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1.裏世界怪異譚
第4話 特異点
午後9時半
寿々と史は芝浦ふ頭駅までやってくると、そこからは史の透視を手がかりに歩いて辺り一帯のビルの捜索を開始した。
史の透視能力は相変わらず衰えることなく、寿々がそばにさえいればその能力も格段に強力になる。
それこそ以前は半径十数m程度しか視えなかった透視能力は、今はその3倍くらいに範囲を広げ、ビル1棟であれば、10階建てくらいまでならほぼ全体を詳細に視通す事が出来るようになっていた。
二人は歩きながら廃ビルらしき建物を重点的に探した。
寿々の能力は史みたいに物質全てから情報を読み取る事はできない。
ただ、植物や生き物の中にある魂の欠片から僅かなインスピレーションを受け取る事はできる。
それが犬や猫、鳥などであれば更に明確に情報を得る事も可能だ。
それから一番有難いのが地縛霊。
もし遭遇できれば、より有益な情報を得る事も可能だろう。
そうこうしているうちに、二人は30分程度でそれと思われる廃ビルを探し出す事に成功した。
しかし動画でも話していたとおり、どうもその廃ビルの前には警備員が常駐している。
警備員の背後に建つのは地上8階建てのそこまで大きくもなく、人けの全くない廃ビル。
そんな場所を夜10時にもなろうというのに警備しているのはよほど奇妙な光景にも見えた。
「どうする史?裏手にまわれば中の様子を透視できそうか?」
寿々と史は通りを挟んだ反対側の交差点からそのビルを眺めて作戦を練る事にした。
「そうですね。流石にここからだと建物の上までは透視できないので。道を渡ったら、ぐるっと左に回って裏側から近づきますか・・」
「了解」
寿々が返事をすると、ちょうど横断歩道が青信号になったので、二人は渡りきるとそのまま廃ビルの正面を避けるようにして左の歩道を進んだ。
そしてすぐに右に折れ、廃ビルの裏手に近づこうとしたその時。
「マズいですね・・。裏にも警備員がいます」
本当に奇妙な事にそのビルの裏手にも灯りを消した状態で目立たないようにしている警備員二人が立っているのが目に入った。
「いよいよ怪しいな。まず例のビルって事で間違いないだろう・・。仕方ない一旦このまま何も喋らず通り過ぎるぞ・・」
寿々は目を合わせずに史に小声で伝えると、不自然に見えないようにポケットからスマホを取り出しチャットアプリを弄るフリをしてビルの裏手をゆっくりと通りすぎた。
そして二人はそのまま直進し、ある程度離れた場所で立ち止まった。
「・・・・どうだ?通り過ぎる時に中を視る事できたか?」
「はい。でも中には誰一人いなかったですね」
「そっか・・・・」
史はそう言った寿々の顔があまりにも心配そうな表情をしているので、こんな事をさせている松下に対して本気でムカついていた。
がしかし、やはり何だかんだ言っても自分と違って人の事を本気で心配できる、そういう優しい心を持った三枝寿々だからこそ惚れているわけで。
『実際これが魂の位の違いなんだろうな。俺みたいな4階層の動物上がりの低級魂には理解できないけれど・・』
と、史は廃ビルの方を見上げながら苦々しい顔をした。
「もう一度だけ近づいて中を透視して、それでも何も分からなかったら帰りますよ。いいですね」
そう史が言うと、寿々の表情が分かりやすく明るくなり、
「!・・・ああ、わかった」
と嬉しそうに返した。
二人は今度は裏手ではなく正面入り口の方から改めて近づき、可能ならば手前にある隣のビルのエントランス前で少しだけ足を止めて確認をする事にした。
史も寿々も特に変装などもしておらず、銀髪の長身である史は物凄く目立つ。長居をすればすぐに怪しまれるだろう。
全ては時間勝負だった。
隣のビルのエントランスに近づくと、寿々は再びスマホを取り出してあえて歩道と敷地を跨いだ辺りでスマホを操作しだした。
その間に史はエントランスから少し中へ入った場所から隣の廃ビルを見上げる。
今度は以前やっていたように、左手をビルに向け突き出し目を閉じてしっかりと透視を開始した。
目を閉じるとただ分かるのではなく、はっきりとその輪郭から鉄骨の仕組みから何からなにまで事細かに視えてきた。
