼女の中で何かが目覚めた瞬間を目撃してしまった?
いま見ているのは、『婚約破棄された転生侯爵令嬢が、腐女子拗らせて王子と王子を全力でカップリングします』か。
「ねぇねぇ、ここにはそんな感じの本てあるの?」
見られていた事に気が付いたメイドさんが、慌てて本を置いて答えるけれど目線は本から離れない。
「無かったと思います。元々書物が少ないですし、王子の名前で書かれた物語など内容によっては不敬罪で捕まって牢屋に入れられます」
「ん、最後ちょっと不穏な感じなんだけど。別に王子の名前なんて使ってないし……」
「いえ? この本の自国王子の名前は、この国の王子と同じなまえ「返しなさい!!」」
なんなのよ! 今、不敬罪で捕まるとか言ったそばから、王子と同じ名前だなんてビックリするじゃない。こんなの持ってると知られたら私が捕まってしまうじゃないの!
こんな危ない本はポシェットに仕舞っておきましょう。
その時、外からノックの音と「マリー、剣聖様はお目覚めですか? そろそろ国王様もご到着なされますよ」との声が。
大切な事をすっかり忘れていたマリーの顔が真っ青になる。
大慌てで用意されていた服に着替える。こちらもヴィクトリアン調でスカートが膨らんだドレス、コルセットでウエストをギューっと絞められてかなり苦しい。マリーさんもうダメ、ギブ……なんか出そう。
全く慣れていないコルセットとハイヒールの靴を履いて長い廊下を歩く、前を行くメイド長さんに急かされるけど、ごめんなさいこれ以上早く歩くのは無理です。
目的の部屋に到着したのか、入り口で待機している騎士の人に到着を伝えてドアを開けてもらう。
中に入ると私のマンションより広い部屋に、バロック様式の内装に壁には素敵な絵が飾ってあり、テーブルを挟んだ真ん中の席に豪華そうな服と冠を被った一目で王様と分かる人物が待っていた。
左右を守る騎士の人の隣に知的そうなおじ様、女王様と思われる女性とメイドが二人。
おじ様の挨拶と自己紹介に続いて、詳しい内容を王様が何やら話し始めたけれど、その段階で私の脳内は絶賛妄想を始めていた。
それは、王様の後に立っている近衛騎士の二人。
ピカピカした無駄に装飾の多い鎧に、頭のヘルメットには鳥の羽根飾りまで付いている。
左の人は体格も良くて優しそうな雰囲気の爽やか青年、右の人は少し憂いなタレ目で金色の前髪がクルンとしている所が庇護欲をそそりそう。
さっき入り口を開けてくれた時、右の人(カイル、仮称)に挨拶すると少し照れた風だったのだけれど、左の人(アルバラード、仮称)は目を真っ赤にして「チッ」と舌打ちまで聞こえた気がした。
いや、今まさに睨まれている。
(「これは俺のだからな」
グッとカイルの腕を掴み「女が見てんじゃねえ」
この後カイルは壁際に連れて行かれて「何であの女と話してたんだ?」と壁に詰め寄られる。
唇と唇が触れ合いそうな距離で熱い息が//
そして夜には「何? お前があの女と話してるの見て俺が嫉妬するとでも思ったのか?」って、覆い被さる(アルバラード、仮称)が(カイル、仮称)の赤面して困ってる様子を楽しそうに見るんだ)
「~で、剣聖殿にはお願いしたいのだが如何だろうか?」
「えっ?! はっ、はい!」
妄想を拗らせていたら王様の話が終わっていた。
王様との会談も無事に? 終了して、最初の部屋へと戻る。
疲れてベッドへとダイブした私は、ポシェットからスマホを取り出して画面を開いた。
無意識にこれまでの当たり前の行動を取っただけなのに、突然の虚無に襲われる。
電波がない……。
ネットに繋げられない。
スマホを開いても、もうあの作品の続きが読めない。
あの作家さんの新作も、あの神絵師様の絵も、もう二度と見る事が出来ないなんて!
最悪の気分で画面をボーッと見てると。不思議な事に、いつもの小説アプリに新着マークが付いている事に気が付いた。
最後に開くの忘れてたかな?
