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2年生での出来事

第48話 新しいおともだち

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 あるお休みの日の前の日、レックスから「ベアーズ、明日兄ちゃんやお姉ちゃん、あとアリスとクリスタルのある洞窟に行く事になったから」

(クリスタルのある、どうくつ?)そう言われて以前アッシュと2人で頼み事をしに行った時、帰りに寄ったお店でアッシュが持っていたクリスタルをお店の人に渡していた事を思い出し、(あれかぁ!)と理解してコク(分かった!)と納得したように頷いたのだった。

「分かってくれたか」とレックスが言った後、明日に備えてその日は早く眠った。


 翌朝。いつも通り目覚めて身じたくをしてクリスタルのある洞窟に向かった。

 洞窟の前に到着したけどまだ誰も来てはいなかった。少ししてからアッシュとメリッサがやって来て、それから少ししてアリスが······(あれ? あれって······)なぜかマーシュと一緒にやって来た。

 当然2人の姿を見たレックス達も「お、おいレックス。アイツって······」「うん。マーシュだよ」って言ってた。

 そうしてアリス達が近くに来て「遅くなってごめん」「いや、良いんだけど。何で彼が?」「実は昨日マーシュに今日の事を話したら、『僕も一緒に行ってあげるよ。人手は多い方が良いと思うから』って言ってくれたから、付いてきてもらったのよ」「へぇ······そうだったんだ」

「はい。今日はよろしくお願い致します、アッシュ先輩」「······あぁ。まぁ取り敢えず行こっか」「「うん!」」「はい!」「ええ」(おー!)アッシュの掛け声にみんなが反応して洞窟に入って行った。


 目的の場所に向かいながら、レックスとアッシュとメリッサが何か話をしながら歩いている一方、アリスとマーシュも2人で何か話をしながら歩いていた。

 そんな2組を交互に見ながら(ホントにこれ、どうなるんだろう?)とボクは少々心配した。

 大分歩いた後、目の前にものすごい光が見えてきたと思ったら、「おぉ、あそこだあそこ」「あぁ、そうだったね」

 アッシュとレックスが目的の場所に着いた事を知らせてくれてみんなでそこに向かった。すると······「「う、うわぁー」」(おぉーーーっ!!)部屋の中にあったクリスタルを見て初めて来たアリス達やボクはとても驚いた。

「それで兄ちゃん、どれだけ必要なの?」「あぁ。えーっと······あれぐらいの大きさのを5、6個で十分だ」「それじゃあ、1個ずつ持ってけば良いぐらいだね」「そうだな」とレックスとアッシュが言い合ってそれぞれ1個持ってその部屋を出ることにした。

 ······なぜかボクにも背中に1個背負わさせられ、レックスがこれまたなぜか持っていたロープで体とクリスタルを巻き付けられて······(何で?)。


 そう思いながらも出口に向かった。もうじき出口に着くと思われた時、ピクッ!(クンクン。っ! この匂い······魔物?)今まで出会ってきた魔物達から感じたのと同じ匂いがしてきたのだった。なぜか今来た洞窟の奥の方から······。

 そんなボクの様子を見たレックスが「どうした? ベアーズ」って聞いてきたけど、その事には答えず(もしまた悪い奴だったら······)と思ったらボクは匂いのした方へ駆け出したのだった。

「あっ、ベアーズ!······」レックスがボクの名前を叫んだ後にも何か言ったけど、聞き取れなかった。


 大分奥まで来たところでかなり匂いが強くなってきたため、(ここからはレックスが来てから行く事にしよう)とレックスが来るのを待つことにした。

 少しして「ベアーズ!」(ほーら来てくれた)やっぱりレックスがボクを追い掛けて来てくれたのだった。

「ったくお前は、どこまで行く気なんだ?」(だってこの先に何かいるんだもん!)レックスにそう聞かれてこう思いながらずっと奥の方を見続けていた。

 そうしたら、「レックスーー!」「えっ?」(え? 今の声、アリス?)そう思ってボク達が声の聞こえた方を見たら、やっぱりアリスが1人でこっちに向かって来ていた。

「ア、アリス!?」「ハァ、ハァ、ベアーズはいた?」「いたけど、何で1人で来たんだよ!」「だって、心配だったから」「だからって、あんな事があったのに1人で来ること無いだろ!」

(ちょ、ちょっとレックス。そんなに怒らなくても)と思っていると「レックス、何をそんなに怒ってるの?」(そうだそうだ!)アリスもそう聞いた。

「だから······」とレックスが言い出してから、何か2人で色々言い合いになっちゃった。

 さすがにそれらを聞いていて(ど、どうしよう······)と困っていたら、ピクッ!(あ)また魔物の匂いを奥から感じだしたため、奥の方を向いて唸りだした。

 その事にレックス達も気付いてくれて奥の方を見据えだした。すると奥から······1匹の小さな魔物が現れた。

 するとその魔物を見てレックスが「っ! ロ、ロックサイ!?」と叫び、(ロックサイって言うんだ)とボクが思っていると、その後にレックスが「······の、子供、か?」と呟いた。

