オカルティック・アンダーワールド:ベート《続編》

アキラカ

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1.裏世界怪異譚

第5話  襲来

「階段が・・消えてる」

 寿々は振り返ったそこに、今しがた上ってきたはずの階段が忽然と姿を消している事に驚きその場に凍り付いた。

 史もその様子を見て、まるで見えない敵の思惑にまんまと引っかかってしまったようなそんな気がして悔しがる。

「くそ・・・ここからどうすれば元の世界に戻れるのか・・・」

 そう言いながらも史はずっと透視をし続けていた。

 目に見える空間は異常に広大で、まるでゲームのダンジョンのように延々と続いているが、上の階を視れば先ほどと同じような場所で松下と先に入った警官がウロウロと彷徨っているのが見えた。
 そのまま上階に上がれれば二人と合流するのはさほど難しい事とは思えないくらいだ。

 しかしここは現実世界の常識が通用しない境界空間リミナルスペース
 透視が出来たところで、先に進むのが本当に安全なのかは不明だ。


「俺達やっぱりこの空間に閉じ込められたって事なんだよな・・・」

 寿々は少しだけ辺りを確認するように歩きだすが、

「寿々さん、あまり不用意に歩き回らないでください。俺の透視を使っても絨毯の下に突如現れる落とし穴のような存在を見破る事はできません。俺は実際存在する物理的な障壁には万能ですが、ここのような既存の法則が及ばない場所においては全くの無力です」

 史は真剣な眼差しで辺り一帯を透視しながら悔しそうに呟いた。
 寿々は少しだけ目を瞑り何かを感じ取ろうと必死に意識を集中した。
 そして何かに気づいたようにぱっと目を開けると、史に向かって手を差し出した。

「ん?」

 史も一瞬意味が分からないと言った顔をしたが、反射的にその手を掴んだ。

「俺はもし史の人生に大きな分岐があればその時にはその未来を視る事ができる。それに関してだけは自信があるんだ。今は特別な事は何も視えないけれど、多分お前が穴に落ちそうになったりすればその先のヴィジョンが届くはず。だから俺が先に進む。慎重にゆっくり進むけど、万が一間に合わずに俺が落ちそうになったらその時はよろしくな」

 と言うと無責任にもにっこりと笑った。
 史は即座に嫌そうな顔をして開いた口が塞がらないといった顔をしてものの、確かに逆に自分が先に進んで穴に落ちたら絶対に寿々では引き上げられない事を思えばそれも仕方がなかった。

「・・・本気で嫌ですが・・・仕方ないです。今は寿々さんの能力に全て任せます」



 そうして寿々は史の手を取り、慎重にベージュ色の絨毯の上を歩き先に進んだ。



「それにしても本当に不気味な空間だよな・・・。史は確か創作されたバックルームの動画は見た事あるんだよな?」

「はい、全部ではないですが」

「それってストーリーみたいなのがあるのか?」

「一応あるっぽいですよ?確か俺が見た動画だと、そのバックルームを調査して管理する大きな研究機関があってその調査員達が、放射線から身を護る様な防護服を着ていましたね。ここにそういう危険性があるかは不明ですが」

「へぇ~。・・・もしかして史は放射線とかまで視えるのか?」

「そうですね。視ようとすれば結構鮮明に可視化されます」

「マジか」

 寿々は史の手を取りながら十字路のような場所に来ると全ての行く先を意識を集中してヴィジョンが届くか注意深く意識を集中した。

「う~ん・・・。史は透視でどこまで今視えているんだ?」

「驚く事にこの空間、俺の透視範囲を優に超えていまして。残念な事にどの方向に行ってもまだ特別なものは何も視えていません」

「そっか・・」

 寿々は再び右の方向を視ると映像は降りては来なかったが、物凄いゾワゾワっとした寒気を感じたので自然と左の方へと曲がる事にした。

 史はその様子を後ろからただ眺めていただけだが、本当に今まで数々の不思議な体験と。寿々を探しに高次元世界まで行った時の事を思えば、寿々の小さな後ろ姿がこんなにも頼もしく感じる事はなかっただろうな。とほんの少しだけ嬉しくもあった。