それこそ中にいる虫一匹だって探し出せそうなくらい鮮明に視えてくる。
史はそこを上の階から隈なく見回した。
そして5階の一角にある部屋の中の絨毯の上にどす黒い染みを見つけると、そこが松下の言っていた公安の機動隊が不審死をしたであろう場所である事を察知した。
『なるほど・・・こうやって確認すると、事件があったのは本当だったってのがよくわかるな』
そうやって史が下の階へと意識を集中しようとしたその時。
「そこで何をしている?」
と低い声が聞こえると、一人の黒スーツの男が寿々へと物凄いスピードで近づき、持っていたスマホを取り上げようと手を伸ばしてきた。
「!!」
突然の事で寿々は驚くだけで抵抗もできず後ろに倒れそうになった。
しかしそれを後ろにいた史が咄嗟に支えると、急に手を伸ばしてきた男の手を掴み上げるようにして寿々から遠ざけた。
「・・何ですか急に?ただスマホを弄っていただけじゃないですか。何か問題でもあるんですか?」
史はまだ驚いている寿々に変わってまるで番犬かのように、その男へ睨みを利かせた。
「・・離しなさい」
その男も平然とした様子ではあったが、史の本気の馬鹿力でギリギリと手首を締め上げられ、流石に痛そうにその手を振り解いた。
そしてそのまま握られた手を数回振ると、しかめっ面のまま史を睨みつけ胸ポケットから手帳を取り出した。
「警察だ」
その黒スーツ姿で前髪を上げた堅物そうな男は、警視庁と表記されたエンブレムが入った手帳を広げた。
寿々は流石にマズいと思い少しだけ身を引きながら。
「警察・・の方でしたか。あれ?俺今何かマズい事していましたか?本当にスマホでチャットしていただけでしたが・・」
とごまかすように笑うと、その男は寿々ではなく史を見つめ。
「あなたの方は今何をしていました?隣のビルに向けて手を掲げていましたね?」
黒スーツの警官に問い詰められた史は一瞬だけ黙り込んだが、
「確かに手を伸ばしましたが、ただ手を伸ばしていただけです。何が問題なんです?」
下手に嘘のつけない性分の史はごまかす事なく、堂々と警察に怯む事なくそれだけを答えた。
男は少しだけ考えると、
「ちょっと質問があるので、そこの車の中で話しを聞かせてください」
と言って反対車線に停められた黒いクラウンを指差した。
寿々と史は気まずそうに顔を見合わせたが、寿々が目線で逆らうなよと言っているように見えたので史は、仕方なく警察の後について道路を渡ろうとしたその時。
隣の廃ビルから一人の警備員が急いで黒スーツの元へと走って近づいてきた。
「有明巡査長!」
警備員が黒スーツの男に向かってそう声をかけると、何やら耳うちをするように小声で話しかける。
「・・!わかった」
有明と呼ばれた黒スーツの警官は、そう言うと寿々と史に向き直り。
「二人は車の中で待っていなさい。警備を一人つけるから、私が戻るまで絶対に外に出ないように!」
そう言うと慌ただしく廃ビルの入口に向かて走り出し、中へと入っていってしまった。
寿々と史はどうしたものかと、その様子を見ていた途端。
パシィィイン!!
という浄化の波動〝祓〟と同じような衝撃が廃ビル全体から発せられたかと思うと、物凄い勢いで辺り一帯へと風圧と共に広がった。
「!?」
「史!!」
寿々は咄嗟にその波動から史を守る為に一歩前に乗り出し、薄っぺらい背中で庇うようにして図体のデカい史を伏せさせた。
それは以前、裏政府である常天統合府の僕、佐藤が打ち出した〝祓〟を真っ向から受けた後、史は丸一日起き上がる事も出来なくなった事があったせいでもある。
寿々はその時の事を思い出し、防げる保証もないのに身を乗り出したのだ。
「寿々さん!?何しているんですか!」
予想外の行動に驚きながらも、史はなんて無謀なと言わんばかりに寿々に対して声を荒げた。
「・・俺には祓は効かないんだよ。大丈夫だから怒鳴るなって」
「だとしても、もし祓でなかったら死んでましたよ!?本当に心臓に悪いから二度としないで下さい・・」
「わかった、わかった・・」
寿々は史の過剰な心配に、理解こそすれど少しだけ面倒くささも感じていた。
勿論、それを本人には口が裂けても言えないけれど。
「それより、史の方は大丈夫なのか?前みたいに体に力が入らないとか・・・」