軽い気持ちでアプリをタップする。
するとそこには、昨日更新されたと見られる日付けの作品が上がっているではないですか!
私の心に干天の慈雨が降り注いだ。
作者様、本日の栄養をありがとうございます。
作者様に感謝の念を述べ新着の作品リンクを開く。
・
・
・
「はぁー、今回も神がかっていた」
じっくりと本日のBLを堪能させて頂いた事で心にも少し余裕が出てきた私は、やっとこの現実に立ち向かう事にした。
「ねえ、マリーさん?」
私がスマホを見ている間、ずっと静かに壁沿いで待機していたメイドさんの名前を呼ぶ。
「はい、何か御用ですか剣聖様?」
「ここ何処?」
きっと「今更そこですか!」と突っ込みたいのを我慢しているんだろうなと思いながら、メイドさんの説明を聞く。
ーー この国の名前はアースガルド王国
今いるのは、その王都でかつ王城の中。
私を剣聖と呼ぶのは、十日前に神様からの神託で『この国に剣聖を遣わせる』とあったそうだ。
その十日目に当たる昨夜、王城の祭壇の前に現れたのが私だったという事 ーー
やっぱり異世界ってヤツですね。私が大人の姿のまま現れたという事は転移なのかな?
私の主軸はBLだけれど、一般的なラノベの知識はあるので何となく分かる。
だけど、私ここに来る前に神様とか会ってないよ? 何の試練とか使命も言われてないし。
目が覚めたら「剣聖様」なんて呼ばれていたけど、その理由も聞いてないよ?
マリーさんがとても疲れた顔をしている。
「それともう一つ、このポシェットなんだけど何でも取り出せるの?」
「マジックバッグに入れてた物だと取り出せますが?」
マリーさんの説明によると、本来のマジックバッグだと入れた物しか取り出せない。入るのは間口の大きさまで、重さは感じず生きている物は入れられないと言う事。
そうだよね? だけど、今朝取り出してた本やスマホってね、本棚に入れていた物だしスマホは充電してテーブルに置いてたはずなんだ……。
これはちょっと検証が必要ですね。
因みにマジックバッグを持てるのは王様とか貴族、大店の商人や成功した冒険者くらいだそうでマリーさんも当然持っていないそうです。
何となく予想する私の『ガマぐちポシェットくん』の性能だけど。
私の部屋にある物が取り出せるのかなと言うのが一番で、次に買った事がある物? 何なら頭に思い浮かんだ物全部だなんて贅沢なこと考えちゃったりして。
結果は、買った事がある物でした。
これはこれで凄い助かる、きっとこの国にいたら不便な事も多いと思うんだよね。
日本に住んでいた日本人としては、あれだけ便利な事に慣れてしまったらアレがないコレがないと言う生活が想像できないものね。
惜しむべきはポシェットの間口が12.8cmしか無いのでB6サイズの文庫がギリ、あの夏のイベントで必死で並んで手に入れた献本達は泣く泣く諦めましたーー。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あかり(主人公)
窓乃朱里(まどのあかり)、29歳
医療従事者。毎月のお給料のほぼ全てをBL小説やグッズに突っ込む筋金入りの腐女子。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
読んで頂きありがとうございます。
少しでも楽しんで頂けましたら、フォロー応援して貰えると作者が大変喜びます。
よろしくお願い致します。
「ーーふぇ?! 私が剣聖?」
目が覚めたら、知らないベッドに寝かされていてフワフワの寝心地に二度寝を決め込もうとしていたら、突然現れたヴィクトリアン調のメイド服を着た女性に起こされた。
昨日は夜中三時頃までスマホでBL小説を読んでいたからまだ頭が回っていないけど、此処が私の自宅でない事は分かる。
「あっ、スマホ」
辺りを見回してもスマホどころか荷物も見当たらない。オタオタしていたらメイドさんが「こちらをお探しでしょうか?」と見慣れたガマぐちのポシェットを差し出してきた。
「ありがとうございます」
お礼をいって受け取ると、ボッーとした頭のままポシェットの中身を探る。
「ちがう、ちがう、違う、ちがーう」
お目当てのスマホは出ずに、最近やっとの思いで手に入れていたR18の文庫ばかりが出てきた。それも読みたいけど今はスマホが欲しいの。
やっと出てきたスマホの画面を確認すると。日付も時刻もなんだか適当な数字になってるし、何故か圏外だしwifiも繋がっていない。
「待って! 昨日の続き読めないの!? 私の生きる糧は!? 今日の推し様の新しい御姿は拝見出来ないの?」
よく分からない現実に、ショックでベッドに倒れ込んだ。
・
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不意に、静かすぎると感じて顔を起こして横を見ると、さっき取り出した文庫を手に表紙だけを見て固まっているメイドさんがいた。
視線は固定されじっとり汗をかき、僅かに頬が上気して赤くなっている。
かすかに聞こえる鼓動が速く、強く。
待って! 私、彼女の中で何かが目覚めた瞬間を目撃してしまった?