 そして慎重に十字路から左に曲がり、数十メートル進んだところで寿々はピタリと足を止めた。


「どうしました?」


 史が質問すると、寿々はその場に膝をつくと自分の鞄から一本の油性ペンを取り出した。
 そして床の絨毯の上にゆっくりと手をつき、前方を探るように少しずつ前に進ませる。
 その動作をしながら1メートルくらい先に手を伸ばした瞬間、突如として寿々の右手がベージュ色の絨毯の中へすっぽりと吸い込まれた。

「!!」

 史はそれを見た瞬間ゾッとして思わず寿々の腰を支えるようにして後ろに引き寄せたが、

「史!?大丈夫だから落ち着けって!」

 反して寿々は冷静に対処しており、後ろに引っ張った史の体の中にすっぽりと収まるように抱えられ身動きが取れず返って困ってしまった。

「ま・・マジで心臓止まるかと思いましたよ!」

 見れば史は相当焦ったらしく、若干涙目になっている。

「もう・・落ち着け、な?大丈夫だって」

 そう言いながら寿々は史から離れる。
 そしてもう一度床に両手をつくと、油性ペンを持って先ほどの見えない穴の少し手前に大きく横線をひいた。

「これでよし」

 そう言いながら寿々は油性ペンの蓋を閉めると、

「くっきりとした分岐のヴィジョンは見えなかったけど、どうも俺こういう危険な場所が何となく分かるみたいだ。多分これは未来が視えるのと同じ力なのかもしれない」

「そうなんですか・・・。それは助かりますけれど。はぁ・・・本気でビビりました」

 そう言って座ったままの史を見て寿々は少しだけ史に近づくと、

「俺がこんな事言うのもなんだけどさ。・・お前、俺といるといつかまた本当にしんどくなって心が持たなくなるんじゃないか?」

 寿々がそう言いながら心配そうな顔をしたが、史はその顔を見て険しい顔のまま目を逸らし考えた。

「・・だとしても、俺は絶対に寿々さんから離れたりしませんよ」

「いや離れて欲しいわけじゃないんだよ。ただ心配しすぎる事が心配で・・・」

「・・・・・」

「ま、俺もお前に心配させないで逆に素で頼ってもらえるよう、もっと頑張らないとな?」

 そう言うと寿々はゆっくりと立ち上がり、油性ペンをポケットにしまい再び史に手を差し出した。

「ほら、ぐずぐずしてるとまたあの変な奴が来るかもしれないから。行くぞ」

「・・はい」

 寿々は史の手を取ると再び別のルートを選びそちらの方角へと歩き始めた。









 一方、松下は境界空間リミナルスペースに引き込まれてから2日が経過しようとしていた。


 2日前の深夜。警備の厳しい廃ビルの方からではなく、動画ライバーが言っていた通りに隣のビルに侵入し廃ビルに近い方の空テナントに忍び込むと、いつの間にかそのままその空間に飲み込まれていた。

 しかも迂闊なことに大した装備もなく入り込んだものだから、今日は水分なども全て尽きてしまい、軽い脱水症状を起こし動けない状態に陥っていた。
 当然自分の疎かな行動を後悔したものの、下手に動けばライバーと同じように見えない穴へと落ちて帰ってこられないかもしれない。
 そう考えて下手に動くこともできず、仕方なくその場に留まる選択しか出来なった。


「・・・クソが。せっかく動画は撮れたっていうのに、あのライバーと違って通信も遮断されているし、配信はもちろん助けも呼べねぇ・・・。やっぱりあの動画はただのフェイクだったって事なのかもな・・・」

 松下はその場でそのまま大の字になって寝そべった。

「・・どうしよう。このまま本当に戻れなかったら」

 そう言って朦朧とした意識の中脳裏に浮かんできたのは丸早智子の顔だった。

「死んでもぶっ殺されそう・・・」

 そう思った途端に背筋にゾクっと怖気が走り松下は飛び起きた。
 そしてふらつきながらも立ち上がると鞄のショルダーを握り締め、壁に手を付きながらゆっくりと歩きだした。

「大体・・ここは何階なんだ・・・」

 そう言って広い部屋の十字になった場所の中央に立つと、全方向を見渡した。

「ん?」

 そして反対側にも向く。

「ん??」

 その瞬間、向いた方向の遥か奥の通路でブォオン!という低い機会音と共に、バグを起こした黒いワイヤー状のような何かがグニャグニャと高速変形しながら横切ったのを目撃した。