「大丈夫です。流石にあの時以降、体内の呪力と浄化のパワーバランス的には後者の方が遥かに上回っていますから」
そう言われて寿々もようやく安堵したようだった。
史は元々血筋の呪いのせいで、呪力。つまり恨みつらみといった、『陰の波動』を体内に蓄積させる事によって、強大なエネルギー系の攻撃が出来る能力を持っている。
しかしその呪力は時に〝祓〟という浄化の力、『陽の波動』によって簡単に打ち払われてしまう事もある。
今の史はそのどちらも以前よりかは上手くバランス調整できるようにはなっていた為、先ほどの波動でもさほど影響はなさそうだった。
「寿々さん!!」
史は寿々の肩越しに廃ビルへと目を向け、驚いた表情で叫んだ。
「え?何?」
寿々も急いで振り返ると、先ほどまでビルの周りで立っていた警備員全員がその場からまるで蒸発するように消えてしまっていた。
「何これ・・・」
寿々がその様子を不気味がっていると、史は一番近くにいた警備員が蒸発した場所に駆け寄った。
そしてその蒸発した場所に落ちていたモノ確認する為にしゃがみ込むと、それは一枚の白い紙のようなものだった。
史は慎重にその白い紙を持ち上げる。
「形代・・・?」
それは人型に切り取られた白い和紙だった。
「え?形代?って事はあの警備員って人間じゃなかったって事か?」
半天使でありながらも、人の魂があるかないかに気づけなかった寿々はややショックを受けているようだ。
しかし問題はそこではない。
先ほどの波動のせいでここら辺一体が、嫌な雰囲気に変化している事の方が問題だった。
「おかしいですね・・・。さっきの波動が祓だったとして。一体誰が警備員の術を解いたのか・・・。それに」
史は目の前のビルを見上げ更に険しい顔をした。
「このビル・・・あきらかに先ほどまでとは違った形をしています。外観は同じですが、中が・・・!!」
話す途中で何かに気づいたように声が詰まった。
「・・・どう・・した?」
「中に・・・松下さんがいます」
「え!?な、え、どうなんだ?生きているのか?」
寿々のその動揺した反応がやっぱり気に入らない史ではあったが、仕方ないと言った雰囲気を大げさに見せながら左手をビルへと向けた。
「・・・・・・大丈夫です。歩いている様子が視えます。でも、ここから先に俺達が入り込むのだけは絶対にだめです。いいですね?」
史は頑なに寿々が怪異に巻き込まれるのを防ごうと必死だ。
下手すればこのまま衝動的に中へと走り出してもおかしくないとも思えたからだ。
「そ・・それは・・。わかっているけれど。でも・・」
「大丈夫です。先ほど飛び込んでいったあの警察が今、松下さんと同じ階にいます。実際の中の様子は分かりませんが、上手くいけばあの警察が松下さんを連れ戻してきてくれるかもしれませんし・・・・!!」
と史はそう話したと思ったら急に振り返って辺りを見渡した。
「どうした?」
その異様な雰囲気に寿々も自ずと身構える。
「何か、すげぇ嫌な予感がします・・」
「嫌な予感?」
寿々がそう言った直後、バッと史は通りの奥の方へ向き直った。
そして物凄い険しい顔で道の奥の方を見つめる。
寿々もそのちらの方向を見てみた。
すると道の奥の方から物凄い速さで、真っ黒な闇がこちらに向かって迫ってきていた。
「なんだよ・・あれ」
寿々がそう言うや否や、史は寿々の細い手首を握り締めダッシュで反対方向へと駆け出した!
「うわ!」
急に馬鹿力で体を引っ張られたものだから危うく肩が脱臼しかけた。
しかし反対側に向かった史はその先で再び急に足を止める。
視線の先には反対側と同じようにして真っ黒な闇が同じスピードでこちらに近づいてきていた。
「!?」
史は立て続けに上空にも目を向けた。
見ればそこにも同じように漆黒の空間が空を覆い隠し、と同時にこちらに向かって落ちてきた。
「くっそ!」
史はその凄まじい速さにこのままでは絶対に飲み込まると思い、その場で寿々を抱え上げると一気に目の前の廃ビルの入口へと駆けこむより他なかった。
ガシャン!!
と荒々しい音と共に廃ビルのガラス扉の中へと飛び込んだその瞬間、目の前に黒い津波のような漆黒の煙がビルの扉に物凄い風圧と共にぶつかった。
史はそのまま入口の奥まで駆け抜け、目の前の受付カウンターのような場所の裏へと身を隠した。
ゴォォォオオオ!!!
