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1.幽霊団地譚【長編】
第7話 三枝寿々
しおりを挟むその後は大変だった。
401号室の村田が4階の共有廊下から発狂し飛び降りた事を寿々は知りえる限り、また伝えられる範囲で状況の説明だけを警察に話した。
勿論ここへ心霊現象を目的として取材しにきている事も包み隠さず話したが、警察からは酷くあしらわれ場合によっては迷惑行為で署まで来てもらわなければならなくなるので二度とこういう事に関わらないようにと強めに注意をされた。
警察と話しを終えると別の場所で205号室の佐藤と103号室の当間も同じように警察から話しを聞かれているのが見えた。
寿々はふと時計を見る。
21時半丁度。
警察に事情徴収をされる前に史は自分が連れて来た何も知らないただの学生アルバイトなのでと断りを入れ、通報と発見の報告が終わると史を現場から少し離して対応に応じていたのだ。
寿々は佐藤と当間が史について悪意ある発言をしていない事だけを祈った。
もし警察の質問が史に行けば恐らく学校や家庭への報告も必要になるだろうし、場合によっては史の進学などにも問題が生じるだろう。
正直まだ出会って2日のただの他人だというのに、そんな事を考えて配慮してしまう自分につくづく呆れた。
そしてF棟の脇に数台停められたパトカーの回転灯の向こうに大きな体を小さくさせ、ちょこんと佇む学ラン姿の史を見つけると寿々は大きなため息をついて夜空を仰いだ。
『通常では考えられない事が起こります。あらゆる災難に注意しましょう』
今年の年始に引いた大凶だったおみくじの言葉が再び脳内に蘇った。
佐藤と当間にちゃんと挨拶をしてから会社へ戻ろうと思っていたが、なかなか警察との話しが終わらなかったので寿々は編集長の最上へ事情を簡潔に記したメールを送った後、最上の指示で時間も遅いのでタクシーを使ってそのまま戻るように言われそれに従った。
二人への謝罪はまた後日にして寿々と史は大通りに出るとそこでタクシーを拾い乗り込んだ。
車中、寿々はようやく解放された安堵からすぐに寝に入ってしまった。
寿々は夢を見ていた。
それは子供の頃の記憶だ。
寿々は小さい頃体が弱く外に遊びに行くことも出来ず、また頻繁に熱にうなされその度に両親を心配させた。
そして寿々が4歳の時、父親が交通事故で突然帰らぬ人になると母・真紀と寿々は二人きりになってしまったのだった。
父を亡くしたショックで更に塞ぎこむようになった寿々を心配した母は、ある日知人からボランティアで犬の譲渡会を開くので来ないか?と誘われ、寿々と一緒に市内の会場へと向かった。
若い犬の譲渡が次々と決まる中、会場に設置されたサークルの一番奥で隠れるように怯え動けない灰色の毛の大型の老犬がいる事に寿々は気づいた。
なかなか外に出て来ることも出来ず、その姿を見た寿々は何か感じ取るものがあったのか暫くの間ずっとただただその老犬を見つめ続けたのだ。
「寿々?どうしたの?」
真紀が声を掛けても寿々はずっとその老犬をひたすら見つめ続ける。
「寿々?」
ともう一度声をかけると
「・・おはなししてるの」
とだけ答える。
「お話?あのワンちゃんと?」
真紀が不思議そうに質問すると
「うん。・・あのこずっとずっとくるしかったんだって。だからどうすればくるしくなくなるの?ってきいたら。わからないんだってさ」
真紀は寿々のその発言をただの妄想だろうとその時は感じていたのだが。その直後にボランティアスタッフからその老犬は生まれてからずっと狭い檻の中に10年以上閉じ込められろくな餌も与えられずに過ごしてきたから人間不信になっているんだと聞かされた。
もうこれ以上誰も飼い主が見つからなかったら老犬という事もあり先は分からないという話しを聞き、真紀は咄嗟に。
「寿々?この子と一緒にいたい?」
と聞いたのだった。
すると寿々はぱっと明るい顔になり。
「うん!いっしょにいたい!!いいの??ほんとうにいいの?」
と今まで見たことがないほどの笑顔で喜んだ。
寿々はその老犬へ振り返ると笑顔で。
「どうすればいいかわからないのなら、ぼくといっしょにさがそうよ!ぜったいみつかるから」
と話しかけたのだった。
その後その老犬は日向吾と呼ばれ5年近く寿々のすぐ隣で幸せに過ごす事になる。
寿々は日向吾と暮らし始めると不思議と徐々に体も丈夫になり、毎日母と一緒に日向吾の散歩に出かけることによって体力もつき、5歳からようやく幼稚園にも通えるくらいまで元気になった。
