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2年生での出来事

第55話 エルフ達の国

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 オーク達を退治しに行って何日か経った頃。

(ふぁ~。······あれ?)いつもより遅く目が覚めてレックスが寝ているベッドを見たら、既にいなくなっていた。

(起こしてくれたって良いのにぃ)と思いつつ部屋の窓から外を見てレックスを探しだした。

 すると村の入口近くでアッシュと何か話をしている様子だった。

(いた!)それを見つけたボクはすぐさまレックス達の下に向かった。

 とその時レックスが手に赤い······羽のような物を持ち出したのが見えた。

(あれって······っ!)それがハウルのおっちゃんの所に行くための羽だと思い出したら、(ボクも行くーっ!)と猛ダッシュし、ピョン! とレックスの肩目掛けてジャンプした。

 何とかレックスがハウルのおっちゃんの所に行く前に引っ付けたけど、その際レックスが体をよろけさせ「ベ、ベアーズ!」と強い言い方で名前を呼んできた。

「ハハッ! コイツも行きたがってるみたいだな」(そうそう)「全く」アッシュがそう言ってくれてレックスも呆れながらも一緒にハウルのおっちゃんの所へ連れて行ってくれた。

 
ハウルのおっちゃんの所に着いて「ハウル様、レックスです」と声をかけるとハウルのおっちゃんが出てきて「おぉレックス。今日はどうしたんじゃ?」と聞いてきた。

 するとレックスは「この羽の事で相談したいことがありまして」と伝えると、「まぁとりあえず中に入りなさい」(おじゃましまーす!)と家の中に通された。

 家の中に入って座ったところで、「それで、その羽の事で相談したいことと言うのは?」ハウルのおっちゃんが尋ねた。

 するとレックスは「はい。この羽が移動の羽と呼ばれてて、離れた所同士を一瞬で移動でき、主にエルフ族が使っている物だと今年担任となりましたエルフ族のスティーブン先生から伺いまして」「確かにその通りじゃ」(そうだったんだ)

「それで、マリンタウンとを自由に行き来が出来るようにもう1枚貰えないかと思いまして」「マリンタウンとか。確かにそれが出来れば色々都合がよくなるかものぉ」「はい。そうすれば何かあった時いつでも行けるようになりますし」といった話を聞き、レックスはそこまで考えてたんだと感心した。

 
 その時、「あの、ところでハウル様。そもそもこの羽は一体······」と尋ねたら、ハウルのおっちゃんが「その羽はのぉ、世界樹の葉から作られた物なのじゃ」と言った。

(世界樹?)今まで聞いたことのない言葉が出てきたので、そう思いながら首を傾げた。

 するとレックスが「世界樹!? って、あのエルフ族の王国の奥に生えていると言われている樹ですか?」(そうなんだ)と聞くと、「そうじゃ。その世界樹から葉を1枚取ってその葉を移動したい先の中で最も神聖なる自然物、川やら神木やら大地に接触させるのじゃ。暫くしたら色が変わるから、完全に変色したら完成という訳じゃ。変色させる地点によって色が変化して、エルフの関係先なら白、儂らヒト族の関係先なら赤という具合にな」ってハウルのおっちゃんは説明した。

「そうだったんですか」とレックスが納得したら、「しかしまぁ、お主になら恐らくも分けてくれるのではないかのぉ」(ん?)「あの方って?」

「エルフ王じゃよ。エルフの王国を治めておるエルフ族の国王じゃ」「エルフ王」(そんなヒトがいるんだ)ハウルのおっちゃんの説明を聞いてレックスもボクもエルフの国王ってヒトに興味を持った(みたい)。

「うむ。お主のエルフ族に対しての今までの貢献などを聞けば、恐らく1枚ぐらいは分けてくれるとは思うが······」そこまで言ったところでなぜかハウルのおっちゃんは黙ってしまった(どうしたんだろう?)。

「まぁその辺りも含めて一度アイツに相談してみるのも有りじゃろうて」(アイツ?)ボクがそう思っていると「はい。ですのでこの後ヨートス様にも相談しに行くつもりでいました」「そうじゃったか」とレックスは答えた。

(ああ、アイツってロースの父ちゃんの事かぁ)と思ってたらレックスがボクを抱き上げてそのままハウルのおっちゃんの家を出て、今度は白い羽を空に向けてエルフ達が住んでいる里に飛んだ。

 
 里に着いて早速以前泊まった長の家に向かい、ヨートスってヒトのいる部屋に向かった。

 部屋に入ると「レックス!」(あっ)「やぁ、レックス君」ロースも偶然いたのでヨートスってヒトと同じようにレックスへ声を掛けた。

 それに対してレックスも「やぁ、ロース。お久しぶりです、ヨートス様」とそれぞれに挨拶をした。

「それで、今日は一体どんな用件で?」とヨートスってヒトが尋ねたので、「実はこの······」さっきの羽の事を伝えてエルフの王国の事を聞いていた。

「そういう事か。それならフィンラル様もお許しになるだろう」(ん?)「フィンラル様?」初めて聞いた名前だったため、ボクもレックスも誰? と思った。

「ああ。エルフ王様のお名前だ。······もしかして、ハウルは教えてないのか?」コク(うん!)「あの方としか言ってませんでした」とボクが頷きレックスが言ったのを見聞きしたら、ヨートスってヒトは急に険しい表情になって「······説明するのを面倒くさがったな、アイツ」と言った。