外からまるで大嵐かと思うほどの轟音が聞こえてくる。
20秒くらいは経っただろうか。
ようやく音が鳴りやむと、史はカウンターから顔を突き出し外の様子を伺った。
「どう、なっているんだ史?」
「・・・外は真っ暗です。いや、真っ黒と言っていいです」
寿々も史の横から入口のガラス戸に目を向けた。
そこには外の街灯など一切見る事も出来ない程、漆黒の空間が広がっていた。
「一体どうなってるんだ?これ」
寿々が冷や汗を流しながら様子を確認していると、
「はぁ・・・・。何でいつもこうなってしまうんですか・・・」
と史はその場に座ったまま疲れたように項垂れた。
寿々はその落ち込んだ史を見て、何だか申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「何で・・・て。多分・・・俺が、この世界にとって特異点みたいなものだから・・」
寿々はその理由の大半が自分の存在にあるのだと、そう理解していた。
しかも存在だけが問題なのではない。
こんなイレギュラーな存在でありながら、さらに秦史という一人の人間の運命までを大きく捻じ曲げて自分の恋人にさせているのだ。
勿論史自身はさせられている、とは思ってはいないが、少なくても寿々はそう思っていた。
「特異点・・・・・」
史は寿々からそんな言葉が出て来るとは思っていなかったから少しだけ驚いたが、でもその言葉は妙にしっくりときた。
つまり死後一度はこの世から消えた肉体を無理矢理再構成させた寿々の存在は、この世の全ての法則が当てはまらずその周りには常にブラックホールのような見えないエネルギー体が発生する。
それ故に自ずと何かしらの現実からかけ離れた怪異や超常現象が引き込まれてきてしまうのだ。
寿々と出会った頃の史は、ただの怪異・妖怪好きな高校生だった。
故に無知無謀のワクワク感が常にあった。
しかし今はそうじゃない。
『あぁ・・・二人で幸せに暮らすだけの平穏な生活が欲しい・・・』
そうやって頭を抱える姿は、正直言って19歳の史にとっては本当に気の毒にも思えた。
そんな事を考えながら、天井を仰ぐように上階の方を見ると松下とあの警察がまだ同じ階をぐるぐると回っていた。
「・・・・・・」
本当に様子は分からないが、松下が見せた動画が本当だとすればここから少しでも動けば、オフィスのような空間が異次元的に連続している、そんな境界世界に連れて行かれるのだろう。そうすれば変なところで穴にでも落ちて、最悪この世に戻ってこられなくなるかもしれない。
当然史は、このまま入り口前のこの場所から動かないでいたかった。
しかし・・・。
もし寿々の言う、自分の存在がこの世界の『特異点』だとすれば、このままここにいられる可能性の方が遥かに低い事も何となく予想ができた。
入口のドアが三回程大きく揺れ、ガシャガシャガシャン!!という激しい音がした。
「!?」
寿々は思わずその音を確認しようとカウンターから入口を覗こうとしたが、史はそれを力いっぱい阻止した。
何故なら、史には透視で目視せずとも何が入って来たのかすぐに分かっていたからだ。
その姿形は3m近くの背丈があり、姿形はまるで棒人間やスレンダーマンのように細長く真っ黒であり、さながらゲーム中の不気味なモンスターのようなカクカクした動きをしている。
「今、入ってきた奴に絶対に気づかれないようにしてください・・」
史は寿々を抱えたまま更にカウンターの奥へ入り込んで身を隠し、耳元で本当に小さな声で伝えた。
ビルの入口は受付カウンターを中央にして右手と左手に分かれており、右側がエレベーターと階段。
左手にはラウンジのような開けた空間となっている。
その漆黒の棒人間はカクカクした動きをしながら左のラウンジの方へ向いたかと思うと、ブォンという怪音を発すると、まるで瞬間移動のように姿を消し、再び奥の方でその姿を現した。
その様子を見ていた寿々と史も、その棒人間がどうみてもこの世の存在ではないし、ましてや幽霊や妖怪の様な超自然的な存在でもない事はすぐに分かった。
史は数秒悩んだが、やはりここにいて奴に見つかるリスクよりここから階段の方へ移動する方がまだ生存率がありそうな気がしてきた。
「寿々さん・・。どうしますか、このままここで隠れるか。アイツが向こうにいるうちに階段の方へ逃げるか・・」
「とりあえず、少しでも生き延びられそうな方を選ぼう。俺は階段を選らぶ」
寿々もどっちも良い選択だとは思えなかったが、今の所数パーセントだけ階段方向の方がマシだとそんな予感がしていた。
