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四章、ウェルテル

おまけ、立てこもりおしまい

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◆◆  アラカ 立て篭もり生活 10日目。

「……ごめんなさい」

 アラカはペコリ、と4名に対して頭を下げた。

 そう、アラカはついに10日目にして立て篭もりをやめたのだ。
 部屋に出て、チック症はもう起きていなかった。

 身体には欠損がなくなっても、身体中にアザや切り傷は何故か残り身体は依然として痛々しい。
 しかし彼女の精神面は確実に、少しだけ回復していた。

「お嬢様、おかりえりなさい」
「構わん。特に迷惑は受けてない」
「ウェルはあまり興味ないの、だけ、ど……」

 アリヤ、正道、ウェル、の三人は特に被害を受けていなかった。
 一人に全ての被害が行っていたため、である。

「アラカくん……疲れは、少しでも…ほんの少しでも、取れましたか?」

 主な被害者コードレスは普段通りの優しく、どこか疲れている声でアラカへ呼びかけた。

「はい」

「ならよかった。また疲れたら、ご自由に」

 ニコリ、といつものどこか窶れた笑みを浮かべるコードレスにアラカは頬を微かに赤らめて「ありがとう…ございます」と返した。


「……………すみ、ません」

 それでも、とアラカは謝罪を重ねる。
 それはアラカからしたら当然だった。

 コードレスはこの数日で火炎放射器、銃火器、グレネードを受けていた。

 ……アラカじゃなくても当然だった。

「うー、ん……ああ、じゃあアラカくん」

 それを前に困ったような笑顔を浮かべて、良い案が浮かんだのかコードレスは口角を上げて。

「?」

「膝に乗ってください」

「……!?」

 数分後。リビングにてコードレスの膝の上にちょこんと座るアラカの姿があった。

「……」
「…………まあ、あそこまでの被害を受けたのだ」

 アリヤ、正道の視線は何故か殺意に満ちていた。

 コードレスはアラカの頭を撫で撫でする。殺意が数割増した気がした。

「……帰り、たい…の…」

 尚、ウェルの着席位置はコードレスと、正道andアリヤの間だった。

「上司。そろそろ10日だから……帰ってきている頃、じゃない、ですか?」

 そんな中で、まず初めに声を出したのはアラカだった。
 コードレスの膝に座り、頭を撫でるのを許しているとみる限り、相当警戒を解いているようだった。

「そうだな。今朝、結果が確認できた」

「じゃあ……ついて行きます」

「………………………わかった」

 長考の末、正道はアラカの言葉を肯定した。

「ウェルと、アリヤは戻って、いて。
 ちょっと、野暮用が……ある」

 傍らに座るアリヤとウェルへと声をかける。
 そう、この先には二人はあまり連れていきたくないのだ。

「え、嫌です。どこ行くか知ってますし」
「……いや、だけ、ど……?」

 ——その後、問答の末にアラカが折れた。
 幾らか仲良くなったことと、アラカ立て篭もりによって溜まったキチゲがここにきて暴走したのだ。
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