apocalypsis

さくら

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quaecunque sunt vera

undecim

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「口元に付いている弁当が美味そうだ」
 耳元で甘く囁かれた言葉に、天弥は慌てて目を開けると口元に手をやる。何かが指先に触れる感触があり、顔が羞恥に染まりだした。斎は固まったまま動かない天弥の手を掴んだ。
「こっちもだ」
 反対側の口元に斎の指が伸び、軽く触れる。そしてご飯粒を取ると自分の口の中へと入れる。天弥は心臓が大きな音を立て、頬を朱に染めながらその様子を見ていた。
 斎は天弥を見つめる。ここ最近、すぐに天弥の事を考えてしまう。誰かと一緒にいるというのは六年ぶりだが、以前もこうだっただろうかと、斎は記憶を呼び起こす。
 絢子と出会ったのは十五歳の時で、付き合いだしたのが十六歳、そして二十歳まで一緒にいた。
 当時、四歳年上の彼女に夢中ではあった。年上のはずなのに、何一つそうとは思えない彼女に惹かれていた。
 姉の友人で、なぜ姉とこの人は友人なのかと不思議に思うぐらい、正反対な二人だった。神楽は、良い意味でも悪い意味でも、現実的で自分に忠実な人間だ。それに比べ絢子は、夢の中で生きているのではないかと思えた。いや、正確には何も考えていなかったという方が、正しいのかもしれない。でなければ、大学生である絢子が高校生に、勉強を教わりに来るなんて事はしなかったはずだ。
 最初は、ただの馬鹿な女だと思っていた。物覚えは悪いし、人の言う事は何でも信じるし、何も無い所で派手に転ぶし、そして、悩み事は無いのかと嫌味を言いたくなるぐらい、いつも笑顔だった。
 思わず、誰かに似ていると思いつく。すぐに隣へ視線を向けた。そして、二人は似ていることに気がつく。基本的に、自分はこういうタイプが好きなのかと、思わず納得をしてしまった。
 だが、天弥の場合は、この容姿がかなりの割合を占めているし、もう一人の天弥の影響がかなり大きい。一目で心を捉えたあの存在が無ければ、いくら中身が好みでも、男を好きになるのは無理だっただろう。
 嬉しそうに弁当を食べる天弥を見た。その容姿は、本当は女なのでは? と思えてしまう。だが、確実に胸は無かった。それに、細くて華奢な身体ではあるが、女のような柔らかさがあるわけでもなかった。
 斎の視線に気がつき、天弥はすぐに笑みを返した。
「これですか?」
 タコの形になっているウィンナーを、斎に向かって差し出した。斎は思わず、天弥の弁当を確認する。それは、幼稚園児や女の子が好みそうなもので、どう考えても、室より量が優先される男子高校生が好むようなものではなかった。
 とりあえず、天弥がジッと見つめる為、黙ってそれを口に入れる。
「どれか食うか?」
 斎は、天弥に向かって弁当を差し出した。
「いいんですか?」
 嬉しそうにそう聞き返すと、天弥は弁当を見つめ考える。
「先生、どれが好きなんですか?」
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