史は頷くと再び寿々をひょいと持ち上げ、足音を立てないように静かに階段を目指した。
史の身体能力はどうなっているのか不明だが、寿々を抱えて歩いているというのに本当にまるで忍者なのかと思うほど足音も立てずそのまま階段を上へと上る。
下の方からあの棒人間が動く、ブォン!という音がカウンター付近でしたような気がした。
二人は2階へと上がると、その目の前の光景に唖然とした。
それはあの動画と同じ遥か奥まで延々と続く白い壁と突出した柱、そして妙な湿り気を感じる古びたベージュ色の絨毯だけの空間がそこに広がっていたからだ。
「嘘だろ・・・」
寿々はそう言って、史の腕から下りると後ろを振り返った。
「!!」
振り返ったそこには、今上ってきたはずの階段はどこにも存在せず、反対側と同じような境界空間がただ延々と続いていた。
寿々と史は芝浦ふ頭駅までやってくると、そこからは史の透視を手がかりに歩いて辺り一帯のビルの捜索を開始した。
史の透視能力は相変わらず衰えることなく、寿々がそばにさえいればその能力も格段に強力になる。
それこそ以前は半径十数m程度しか視えなかった透視能力は、今はその3倍くらいに範囲を広げ、ビル1棟であれば、10階建てくらいまでならほぼ全体を詳細に視通す事が出来るようになっていた。
二人は歩きながら廃ビルらしき建物を重点的に探した。
寿々の能力は史みたいに物質全てから情報を読み取る事はできない。
ただ、植物や生き物の中にある魂の欠片から僅かなインスピレーションを受け取る事はできる。
それが犬や猫、鳥などであれば更に明確に情報を得る事も可能だ。
それから一番有難いのが地縛霊。
もし遭遇できれば、より有益な情報を得る事も可能だろう。
そうこうしているうちに、二人は30分程度でそれと思われる廃ビルを探し出す事に成功した。
しかし動画でも話していたとおり、どうもその廃ビルの前には警備員が常駐している。
警備員の背後に建つのは地上8階建てのそこまで大きくもなく、人けの全くない廃ビル。
そんな場所を夜10時にもなろうというのに警備しているのはよほど奇妙な光景にも見えた。
「どうする史?裏手にまわれば中の様子を透視できそうか?」
寿々と史は通りを挟んだ反対側の交差点からそのビルを眺めて作戦を練る事にした。
「そうですね。流石にここからだと建物の上までは透視できないので。道を渡ったら、ぐるっと左に回って裏側から近づきますか・・」
「了解」
寿々が返事をすると、ちょうど横断歩道が青信号になったので、二人は渡りきるとそのまま廃ビルの正面を避けるようにして左の歩道を進んだ。
そしてすぐに右に折れ、廃ビルの裏手に近づこうとしたその時。
「マズいですね・・。裏にも警備員がいます」
本当に奇妙な事にそのビルの裏手にも灯りを消した状態で目立たないようにしている警備員二人が立っているのが目に入った。
「いよいよ怪しいな。まず例のビルって事で間違いないだろう・・。仕方ない一旦このまま何も喋らず通り過ぎるぞ・・」
寿々は目を合わせずに史に小声で伝えると、不自然に見えないようにポケットからスマホを取り出しチャットアプリを弄るフリをしてビルの裏手をゆっくりと通りすぎた。
そして二人はそのまま直進し、ある程度離れた場所で立ち止まった。
「・・・・どうだ?通り過ぎる時に中を視る事できたか?」
「はい。でも中には誰一人いなかったですね」
「そっか・・・・」
史はそう言った寿々の顔があまりにも心配そうな表情をしているので、こんな事をさせている松下に対して本気でムカついていた。
がしかし、やはり何だかんだ言っても自分と違って人の事を本気で心配できる、そういう優しい心を持った三枝寿々だからこそ惚れているわけで。
『実際これが魂の位の違いなんだろうな。俺みたいな4階層の動物上がりの低級魂には理解できないけれど・・』
と、史は廃ビルの方を見上げながら苦々しい顔をした。
「もう一度だけ近づいて中を透視して、それでも何も分からなかったら帰りますよ。いいですね」
そう史が言うと、寿々の表情が分かりやすく明るくなり、
「!・・・ああ、わかった」
と嬉しそうに返した。
二人は今度は裏手ではなく正面入り口の方から改めて近づき、可能ならば手前にある隣のビルのエントランス前で少しだけ足を止めて確認をする事にした。
史も寿々も特に変装などもしておらず、銀髪の長身である史は物凄く目立つ。長居をすればすぐに怪しまれるだろう。
全ては時間勝負だった。
