不遇スキル「わらしべ長者」で殺せぬ勇者 〜魔力ゼロでも無双します〜

カジキカジキ

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魔王の住む場所

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「大変です! 人間がこちらに向けて歩いて来ます!」

 魔王の住む王城では、魔王とその側近の魔族が集まっていた。突然の部下からの報告を受け、騒然となる魔族たち。
 その中でも、一際ひときわツノの大きな魔族の男が部下に向かって叫ぶ。
 
「狼狽えるな! 来ているのは何人だ!?」

 怒鳴り声に怯えながら、駆け込んできた部下が報告を続ける。

「それが。一人の男と、小さな女が二人の三人だけで」

 その報告を聞き、魔族の男がさらに大きな声で怒鳴る。
 
「たった三人など、お前たちで始末出来んのか!」

 バンッ! と、部下に対して怒りに任せた威圧が飛ぶ。
 
「それが、やたら硬い魔法に護られていて、Poseidōnポセイドーン様の大剣でも傷一つ付けられないのです!」

 Poseidōnポセイドーンは、魔族の中でも力だけは強いとされる一人だった。

「何!? 奴の力でも止められんのか!?」

「Roial Gurd」

「ん、魔王様なにかおっしゃいましたか?」

「ロイヤルガード。昔も昔、もう誰が言ったのかも忘れたが『王は戦場で立っているだけでいい、それだけで味方の士気は上がり、敵は勝手に震え上がる』と、なので全ての魔法、全ての物理攻撃をも通さない魔法を作ってみたが、こちらからも手出し出来ない魔法となってしまってな。本当にカカシになるだけの失敗作と忘れていたのだが。そうか、あれは歩けるのであったか」

「ぬうう……」

「ちょうど良い、王城まで来させるとしよう。何か話がしたいのかも知れんからな」

「魔王様!!」

「大丈夫だ、魔法を使っている間は向こうからも手出しは出来ん。いざとなったら Hādēsハーデース、お主が護ってくれるのであろう?」

「それは必ず御守り致しますが」

「では、皆も手出ししないで此処まで来させるよう伝えよ」

 ・
 ・
 ・
 
 魔王城に入って直ぐは、魔物や魔族からの襲撃があったけれど。すごく強そうな魔族がいなくなってからは、スルスルと城の奥まで進む事が出来た。

 そして、一番奥の広間の先の一段高い場所に置かれた椅子に座る魔王と思われる人物と。その左右に数人ずつの魔族が立ち並ぶ場所まで辿り着いた俺たち。

「よく来たな」

 真ん中の、椅子に座った魔王? が話しかけてきた。意外にも、恐れを感じさせない優しい呼びかけにドキリとする。

「その魔法はもう解いて良かろう、こちらも手を出すつもりは無い。既にその子の体力がもう限界をむかえておるだろう」

 ニヤを見ると、俺の袖を掴んで苦しそうにしていたので慌てて魔法を止めさせる。
 
「ニヤ、よく頑張ったね。もう魔法は解いていいよ」

「でも……魔王いる」

 苦しそうにしながらも、魔王を睨んで目を離さないニヤ。

「彼らは襲って来ないから大丈夫」

 何とかニヤを説得して魔法を解いた瞬間、ニヤはその場で座り込んでしまった。

 収納からニヤの好きなブドウ水とお菓子を出してあげる。ブドウ水を一気に飲み干し、お代わりを貰うとお菓子をサクサク食べ始めた。
 ん、良かったいつものニヤだ。

「美味そうだな」

「えっ!?」

 まさかの魔王からお菓子の催促が来た!

「食べますか?」

「頂こう」

 収納からお菓子を取り出して魔王にもお菓子を渡す。

「うむ、久しぶりに食物を口にしたな。 Hādēsハーデースもどうだ?」

 Hādēsハーデースと呼ばれた魔族は、小さく首を振って断っていた。
 改めて、お菓子を頬張りながら隣の魔族と話している魔王の姿を見る。

 異様に細く、一見若くも見えるが皺皺のおじいちゃんにも見える。優しそうにも感じるけれど、何故だか畏怖を覚える佇まい。あれが魔王なのか。

(魔王)ボソッ

 フッとその言葉が口から溢れる。

「そう、我が今代の魔王、ミリアドスだ」

 ん? ミリアドス? 何処かで聞いた事ある名前。
 ミリアドス……ミスリアドス……そうだ!

