apocalypsis

さくら

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emitte lucem et veritatem

quindecim

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 ふらつく身体を壁で支えながら、リビングを目指す。そして目的地へたどり着くとすぐに、キッチンへと向かった。
「お母さん、病院へ連れて行って」
 料理途中の母親に向かって、声をかけた。
「体調、悪い?」
 すぐに手を止め、振り返りながら母親が聞き返してきた。天弥は首を横に振って答える。
「先生に……」
 その後に続く、会いたいという言葉を、寸前で飲み込んだ。
「あの、先生の様子が心配で……」
 一瞬、言葉を考え、これなら不自然ではないと思うものを口にした。母親が天弥へと近づき、食卓の椅子へ座ることを促した。促されるまま、天弥は椅子へと座る。
「それならまず、ちゃんとご飯を食べてからにしましょう。そんな様子じゃあ、逆に心配されちゃうわよ」
 蒼白な顔をし、今にも倒れそうな様子の天弥に、母親は優しく諭すように言葉をかけた。天弥は力なく頷く。そして今の自分は、そんなに酷い有様なのだろうかと考えた。
「丁度、ご飯が出来るところだったから、呼びに行こうと思ってたのよ」
 そう言いながら、母親は天弥の前に料理を並べだした。レバーと茄子の味噌炒め、ほうれん草の白あえ、アサリの味噌汁と、今の天弥の状態を心配していると一目で分かる料理が目の前に並べられた。
 食欲は無かったが、なんとか食事に箸をつける。ふと、天弥は花乃がいない事に気がつき、時間を確認する。時計は十一時過ぎを示しており、朝だと思っていたことが間違いだったと知る。
 
 天弥は意識のない斎を見下ろした。うつ伏せでベッドに横たわり、点滴の管が繋げられているその様子を見つめていると、堪えようとしても堪えきれず、次々と涙が溢れ出す。
 先ほど、母親に送ってもらいここまで来た。斎の姿を確認するまで、過ぎていく時間がもどかしくて仕方がなかった。
 結局、食事もほとんど喉を通らず、すぐに連れて行って欲しいと母親にせがむ事になった。そして、母親に言われるまで、パジャマ姿に乱れた髪だということにも気がつかず、玄関へと向かっていた。
 病室へ着くと母親は神楽に挨拶をし、後ほど迎えに来ると言い残して帰っていった。
「たかみくん」
 神楽は椅子を勧め着席を促した。天弥は素直にそれに従う。
「ごめんなさい……」
 斎を見つめたまま、天弥が小さく呟く。
「たかみくんの所為じゃないでしょ」
 神楽は天弥の頭に手を置くと軽く撫でた。
「でも、僕の事なんか放っておけば、先生はこんな怪我しなかったのに……」
 神楽は、天弥の頭を抱き寄せた。
「斎が、たかみくんの事を守るのは当たり前でしょう。もし一人で逃げていたら、私が病院送りにしてるわよ」
 医師は、刃物の傷ではないと言っていた。警察も自然現象によるもので、事件性はないと言っていた。その当時、激しい風が当たり一面に吹き荒れており、それによる気圧差ではないかとの判断だった。
「でも……、僕は何も気がつかなくて……」
 自分を責める天弥の様子に、神楽は居たたまれなくなる。
「斎は大丈夫だから、そんな顔しないの」
 大丈夫とは言ってみても、まだ輸血後GVHDの不安が残っている。だがそれを天弥に伝えるわけにはいかない。
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