いま見ているのは、『婚約破棄された転生侯爵令嬢が、腐女子拗らせて王子と王子を全力でカップリングします』か。
「ねぇねぇ、ここにはそんな感じの本てあるの?」
見られていた事に気が付いたメイドさんが、慌てて本を置いて答えるけれど目線は本から離れない。
「無かったと思います。元々書物が少ないですし、王子の名前で書かれた物語など内容によっては不敬罪で捕まって牢屋に入れられます」
「ん、最後ちょっと不穏な感じなんだけど。別に王子の名前なんて使ってないし……」
「いえ? この本の自国王子の名前は、この国の王子と同じなまえ「返しなさい!!」」
なんなのよ! 今、不敬罪で捕まるとか言ったそばから、王子と同じ名前だなんてビックリするじゃない。こんなの持ってると知られたら私が捕まってしまうじゃないの!
こんな危ない本はポシェットに仕舞っておきましょう。
その時、外からノックの音と「マリー、剣聖様はお目覚めですか? そろそろ国王様もご到着なされますよ」との声が。
大切な事をすっかり忘れていたマリーの顔が真っ青になる。
大慌てで用意されていた服に着替える。こちらもヴィクトリアン調でスカートが膨らんだドレス、コルセットでウエストをギューっと絞められてかなり苦しい。マリーさんもうダメ、ギブ……なんか出そう。
全く慣れていないコルセットとハイヒールの靴を履いて長い廊下を歩く、前を行くメイド長さんに急かされるけど、ごめんなさいこれ以上早く歩くのは無理です。
目的の部屋に到着したのか、入り口で待機している騎士の人に到着を伝えてドアを開けてもらう。
中に入ると私のマンションより広い部屋に、バロック様式の内装に壁には素敵な絵が飾ってあり、テーブルを挟んだ真ん中の席に豪華そうな服と冠を被った一目で王様と分かる人物が待っていた。
左右を守る騎士の人の隣に知的そうなおじ様、女王様と思われる女性とメイドが二人。
おじ様の挨拶と自己紹介に続いて、詳しい内容を王様が何やら話し始めたけれど、その段階で私の脳内は絶賛妄想を始めていた。
それは、王様の後に立っている近衛騎士の二人。
ピカピカした無駄に装飾の多い鎧に、頭のヘルメットには鳥の羽根飾りまで付いている。
左の人は体格も良くて優しそうな雰囲気の爽やか青年、右の人は少し憂いなタレ目で金色の前髪がクルンとしている所が庇護欲をそそりそう。
さっき入り口を開けてくれた時、右の人(カイル、仮称)に挨拶すると少し照れた風だったのだけれど、左の人(アルバラード、仮称)は目を真っ赤にして「チッ」と舌打ちまで聞こえた気がした。
いや、今まさに睨まれている。
(「これは俺のだからな」
グッとカイルの腕を掴み「女が見てんじゃねえ」
この後カイルは壁際に連れて行かれて「何であの女と話してたんだ?」と壁に詰め寄られる。
唇と唇が触れ合いそうな距離で熱い息が//
そして夜には「何? お前があの女と話してるの見て俺が嫉妬するとでも思ったのか?」って、覆い被さる(アルバラード、仮称)が(カイル、仮称)の赤面して困ってる様子を楽しそうに見るんだ)
「~で、剣聖殿にはお願いしたいのだが如何だろうか?」
「えっ?! はっ、はい!」
妄想を拗らせていたら王様の話が終わっていた。
王様との会談も無事に? 終了して、最初の部屋へと戻る。
疲れてベッドへとダイブした私は、ポシェットからスマホを取り出して画面を開いた。
無意識にこれまでの当たり前の行動を取っただけなのに、突然の虚無に襲われる。
電波がない……。
ネットに繋げられない。
スマホを開いても、もうあの作品の続きが読めない。
あの作家さんの新作も、あの神絵師様の絵も、もう二度と見る事が出来ないなんて!