日向吾は不思議な犬だった。
譲渡会で怯えて丸まっていたのが嘘のように自宅に来た当日から寿々にとても良く懐き、そして寿々が体調の悪い時はずっと寄り添い、熱でうなされる時はなぜか部屋の隅に向かって大きく吠えたかと思うと翌朝には寿々はすっかり熱も引き元気になっていたと、母の真紀は不思議そうにいつも話していた。
何故突然日向吾の夢を見たのかは分からない。
もういなくなってから19年になる。
小さい頃は頻繁に日向吾の存在を感じて毎日夢を見ていたが、そのうち少しずつそれもなくなり大人になってからは全くといっていいほど夢に出てくることもなかったのに。
気づくとそこは昔母と日向吾と一緒に暮らしてた父が残してくれた懐かしい我が家だった。
暖かい日の当たる縁側で日向吾が寿々の膝の上に顎を乗せ、ゆっくりと尻尾を揺らしながらくつろいでいる。
「日向吾?」
寿々は久しぶりにその姿を見て思わず涙が溢れてきた。
それから日向吾を抱きしめながら額に顔を埋めてその懐かしいお日様の匂いを胸いっぱいに吸い込むと胸の内の恐怖が次第に柔いでゆくのを感じた。
日向吾は寿々の顔をペロペロと舐めそしてまたゆっくりと寿々の膝の上に顎をのせた。
寿々はこの夢が覚めなければいいな・・と本気で思った。
しかし日向吾は突然何かを察知したのか遠くの方を見つめて低い唸り声をあげる。
寿々はその方向を見つめた。
庭を挟んだ塀の向こうに何かが潜んでいた。
それを見て寿々は急に胸が跳ね上がりゾワと全身の毛が逆立つ。
黒くモヤがかかる煙のような動きをした、しかし煙とは明らかに異なるひたすら真っ黒いソレだ。ウネウネと透かしブロックの間からこっちを見ているではないか。
そして日向吾の唸り声がどんどん大きくなったと思うと、次の瞬間その黒い影に向かって大きく吠えた。
ウォンッ!!!!
「!!!」
「・・・寿々さん?・・・寿々さん着きましたよ?」
気が付くとタクシーはいいとよ出版のビルの前で停車していた。
「は!?・・・・やば、俺寝てたのか!」
まさか居眠りをするとは思っていなかったので急いでタクシーに料金を払うと領収書をもらい車から外に出た。
「寿々さん大丈夫ですか?うなされてましたけど」
「・・・・」
『大丈夫なわけないだろう・・・』と本音はそう思っていたものの、まともに返答する元気もなかったし、寝起きで頭が働かないのもありどうにも口から言葉が出てこなかった。
寿々は何も答えずしかめっ面でチラッとだけ史を見るとそのままビル中に入り社員用のエレベータ―前まで先にスタスタと歩いた。
無意識で上階行きを押そうとしてしまったが史が横から割り込んで先に下行きのボタンを押す。
地下1階。
アガルタの編集部に着くとそこにはもう誰もおらず、中は一部の明かりと非常灯だけ残してその他はほぼ真っ暗だった。
寿々は自分の机に鞄をドサッと置くとその勢いのまま倒れ込むように椅子に座り鞄の上に頭を伏せた。
「・・・・マジ、しんどい・・・何なんだこれ・・・」
言葉にする気はなかったが口から咄嗟に出てきてしまった。
すると入口から
「戻ってきたかい?」
と声がして二人が同時にそちらを見ると、そこには編集長の最上が立っていた。
「編集長?・・・まだいたんですか?」
寿々が最上の姿に驚くと。
「うん?僕の家すぐ近くだから。そろそろ二人が戻ってくるだろうなと思ってね」
「そうでしたか・・・わざわざすみませんでした」
「あ~いいのいいの。全然気にしなくても大丈夫だから」
全く何とも思っていないという最上の返答に寿々は一瞬涙が出そうにもなり、しかしながら『いや、これは便宜上ってやつでこれからネチネチと怒られるのでは・・』という不安もないまぜになって余計に緊張した。
「三枝君も史君も・・・大変だったね。とにかく君たちが直接何かしたわけではないのだから大丈夫、気にする事はないよ。でももしメンタル的に厳しそうだったら無理せず暫く休んでいいからね」
寿々の緊張は取り越し苦労だったようだ。
最初最上を見た時は威厳のないただの好々爺なのかと勝手にそう感じていたことを謝罪したかった。
最上は今まで仕えたどの上司よりも優しくそして頼りになる存在だったのだ。
「・・・ありがとうざいます」
寿々はその言葉に思わず泣きそうになったのをぐっと堪える。
「史君、君も大丈夫かい?」
「はい。僕は何ともありません。全部寿々さんが警察と話しをしてくれたので・・・」