隣のビルのエントランスに近づくと、寿々は再びスマホを取り出してあえて歩道と敷地を跨いだ辺りでスマホを操作しだした。
その間に史はエントランスから少し中へ入った場所から隣の廃ビルを見上げる。
今度は以前やっていたように、左手をビルに向け突き出し目を閉じてしっかりと透視を開始した。
目を閉じるとただ分かるのではなく、はっきりとその輪郭から鉄骨の仕組みから何からなにまで事細かに視えてきた。
それこそ中にいる虫一匹だって探し出せそうなくらい鮮明に視えてくる。
史はそこを上の階から隈なく見回した。
そして5階の一角にある部屋の中の絨毯の上にどす黒い染みを見つけると、そこが松下の言っていた公安の機動隊が不審死をしたであろう場所である事を察知した。
『なるほど・・・こうやって確認すると、事件があったのは本当だったってのがよくわかるな』
そうやって史が下の階へと意識を集中しようとしたその時。
「そこで何をしている?」
と低い声が聞こえると、一人の黒スーツの男が寿々へと物凄いスピードで近づき、持っていたスマホを取り上げようと手を伸ばしてきた。
「!!」
突然の事で寿々は驚くだけで抵抗もできず後ろに倒れそうになった。
しかしそれを後ろにいた史が咄嗟に支えると、急に手を伸ばしてきた男の手を掴み上げるようにして寿々から遠ざけた。
「・・何ですか急に?ただスマホを弄っていただけじゃないですか。何か問題でもあるんですか?」
史はまだ驚いている寿々に変わってまるで番犬かのように、その男へ睨みを利かせた。
「・・離しなさい」
その男も平然とした様子ではあったが、史の本気の馬鹿力でギリギリと手首を締め上げられ、流石に痛そうにその手を振り解いた。
そしてそのまま握られた手を数回振ると、しかめっ面のまま史を睨みつけ胸ポケットから手帳を取り出した。
「警察だ」
その黒スーツ姿で前髪を上げた堅物そうな男は、警視庁と表記されたエンブレムが入った手帳を広げた。
寿々は流石にマズいと思い少しだけ身を引きながら。
「警察・・の方でしたか。あれ?俺今何かマズい事していましたか?本当にスマホでチャットしていただけでしたが・・」
とごまかすように笑うと、その男は寿々ではなく史を見つめ。
「あなたの方は今何をしていました?隣のビルに向けて手を掲げていましたね?」
黒スーツの警官に問い詰められた史は一瞬だけ黙り込んだが、
「確かに手を伸ばしましたが、ただ手を伸ばしていただけです。何が問題なんです?」
下手に嘘のつけない性分の史はごまかす事なく、堂々と警察に怯む事なくそれだけを答えた。
男は少しだけ考えると、
「ちょっと質問があるので、そこの車の中で話しを聞かせてください」
と言って反対車線に停められた黒いクラウンを指差した。
寿々と史は気まずそうに顔を見合わせたが、寿々が目線で逆らうなよと言っているように見えたので史は、仕方なく警察の後について道路を渡ろうとしたその時。
隣の廃ビルから一人の警備員が急いで黒スーツの元へと走って近づいてきた。
「有明巡査長!」
警備員が黒スーツの男に向かってそう声をかけると、何やら耳うちをするように小声で話しかける。
「・・!わかった」
有明と呼ばれた黒スーツの警官は、そう言うと寿々と史に向き直り。
「二人は車の中で待っていなさい。警備を一人つけるから、私が戻るまで絶対に外に出ないように!」
そう言うと慌ただしく廃ビルの入口に向かて走り出し、中へと入っていってしまった。
寿々と史はどうしたものかと、その様子を見ていた途端。
パシィィイン!!
という浄化の波動〝祓〟と同じような衝撃が廃ビル全体から発せられたかと思うと、物凄い勢いで辺り一帯へと風圧と共に広がった。
「!?」
「史!!」
寿々は咄嗟にその波動から史を守る為に一歩前に乗り出し、薄っぺらい背中で庇うようにして図体のデカい史を伏せさせた。
それは以前、裏政府である常天統合府の僕、佐藤が打ち出した〝祓〟を真っ向から受けた後、史は丸一日起き上がる事も出来なくなった事があったせいでもある。
寿々はその時の事を思い出し、防げる保証もないのに身を乗り出したのだ。
「寿々さん!?何しているんですか!」
予想外の行動に驚きながらも、史はなんて無謀なと言わんばかりに寿々に対して声を荒げた。
「・・俺には祓は効かないんだよ。大丈夫だから怒鳴るなって」
「だとしても、もし祓でなかったら死んでましたよ!?本当に心臓に悪いから二度としないで下さい・・」
「わかった、わかった・・」
寿々は史の過剰な心配に、理解こそすれど少しだけ面倒くささも感じていた。