(えっ······子供?)子供と聞いてさすがにボクもキョトンとした。

(何で子供の魔物がこんなところに1匹で?)なんて思ってたらレックスが目の前のロックサイの子供に近付こうとした。すると······ビクッ! タッタッタッタッタッ!(あっ)奥に逃げちゃった。

「逃げちゃった······ね」「うん。······流石に気になるし、追いかけようか?」「そうね」と後を追うことにした。


 そうして少し先に進んだところでさっきのロックサイの子供と、それより少し体の大きなロックサイがいた。

(この子の親かな?)とボクが思っていると、「レ、レックス」「う、うん」レックスとアリスがなぜか警戒心を示しだしたのだった。

(何でそんなに警戒してるの?)と思いつつ、(まぁいっか)と思ってボクはトコトコと子供のロックサイの方に近付いた。

 そして「初めまして。ボクベアーズって言うんだけど、君は?」と話しかけた。すると「ボ、ボクは······ロ、ロックサイって呼ばれてるけど」と答えてくれた。

「ふーん······じゃあこれから君のこと、"ロックくん"って呼んで良い?」と尋ねたら「えっ······ロ、ロック、くん。······う、うん。良いよ」「じゃあよろしくね! ロックくん」「うん。こっちこそよろしく。ベアーズ、くん」ボクと子供のロックサイのロックくんとでそんなやり取りをしあった。

 すると突然後ろの方から「アリス!」「大丈夫」(ん?)レックスとアリスの声が聞こえたと思ったら、アリスが隣にやって来た。そして「さっきは驚かせてごめんね」とロックくんに言った。

 するとロックくんも「ううん、良いよ」と言いつつ体をアリスに擦り付けたのだった。

「くすぐったいわ」とアリスが反応していると、親のロックサイもボク達に近付いて来た。

 そのロックサイにアリスは「別にあなた達をどうにかしようと来たわけじゃないのよ」と言いながら大人のロックサイの顔をなぜた。

「そうでしたか」と言いつつ親のロックサイもアリスの手を擦り返したのだった。

 そこでようやくレックスも近くに寄って来てアリスに「怖くないの?」って聞いたら、「うん、全然。きっと私達が勝手にロックサイは恐ろしいモノだと思い込んでいただけなのよ」ってアリスは答えた。

 それを聞いてレックスは何かを考えだし、(何考えてるんだろう?)と思ったすぐ後に「行こっか」とアリスに声をかけて2人はその場を離れた。

 ボクも「じゃあロックくん、バイバーイ」とロックくんに声をかけ、ロックくんも「バイバーイ。ベアーズくん」と返してくれた。


 それから出口に向かっている時もまたレックスとアリスが何か話し出したけど、今度はさっきと違って最後は楽しそうに話し出したのを見てボクも(仲直り出来たみたいで良かった良かった)と思った。

 出口を出たところでアッシュとメリッサとマーシュが待っていたので3人に近寄り、「やっと出てきたか」「うん。待っていてくれたんだね」「心配だったから。ベアーズも無事に見つかったのね」「はい」と言い合った。

 それから、「にしても、えらい時間がかかったなぁ」「実は、奥でロックサイの親子に遭遇して······」「「えっ!?」」さすがにロックくん達に会った事を聞いたらアッシュとメリッサが物凄く驚いた。

「ロ、ロックサイの親子って」「大丈夫よ、お兄ちゃん」「えっ?」それからアリスが色々アッシュとメリッサに説明し、それを聞いたアッシュとメリッサも「そうだったのか」「それじゃあ本当にもう大丈夫なのね、アリスちゃん」と安心し、「うん! 大丈夫よ、お姉ちゃん」とアリスも返したのだった。

 そんな3人のやり取りを、事情の知ってるボクとレックスは優しい眼差しで見つめ、逆に事情の知らないマーシュは不思議な感じで見つめていたのだった······。


 そしてボク達はそのまま王都に帰り、入口の門をくぐった所でアリスとマーシュと別れ、クリスタルを頼んだヒトのお店に行ってクリスタルを渡し、お礼のお金をもらってお店を出た。

 それからアッシュがそのお金をレックスに渡してアッシュとメリッサとその場で別れてボク達は寄宿舎に向かった。

 寄宿舎の部屋に着いたところで「ハァー。さすがに疲れたよなぁ、ベアーズ」とレックスがベッドに寝転がってそう言ってきた。

(ホントに疲れたぁー)そう思いながらボクも部屋の床にうつ伏せに寝そべったのだった······。

 それから少ししてレックスがベッドから起き上がり、今回もらったお金をまた部屋に置いてある袋に全部入れたのだった。

 そんなレックスの行動を見た後ボクは窓の外を眺めながらロックくん親子の事を思い出し、(また会えると良いなぁ。少なくともロックくんとは······)などと思いを馳せていたのだった。


 近いうちに再び2体と出会える事になろうとは知らないで······。
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