「そうか。・・・三枝君、本当に悪かったね。そしてありがとう」
最上は寿々に深々と頭を下げた。
「ちょ・・・編集長、頭を上げてください。俺は当たり前のことをしただけで」
「いや。違うんだ」
「はい?ちがう・・・?」
三人はとりあえず応接ソファへと移動し、三人掛けの向き合った古い革製ソファに、史は一番奥。真ん中を開けて寿々。向かい合った寿々の前に最上が掛けた。
そこで最上はゆっくりと話し始める。
「史君をアガルタへ誘ったのは実は僕なんだ」
「・・そうなんですか?」
これはちょっと意外だった。
最上の言動や態度からして社の方針から外れて独自性のある行動をとるような人には見えなかったからだ。
いいとよ出版は大手出版社と違い、いくつかのジャーナル誌や専門書、あとはホビー系の雑誌や文芸書籍がメインの中規模な出版社だ。
スキャンダルをメインにするようなゴシップ雑誌を軸にした出版社とは違い、突飛な活動が日常的な部署が無いので基本どこの部署も経営方針に従順なのだ。
ゆえにいいとよで学生がバイトする部署など他には存在しない。
「正確に言えば最初は史君からどうしてもとお願いされたのだけれど。それでも結果的に僕が上に掛け合って無理にアルバイトの採用の許諾してもらいここへ来てもらったのは本当なんだ」
「・・・・」
寿々は横目でチラッと見ると史はウトウトと眠そうにしている。
「当然史君のお父さんとも話しはしている。なのでここに通ううちは僕が史君の保護者代わりとして面倒を見ることが約束になっているんだ。だからこうやって人事課に無理を言って欠員の補充を催促し、三枝君を異動させて史君の教育係としてお願いした僕にこそ今回の責任があるんだ」
寿々はそれで色々と不思議だったことの一部に納得がいった。
「・・・・編集長。それにしても何で俺だったんでしょうか??」
「ははは、それは本当にそうなんだよね。実はそこについては僕にもわからないんだ」
寿々は今回の人事異動について何か編集長と人事課で何某かの話し合いがあったから自分が選ばれたのでは?と本気で疑っていたのだがそうでは無いようだ。
それを聞いて寿々は余計頭を悩ました。
「・・・でも」
そう言うと最上は微笑みながらゆっくりと史の方を見た。
「僕は史君が呼んだんじゃないかな?って本気で思っているんだけれど。どうかな?」
「はい?史が・・・俺の人事異動を??」
寿々は最上の言っている事が理解出来なった。
『そんな、ただの高校生のバイトがどうやって人事に口を出せるって言うのだろうか?
それとも何か?もしかして史はここの幹部の息子とかなのか??』
この間寿々の頭はまたグルグルとフル回転をする。
眠そうにぼんやりとしてうっすら目を開けていた史が何も言わずバックパックから一冊の本を取り出した。
「これは・・・?」
寿々はその本に見覚えがあった。
〖アジア全体から見た神道宗教の思想と歴史〗
それは4年前大和の編集部でようやく仕事が慣れてきた頃に初めて任された書籍だ。
そしてそれを思い出し著者名を見る。
〖著者・秦総司〗
「秦・・・ってまさか!?史は秦先生の??」
それでようやく理解ができた。
おそらく史は4年前から寿々を知っていたのだろうと。
史は言葉を発する事もなくただゆっくりと深く頷いた。
「実はね、僕もこの書籍を知ってから秦君のお父さん、つまり秦総司先生に色々とお話しを聞きたくてそれで何度もお会いしていたんだよ。そんな中たまたま先生を訪ねて家に挨拶に行った折りに偶然史君と出会ってね。僕が名刺を置いてゆくと、即座に『僕は怪異や妖怪が好きで将来どうしてもアガルタの編集者になりたいので今から働かせて欲しい!』と遭ったその日に懇願されてしまったんだよ」
最上は懐かしそうに笑いながら話してくれた。
『そうだったのか・・・』
寿々は自分のやった仕事がきっかけで今アガルタで18歳の少年がアルバイトをしている事になんだか妙な因果を感じてしまった。
「寿々さんの存在を知っていたのは本当です。自宅にも来てましたよね。僕は直接はお会いしていませんでしたがその様子は何度も見かけていました。あの頃は父の仕事関係の人を気にする事などなかったので名前すら知りませんでしたが」
「・・・確かに、あの頃はとにかく必死で。一人でも多くの人にこの本を読んでもらいたくて。何度も先生のところを訪ねては色々とお互い試行錯誤をしていたな。懐かしいよ」