「信託の儀……」

 その言葉にピクリと魔王が反応する。

「何だと?」

「俺が十歳になった時の神託の儀だ。あの時、神父様が間違えてミリアドス神にスキルを願ったんだった」

 その話しを聞いた魔王が、始めは含みを帯びた笑い声だったのが、突然大きく笑い始めた。

「ふっ、不可思議な事もあるものだな、敢えて間違えた名を広めた筈が、間違えた弾みで正式な名で祈られてしまうとは……ふっ、ふはははははっ!」

 やっぱり! あの書物に書かれていた通り、この世界の神の正式な名前はミリアドス。その名前を敢えて間違えて広める事で、魔法の力を弱めていたのがこの魔王だったんだ。

「あの本に書かれていた話しも全て真実で、あれを書いたのも実は魔王なんじゃないですか? それにスキルや魔法を作ったのも」
 
「それで、それを知ったお前は何がしたいのだ?」

 そう聞いてくる魔王の目には興味の色が浮かんでいた。

「俺は、この詠唱を封印します。今までの魔法も使わないようにして因子を増やしながら、自然の力で土地を肥やして作物が育つようにする。また人間同士で争いを始めるかも知れないけれど、そこには俺が行って必ず争いは辞めさせる!」

「ほう」

「そして魔王にはお願いがある。人間に対して魔物に襲わせるのを辞めてくれ、争いが無くなれば、その分の人力は作物を育てるのに使われる。実際に俺だって里では農家だったんだ」

「お前に出来るのか?」

「やる! 王家にも知り合いが出来た、勇者の力もある。時間は掛かるだろうけど、必ずこの話しは実現させる!」

「そうか……見てみたいものだな、その様な世界を」

 魔王は玉座に深く座り直すと、遠い目にしてそう呟いた。

「見られるだろう? もう何千年も生きているんだ、あと何十年なんてあっという間だろ?」

「その何十年を生きる力が、我にはもう残っていないのだよ……」

 魔王の隣に立っている魔族が、グッと目頭を押さえる。

「因子は、量が有れば自然に回復もするが。極端に減ってしまうと足りない分を我の命を吸ってこの魔王城から世界に広がっているのだ。言ってみれば因子は我の命なのだよ」

 魔王がスッと左手を上げると。薄っすらとした光の粒子が天井へと向けてキラキラと舞い上がっていく。
 
「もし、イザベッラが無くしたと言う『命玉』があれば、少しは長生きできるのだがね」

 ドクン!!

 その言葉を聞いて、突然『わらしべ長者』の強制イベントが発動した。

 収納から勝手に飛び出してきた、あの脈打つ紅玉。

「それは!!」

 魔王の隣にいたHādēsハーデースの目が見開き、体が前のめりになる。

「その反応は……これが『命玉』だと言う事ですか」

 魔王ミリアドスは黙ったまま、Hādēsハーデースが震える声で聞く。

「何を望む?」

「それは……」

 俺が答えるまでの間、魔族の唾を飲む音が響く。
 
「農家のスキルを」

 言った途端、緊張した空気が一気に弛緩し、逆に警戒する空気が生まれた。

「それで良いのか?」

「俺の友達は勇者よりも花を育てる農家が似合っているんです」

「では、農家のスキルをお前にやろう」

 魔王が胸の前で手を合わせ魔力を集めると、その手の中で魔力が固まってスキルが生まれた。フワリと漂って僕の手に収まる『農家』のスキル。

「では、これをどうぞ」

 魔王の手に渡る『命玉』

 魔王が『命玉』を胸に当てると、スーッとその体に吸い込まれていく。

「フーッ」

 魔王が『命玉』を取り込み、その命が長らえた事を感じた瞬間。

 ピロン!

 スキル『わらしべ長者Infinity』がレベルアップしました。

 久しぶりにあの声が僕の頭の中に響いた。

「イヅミ?」

「あちしは知らぬ、スキルのレベルアップまではまだまだ先のはずじゃった」

 その時、魔王がニヤリと笑いながら「サービスだ、この『命玉』と『農家』スキルとでは割りが合わんからな」と言ってイヅミにウィンクした。

 レベルアップした新しいスキルの項目には「スキル交換」の文字が。

 これで、テツの持つ『勇者』のスキルと『農家』のスキルを交換出来る!!
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