「!!」

 松下はマズいと直感的に思い、その未知の存在と遭遇しないように真っすぐに駆けだした。

「やべぇ!なんだよあれ!!・・はぁ!はぁ!!」

 憔悴しきった松下は、足が縺れそうになりながらも途中で右側の柱と柱の間に現れた細い抜け道を見つけるとそこへ飛び込んだ。
 そしてその抜け道の先に現れたのは、真ん中にブラウン管テレビが置かれひたすら奇妙な実験映像が流れているという広めの空間だった。
 松下は後ろから近づく存在から逃れる為そんなオブジェクトにも一切気に留めず、更に真ん中を突っ切ろうとしたその瞬間、横の柱と柱の間から現れた見知らぬ人物に服を思いっきり引っ張られ、後方へ倒れるように転がった。

「ぐぉ!!」

 その衝動で松下の手に握らていたスマホが勢いよく前方へ吹っ飛び、コンという音と共にブラウン管テレビのすぐ先に落ちたかと思うと、そのまま絨毯の中へと吸い込まれていった。

 よほど苦しかったのか倒れた松下は酷くせき込む。

「ごほごほ・・」

 松下を引っ張った人物はせき込む松下を背後から抑えつけ、

「静かにしろ!は音を感知するんだ!」

 と松下の耳元で囁いた。

「んだとぉ、ごほ、テメェのせいで大事なスマホが消えちまったじゃねぇか!」

 静かにしろと言われたのにも関わらず大声で抵抗する松下の声に引き寄せられたのか、先ほど聞いたブオォン!という不気味な音が、松下が通ってきた抜け道の先から聞こえてきたかと思うとそいつはまるで金属を引っ掻いたような耳をつんざく程の爆音の奇声を上げた。

「ギャァァアアアアアアアアア!!」

「まずい!!」

 男は松下を鷲掴みにすると、自分が通ってきた別の抜け道に松下を押し込み、自分もその物陰に潜むように隠れた。

 それと同時にテレビが置かれた部屋に現れた一体の蠢く黒い棒人間のようなソレは、良く見ると少しだけ床から浮遊し、ブォオン、ブォオンという音共にまるで二人の所在を見つけようとしているように忙しなく辺りをうろついている。

 男は松下が一言も喋らないよう、咳も出せないよう口を物凄い力で手で抑えつけ、更に壁にめり込ませる勢いで頭部を抑えつけた。

「・・・・・!」








 流石に苦しくなって我慢が出来なくなってきた松下は、せめてその力任せに押さえている手だけでもどけさせようと両手で抵抗しようとしたが、男はそれを察してか鋭い目で睨みつけてきた。

 2分、いや3分くらい経っただろうか。

 広間にいた未知の棒人間はようやく諦めたのか、再び方向を変えるとブォオン!という音共に入ってきた通路へと戻り、そのまま音は遠ざかっていった。



「は・・なせ!!」

 松下は大声は出さなかったものの、精一杯の抵抗で男の手を振りほどくと苦しそうに呼吸をくりかえす。

「いいか大声でしゃべるなよ・・・」

 黒スーツの男はまだ棒人間が去った方向を確かめながらゆっくりとテレビのある空間へと戻ってゆく。

「てめぇ・・なにしやがる!」

 松下は精一杯の凄みを出して睨みつけた。
 が、男はすぐに胸ポケットから警察手帳を取り出し、自分の名前が『有明ありあけ白朗しろう』であることをサッと松下に見せた。

「警察だ。お前、ここが立ち入り禁止だと分かっていて中に入ったのか?」

 と高圧的に松下を見下ろす。

「警察だぁ?はっ・・・なんだ、やっぱりあの噂は本当だったのか・・」

「噂?」

「ああ、ここで警視庁の機動隊員が不審死をしたってやつさ」

 松下がそう言うと、有明は先ほど以上に怒りを露わにして松下の胸ぐらを掴んだ。

「それをどこから聞いた・・・」

「どこから?そんなの巷じゃ噂になるくらい知れ渡っているぜ?案外警視庁内部も口が軽いんじゃないのか?」

 松下の悪態はこんな時ですら健在だ。

「ちっ・・」

 有明は舌打ちすると、乱暴に松下の服を放った。

「・・・大体、あれはなんだ?こんな状況なんだ。俺にも知る権利くらいあるだろう?」

「・・・・・」

 有明は目の前の男が、厄介なマスコミ関係なのだと即座に察するとそれ以上無駄話をしたく無いと言いたげに黙り込んだ。

「おい、何か答えろよ」

「お前のような面倒な奴に話す事は何もない。さっきも話した通り、ここは警視庁で管轄している立ち入り禁止区域だ。何でお前がここに入ってこれたかは知らないが、無事ここから外に出たかったら黙って付いてこい。それと・・・」