「・・・・それで色々と端折りますが。僕はその・・・父とは仲がめちゃくちゃ悪くてですね。・・それでこの本の発行のきっかけになった論文も含め、何と言いますかあの頃の僕は正直とても批判的だったんです。ですが、いざ出来上がったこの本を読んでとてもショックでした」
『・・・・ん?』
寿々は正直この時点で史の言っている事がちょっとわからなくなってきていた。
と言うか
『今この話し聞き続けても何か上手く飲み込めなそうだな?・・続きは明日じゃダメか?』
と本心ではそう思っていた。
「だってこの本は父が書いたどの本よりもとても良くできていましたし、何よりもちゃんと面白かったんですよ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
「だってあの人普段は引きこもって机の上でしか研究をしないし。論文書くにあたっても、とにかく資料を片っ端から寄せ集めてだただそこから抜き出したパッチワーク状の組み立てしか出来ないし!何より全然フィールドワークもしないし。しかも飛行機が苦手だから海外にも行けないくせにそれで『アジア全体から見た』とか言ってて・・・。真面目に何言ってんだ??コイツ?て本当に物凄く批判的な感情しかなかったんですよ!!・・・・」
突然の大声とオタク特有の早口に正直寿々だけだけでなく最上までも少し引いていた。
「・・・・・・で?」
「だから余計にムカつきました。この本が売れたのは父の論文の力ではなく、きっとこれは編集した人の功績なんだろうと」
ここまで熱く語って一人勝手に落ち込んでいる史を見て、寿々はすっかり面食らっていた。
ふと最上を見ると笑いを堪えているのか顔がニヤニヤとしている。
それは寿々も同じだった。
「くっくっく・・・・」
寿々は堪えきれず笑いが口から洩れてしまった。
「!!?」
一方史は本当はこの話題に触れたくなかったようで顔を真っ赤にして二人の反応にショックを受けているようだ。
「わかってますよ?正直自分でも子供じみた感情だなって!それでもムカついた事は事実なので・・・・」
そこまで言って言葉を詰まらせてしまった。
「ははははは、あ~・・・・笑い過ぎて涙出てきた」
「あまり笑わないでくださいよ・・・酷いですよ寿々さん、て言うか編集長まで!」
昨日今日と感情がコロコロと変わって面倒くさい奴だなぁと思っていたけれど。
まぁ蓋を開けてみればただの18歳の少年なのだな。と
寿々は何だか一気に史へのわだかまりが吹っ飛んでいってしまった。
「まぁ、これで史君の事は大体わかってもらえたと思うけれど。で、史君はどうやって三枝君を呼び寄せたんだい?」
『ん?・・・呼び寄せ・・た?』
先ほどまでの笑いから一転最上の言葉に寿々は引っかかった。
最上は優しく聞いているようだが、この質問だけはなぜか目が笑っていなかった。
史は気まずそうな顔をしながらも。
「・・・実はとある能力者を紹介してもらいまして。その人に頼んで寿々さんがここへ来るようにお願いしました」
と観念したように白状をした。
「とある能力者・・・って何?」
寿々は全く意味がわからなかった。
一方最上はこれで全て合点がいったという顔をし
「なるほどそういう事だったのか・・・・ま、わかったよ。史君」
それだけ言うとコートを持って立ち上がり。
「じゃ僕はこれで帰るね。記事の内容に関しても改めて僕と副編とチーフと一緒に打ち合わせするから、今日の事も含めこれからの事はその時に決めよう」
そう言ってコートを羽織った。
さっきの話についていけていないのはどうやら寿々だけのようだ。
「え?え?」
一人ついてゆけない寿々は帰ろうとする最上と史を交互に見てはどういう事?とばかりにキョロキョロとした。
「三枝君。君が見た黒い影についても詳しく教えてもらいたいけれど。・・・これに関しては君のメンタルの方が優先されるからね。もし打ち合わせで話せるようならばその時詳しく教えてね」
そしてくるりと出口へと向かう途中ピタっと立ち止まり、もう一度だけ振り返った。
先ほどまでの終始ニコニコと優しそうな表情だった最上とは一転しとても厳しい目で史を見つめ。
「史君。君のやった行為には必ず代償がつくからね。くれぐれも自分に身の回りにだけは十分気を付けなさい。そして今後その能力者とは絶対に関わらわらないように。いいね」
そう言うと一人スタスタと帰って行ってしまった。
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