 そのすぐ後に「まぁ良いとして、ちょっと待っててくれ、今紹介状を書いてあげよう」と言われて「ありがとうございます!」とレックスがお礼を言ったら、「父さん、僕もレックスと一緒に行っても良い?」とロースが聞いたので、「まぁ良いだろう。お前の事も書いてやるよ」「やったぁ!」とロースは喜んでいた。

そしてヨートスってヒトが何かを書いている間、「ところでさぁレックス。この間の試験何だけど······」「ああ、あれ······」ロースとレックスは少し前にレックスが言っていた試験っていう事について話をし出し、途中から「ズルいだろ! それ」「偶然引いたんだからズルじゃないだろ」などと盛り上がっていた。

 
 暫くして「書き上げたよ」とヨートスってヒトに言われ、そのヒトが書いていたモノをレックスが「ありがとうございます!」と言いながら受け取った。

 その後「ところで、エルフの王国へはどう行けば良いのですか?」とレックスが聞いたら、「付いてきたまえ」と言って部屋を出ていこうとしたのでレックス達は後に続いた。

 家を出て少し歩いたところで、「この辺りって、以前ダークエルフ達が襲ってきた時に里の人達が避難した場所では?」「ああ、そうだよ」レックスとヨートスってヒトがそんな話をした。

(そうなんだぁ)と思っていたら、「あそこだよ」ヨートスってヒトは目の前に見えている木を指差した。

「あの木は?」「この里のご神木だよ。そして······」そう言うとヨートスってヒトはその木に近付いて片手を木に当てた。

 するとご神木の正面が割れて目の前に空洞が現れた。(うわぁっ!?)

「ここがエルフの王国へと繋がっているんだ」「そ、そうだったんですか?」「ああ。あの時も万が一の場合はここから王国へ避難するつもりだったんだよ」と話してくれた。

 
「それじゃあ、行ってきます」ともあれボク達は空洞の中へ入って行った。

 空洞の中は真っ暗だったけど、道が真っ直ぐだったからレックスもロースも迷わず進み続けれた。そして「レックス! あれ」「光だ!」2人が前方に光を見つけてそちらに向かった。

 空洞を抜けたら目の前がとても眩しかったので、みんな目を閉じて暫く動けないでいた。

 ようやく眩しさに慣れてきたので目を開けたら、目の前にはとても輝いた王都の中の雰囲気と似た光景が広がっていて、そこにはロースやヨートスってヒトに似たヒト達が大勢いた。

 その光景を見てレックスが「ここがエルフの王国かぁ」と呟いた。

 
 それからレックス達は入口らしき所まで向かい、そこにいたヒトに「待て! ヒト族の子供とエルフの子供が一緒になって我が王国に何用だ!」と声を掛けられた。

するとロースが「僕は砂漠の里の長ヨートスの息子ロースで、こちらは僕や父の友人のレックスと言います」と自分やレックスの事を説明し、続いてレックスが「ヨートス様よりの紹介状も持参しております」と言うとそこにいたヒトの1人がレックスの持っていたモノを掴んで見た。

「確かにヨートス殿からのものだ。しばしここで待たれよ」と言って王国の中へ消えていき、暫くしてから戻って来て「フィンラル様がお会いになられるとの事なので付いて来てくれ」と言われたので後に続いた。

 暫く歩いたら目の前にマリンタウンにあったのと似た感じの建物が見えてきたので、(あれがエルフ達のお城かぁ)と思った。

 そのお城の前にいたヒトとここまで連れてきてくれたヒトが何か話をしたあと、「それではこちらへ」と今度はお城の前にいたヒトの後に続いて中に入った。

 それからまた暫く歩いたら大きな扉の前に辿り着き、「フィンラル様! 先ほどの子供達をお連れしました!」と連れてきてくれたヒトが言ったら扉が開けられた。

 
 開いた後にレックスとロース(とボク)が奥へ進み、大きなイスに座っているヒト(きっとあのヒトがフィンラルってヒトだな)の近くまで行った。

 そしてレックス達が止まったところで、「そなた達か、ヨートスの息子とその友人とは」「「はい!」」「ロースと言います!」「レックスです! そしてこの子はベアーズと言います」ペコッ(初めまして)。

 レックス達が自己紹介し、ついでにレックスがボクの事も紹介したので自然と頭を下げた。

 するとフィンラルってヒトが「ヨートスからの手紙でいきさつは分かった。そのうえでレックス君? なぜ君は移動の羽を欲しがるのかね?」とレックスに質問した。

 するとレックスは、「はい。それはこれまで何度か海人族達が住んでいますマリンタウンへ赴くことがあったのですが、その度に他の人の手を借りて向かっていましたので、これからも恐らくマリンタウンを訪れることがあると思いますので、出来れば僕1人ででも行けるようにしたいと思ったからです」と答えた。

 それを聞いたフィンラルってヒトは、「良いでしょう」と答え、近くにいたヒトに「この2人を世界樹の下に案内してやりなさい」と言って「はい。どうぞ、こちらへ」とそのヒトにそう言われてボク達は付いて行った。

 
 そのヒトに付いてってお城を出て、少し歩いた先の坂道を上っていたら、(ん?)目の前に何かやたら大きな木の頭が見えてきた。

 しかもその木に近付くにつれて全体がとんでもなく大きなサイズだと分かってきて、物凄く驚き始めた。

 そしてその木の真下に着いたところで連れてきてくれたヒトが「こちらが世界樹です」と言ったのだった······。
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