 そう言って再び松下を睨みつける。

「さっきみたいにビビッて急に走り出したりするなよ。お前のスマホと同じように絨毯の中にある見えない穴の中に落ちれば二度と元の世界には戻ってこられないからな」

「・・・・・」

 松下は有明を睨み返すと今度は松下がそのまま無言になり、仕方なく落とした鞄を拾いあげるとショルダ―を肩にかけた。
 そしてスマホが落ちて行ったであろう薄汚いベージュ色の絨毯をしかめっ面のまま見下ろすと、小さく舌打ちをしてそのまま有明の後に付いて歩く事にした。







 寿々と史はかれこれ2時間近く同じフロアを行ったり来たりしながらも、寿々が可能な限り書いた落とし穴を記す線のおかげで、次第に自分達が今どの辺りにいるのが分かりつつあった。


「寿々さん、少しだけ休みましょう」

 そう言って史は繋がれた寿々の手を引いて部屋の隅へと誘った。

「・・そうだな。結構やれるだけやったけど、やっぱり空間が歪んでいるからなのか、なかなか思うように先には進めなさそうだな」

 寿々も少しだけ疲れたのか壁を背に腰を掛けると両足を放るように伸ばした。
 史はスマホを取り出し時間を確認する。

「もう23時半ですね。当然ながら電波は繋がらないし、今が現実の時間と同じ時間なのかも分かりませんが」

「そうだな・・・。はぁ、こんな事になるなら何か食べ物も買ってくるんだったな」

「お腹空いているんですか?珍しいですね?」

「確かに。何でかな?俺、やっぱり前ほどこういう窮地の状態をそれほど怖いと思っていなし、結構なんとかなるんじゃないかって本気で思ってるみたいだ」

「そう・・なんですね。何か以前とは真逆ですね・・。今は俺の方が遥かにビクついてますよ」

 そう言って少しだけ落ち込む史の隣で寿々は顔を覗き込むと、

「違う違う。俺、多分史と一緒なら絶対に大丈夫、って前よりももっと強くそう思っているんだ」

「?・・・それは俺の未来が視えるからですか?」

「それも少しだけあるけど・・・俺が視える未来ってただの可能性の一つだからさ・・・」

 寿々はちらっと史を見るとゆっくりと自分の膝を抱え、

「俺さ、史の事は勿論だけど、自分の事を何よりも信じたいんだよ。ほら、アカーシャで俺、自分の体を育ててだろ?ま、あの時は鉢に入った苗木にしか見えなかったけど。・・俺それまで生きていた頃は自分の何もかもがコンプレックスで嫌いだったからさ。一度体から切り離されてからは物凄く自分の事が愛おしくて堪らないんだ。だから、俺は俺の事を信じているし、俺を好きでいてくれる史の事も同じだけ信じてる。だから絶対に大丈夫って信じられる」

 元気づけられているのは分からなかったが、史は寿々のその言葉が嬉しくてそのまま包み込むように抱きしめた。

「・・・なんか以前とはすっかり別人のような事言ってますけど、それでもいいです」

「な!・・それ丸さんにも言われたけど。俺は何も変わってないからな?心境の変化はただの成長!」

「分かってますよ。俺もそうですから」

 史はそう言って少しだけ元気を取り戻すと、バックパックから水筒を取りだし、

「とりあえず水分補給だけはしておいてください。先は分かりませんが、まずは今が大事ですから」

「助かる!ちょうど喉が渇いていたところだった」

 寿々は水筒のお茶を少しだけ飲むと残量を確認するように振り、そのまま史に返した。

「夜の間は何とかなるかもしれないけれど、明日の朝以降は分からないな。それまでにここから抜け出す方法を探しださいないと」

 史も一口だけお茶を飲むと、水筒の蓋を閉めた。

「もちろんです。何としても今夜中にここから抜け出す方法を見つけてやります」









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