勿論、それを本人には口が裂けても言えないけれど。
「それより、史の方は大丈夫なのか?前みたいに体に力が入らないとか・・・」
「大丈夫です。流石にあの時以降、体内の呪力と浄化のパワーバランス的には後者の方が遥かに上回っていますから」
そう言われて寿々もようやく安堵したようだった。
史は元々血筋の呪いのせいで、呪力。つまり恨みつらみといった、『陰の波動』を体内に蓄積させる事によって、強大なエネルギー系の攻撃が出来る能力を持っている。
しかしその呪力は時に〝祓〟という浄化の力、『陽の波動』によって簡単に打ち払われてしまう事もある。
今の史はそのどちらも以前よりかは上手くバランス調整できるようにはなっていた為、先ほどの波動でもさほど影響はなさそうだった。
「寿々さん!!」
史は寿々の肩越しに廃ビルへと目を向け、驚いた表情で叫んだ。
「え?何?」
寿々も急いで振り返ると、先ほどまでビルの周りで立っていた警備員全員がその場からまるで蒸発するように消えてしまっていた。
「何これ・・・」
寿々がその様子を不気味がっていると、史は一番近くにいた警備員が蒸発した場所に駆け寄った。
そしてその蒸発した場所に落ちていたモノ確認する為にしゃがみ込むと、それは一枚の白い紙のようなものだった。
史は慎重にその白い紙を持ち上げる。
「形代・・・?」
それは人型に切り取られた白い和紙だった。
「え?形代?って事はあの警備員って人間じゃなかったって事か?」
半天使でありながらも、人の魂があるかないかに気づけなかった寿々はややショックを受けているようだ。
しかし問題はそこではない。
先ほどの波動のせいでここら辺一体が、嫌な雰囲気に変化している事の方が問題だった。
「おかしいですね・・・。さっきの波動が祓だったとして。一体誰が警備員の術を解いたのか・・・。それに」
史は目の前のビルを見上げ更に険しい顔をした。
「このビル・・・あきらかに先ほどまでとは違った形をしています。外観は同じですが、中が・・・!!」
話す途中で何かに気づいたように声が詰まった。
「・・・どう・・した?」
「中に・・・松下さんがいます」
「え!?な、え、どうなんだ?生きているのか?」
寿々のその動揺した反応がやっぱり気に入らない史ではあったが、仕方ないと言った雰囲気を大げさに見せながら左手をビルへと向けた。
「・・・・・・大丈夫です。歩いている様子が視えます。でも、ここから先に俺達が入り込むのだけは絶対にだめです。いいですね?」
史は頑なに寿々が怪異に巻き込まれるのを防ごうと必死だ。
下手すればこのまま衝動的に中へと走り出してもおかしくないとも思えたからだ。
「そ・・それは・・。わかっているけれど。でも・・」
「大丈夫です。先ほど飛び込んでいったあの警察が今、松下さんと同じ階にいます。実際の中の様子は分かりませんが、上手くいけばあの警察が松下さんを連れ戻してきてくれるかもしれませんし・・・・!!」
と史はそう話したと思ったら急に振り返って辺りを見渡した。
「どうした?」
その異様な雰囲気に寿々も自ずと身構える。
「何か、すげぇ嫌な予感がします・・」
「嫌な予感?」
寿々がそう言った直後、バッと史は通りの奥の方へ向き直った。
そして物凄い険しい顔で道の奥の方を見つめる。
寿々もそのちらの方向を見てみた。
すると道の奥の方から物凄い速さで、真っ黒な闇がこちらに向かって迫ってきていた。
「なんだよ・・あれ」
寿々がそう言うや否や、史は寿々の細い手首を握り締めダッシュで反対方向へと駆け出した!
「うわ!」
急に馬鹿力で体を引っ張られたものだから危うく肩が脱臼しかけた。
しかし反対側に向かった史はその先で再び急に足を止める。
視線の先には反対側と同じようにして真っ黒な闇が同じスピードでこちらに近づいてきていた。
「!?」
史は立て続けに上空にも目を向けた。
見ればそこにも同じように漆黒の空間が空を覆い隠し、と同時にこちらに向かって落ちてきた。
「くっそ!」
史はその凄まじい速さにこのままでは絶対に飲み込まると思い、その場で寿々を抱え上げると一気に目の前の廃ビルの入口へと駆けこむより他なかった。
ガシャン!!
と荒々しい音と共に廃ビルのガラス扉の中へと飛び込んだその瞬間、目の前に黒い津波のような漆黒の煙がビルの扉に物凄い風圧と共にぶつかった。
史はそのまま入口の奥まで駆け抜け、目の前の受付カウンターのような場所の裏へと身を隠した。
ゴォォォオオオ!!!