最悪の気分で画面をボーッと見てると。不思議な事に、いつもの小説アプリに新着マークが付いている事に気が付いた。
最後に開くの忘れてたかな?
軽い気持ちでアプリをタップする。
するとそこには、昨日更新されたと見られる日付けの作品が上がっているではないですか!
私の心に干天の慈雨が降り注いだ。
作者様、本日の栄養をありがとうございます。
作者様に感謝の念を述べ新着の作品リンクを開く。
・
・
・
「はぁー、今回も神がかっていた」
じっくりと本日のBLを堪能させて頂いた事で心にも少し余裕が出てきた私は、やっとこの現実に立ち向かう事にした。
「ねえ、マリーさん?」
私がスマホを見ている間、ずっと静かに壁沿いで待機していたメイドさんの名前を呼ぶ。
「はい、何か御用ですか剣聖様?」
「ここ何処?」
きっと「今更そこですか!」と突っ込みたいのを我慢しているんだろうなと思いながら、メイドさんの説明を聞く。
ーー この国の名前はアースガルド王国
今いるのは、その王都でかつ王城の中。
私を剣聖と呼ぶのは、十日前に神様からの神託で『この国に剣聖を遣わせる』とあったそうだ。
その十日目に当たる昨夜、王城の祭壇の前に現れたのが私だったという事 ーー
やっぱり異世界ってヤツですね。私が大人の姿のまま現れたという事は転移なのかな?
私の主軸はBLだけれど、一般的なラノベの知識はあるので何となく分かる。
だけど、私ここに来る前に神様とか会ってないよ? 何の試練とか使命も言われてないし。
目が覚めたら「剣聖様」なんて呼ばれていたけど、その理由も聞いてないよ?
マリーさんがとても疲れた顔をしている。
「それともう一つ、このポシェットなんだけど何でも取り出せるの?」
「マジックバッグに入れてた物だと取り出せますが?」
マリーさんの説明によると、本来のマジックバッグだと入れた物しか取り出せない。入るのは間口の大きさまで、重さは感じず生きている物は入れられないと言う事。
そうだよね? だけど、今朝取り出してた本やスマホってね、本棚に入れていた物だしスマホは充電してテーブルに置いてたはずなんだ……。
これはちょっと検証が必要ですね。
因みにマジックバッグを持てるのは王様とか貴族、大店の商人や成功した冒険者くらいだそうでマリーさんも当然持っていないそうです。
何となく予想する私の『ガマぐちポシェットくん』の性能だけど。
私の部屋にある物が取り出せるのかなと言うのが一番で、次に買った事がある物? 何なら頭に思い浮かんだ物全部だなんて贅沢なこと考えちゃったりして。
結果は、買った事がある物でした。
これはこれで凄い助かる、きっとこの国にいたら不便な事も多いと思うんだよね。
日本に住んでいた日本人としては、あれだけ便利な事に慣れてしまったらアレがないコレがないと言う生活が想像できないものね。
惜しむべきはポシェットの間口が12.8cmしか無いのでB6サイズの文庫がギリ、あの夏のイベントで必死で並んで手に入れた献本達は泣く泣く諦めましたーー。
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あかり(主人公)
窓乃朱里(まどのあかり)、29歳
医療従事者。毎月のお給料のほぼ全てをBL小説やグッズに突っ込む筋金入りの腐女子。
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読んで頂きありがとうございます。
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