外からまるで大嵐かと思うほどの轟音が聞こえてくる。
20秒くらいは経っただろうか。
ようやく音が鳴りやむと、史はカウンターから顔を突き出し外の様子を伺った。
「どう、なっているんだ史?」
「・・・外は真っ暗です。いや、真っ黒と言っていいです」
寿々も史の横から入口のガラス戸に目を向けた。
そこには外の街灯など一切見る事も出来ない程、漆黒の空間が広がっていた。
「一体どうなってるんだ?これ」
寿々が冷や汗を流しながら様子を確認していると、
「はぁ・・・・。何でいつもこうなってしまうんですか・・・」
と史はその場に座ったまま疲れたように項垂れた。
寿々はその落ち込んだ史を見て、何だか申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「何で・・・て。多分・・・俺が、この世界にとって特異点みたいなものだから・・」
寿々はその理由の大半が自分の存在にあるのだと、そう理解していた。
しかも存在だけが問題なのではない。
こんなイレギュラーな存在でありながら、さらに秦史という一人の人間の運命までを大きく捻じ曲げて自分の恋人にさせているのだ。
勿論史自身はさせられている、とは思ってはいないが、少なくても寿々はそう思っていた。
「特異点・・・・・」
史は寿々からそんな言葉が出て来るとは思っていなかったから少しだけ驚いたが、でもその言葉は妙にしっくりときた。
つまり死後一度はこの世から消えた肉体を無理矢理再構成させた寿々の存在は、この世の全ての法則が当てはまらずその周りには常にブラックホールのような見えないエネルギー体が発生する。
それ故に自ずと何かしらの現実からかけ離れた怪異や超常現象が引き込まれてきてしまうのだ。
寿々と出会った頃の史は、ただの怪異・妖怪好きな高校生だった。
故に無知無謀のワクワク感が常にあった。
しかし今はそうじゃない。
『あぁ・・・二人で幸せに暮らすだけの平穏な生活が欲しい・・・』
そうやって頭を抱える姿は、正直言って19歳の史にとっては本当に気の毒にも思えた。
そんな事を考えながら、天井を仰ぐように上階の方を見ると松下とあの警察がまだ同じ階をぐるぐると回っていた。
「・・・・・・」
本当に様子は分からないが、松下が見せた動画が本当だとすればここから少しでも動けば、オフィスのような空間が異次元的に連続している、そんな境界世界に連れて行かれるのだろう。そうすれば変なところで穴にでも落ちて、最悪この世に戻ってこられなくなるかもしれない。
当然史は、このまま入り口前のこの場所から動かないでいたかった。
しかし・・・。
もし寿々の言う、自分の存在がこの世界の『特異点』だとすれば、このままここにいられる可能性の方が遥かに低い事も何となく予想ができた。
入口のドアが三回程大きく揺れ、ガシャガシャガシャン!!という激しい音がした。
「!?」
寿々は思わずその音を確認しようとカウンターから入口を覗こうとしたが、史はそれを力いっぱい阻止した。
何故なら、史には透視で目視せずとも何が入って来たのかすぐに分かっていたからだ。
その姿形は3m近くの背丈があり、姿形はまるで棒人間やスレンダーマンのように細長く真っ黒であり、さながらゲーム中の不気味なモンスターのようなカクカクした動きをしている。
「今、入ってきた奴に絶対に気づかれないようにしてください・・」
史は寿々を抱えたまま更にカウンターの奥へ入り込んで身を隠し、耳元で本当に小さな声で伝えた。
ビルの入口は受付カウンターを中央にして右手と左手に分かれており、右側がエレベーターと階段。
左手にはラウンジのような開けた空間となっている。
その漆黒の棒人間はカクカクした動きをしながら左のラウンジの方へ向いたかと思うと、ブォンという怪音を発すると、まるで瞬間移動のように姿を消し、再び奥の方でその姿を現した。
その様子を見ていた寿々と史も、その棒人間がどうみてもこの世の存在ではないし、ましてや幽霊や妖怪の様な超自然的な存在でもない事はすぐに分かった。
史は数秒悩んだが、やはりここにいて奴に見つかるリスクよりここから階段の方へ移動する方がまだ生存率がありそうな気がしてきた。
「寿々さん・・。どうしますか、このままここで隠れるか。アイツが向こうにいるうちに階段の方へ逃げるか・・」
「とりあえず、少しでも生き延びられそうな方を選ぼう。俺は階段を選らぶ」
寿々もどっちも良い選択だとは思えなかったが、今の所数パーセントだけ階段方向の方がマシだとそんな予感がしていた。
史は頷くと再び寿々をひょいと持ち上げ、足音を立てないように静かに階段を目指した。
史の身体能力はどうなっているのか不明だが、寿々を抱えて歩いているというのに本当にまるで忍者なのかと思うほど足音も立てずそのまま階段を上へと上る。
下の方からあの棒人間が動く、ブォン!という音がカウンター付近でしたような気がした。
二人は2階へと上がると、その目の前の光景に唖然とした。
それはあの動画と同じ遥か奥まで延々と続く白い壁と突出した柱、そして妙な湿り気を感じる古びたベージュ色の絨毯だけの空間がそこに広がっていたからだ。
「嘘だろ・・・」
寿々はそう言って、史の腕から下りると後ろを振り返った。
「!!」
振り返ったそこには、今上ってきたはずの階段はどこにも存在せず、反対側と同じような境界空間がただ延々と続いていた。
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