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第三章

ランキング戦一週間前③

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俺達はしばらく森を歩いていたので休憩をとった。
かなり魔物を狩ったのでそろそろ帰ろうと話していると、遠くから何かの声が聞こえた。

「う…たす…」
「ん?何の音だ?」

俺は分からずにサリア先輩とジルに聞いた。

「え?音?聞こえなかったが?」
「僕も全然聞こえなかったよ?」

二人とも遠くの音に気付いていないらしい。
すると音はどんどん近付き、次にはこう聞こえた。

「うわああああああああ!!助けてくれえええええええ!!!」
「聞こえたぞ!誰かが助けを求める声だ!」
「僕も聞こえたよ!どうする?」
「…ゴメン俺聞こえなかった」
「え!?」

何故俺はこんな嘘を付くのか、それはこの声の主を知ってるからである。
そして今あったら自分が抑えられないのを知っているから、そういうしかなかった。
それにジルだけは気付いたようだ。

「…あー、なるほど、じゃあ先に進む?」
「え?た、助けないの?」
「よし、先に進みましょう」

俺とジルは進もうとする。それにサリア先輩が状況を理解出来ていない状態だった。
サリア先輩は「え!?助けないの!?」と言っているが俺には何も言えない。
そこにジルが説明しようとする。

「先輩、俺も助けたいんですけど、助けても多分その人死にます」
「ぎゃああああああああ!!来るな!来るな!」
「え?なんで?」
「誰でもいい!!!ウォーターベアがいるんだ!!助けてくれ!!」
「それはこの助けを求める人物の自業自得です。」

先輩はその人が誰だか分からずに俺達に着いていった。
俺達も出来るだけその声から遠くに行こうとした。

「誰か!!!助けてくれーーーーー!!助けたら褒美をだす!!」

その声が聞こえない所まで俺達は走りました。

「いや~、先程の方はどうなったのでしょうな~」
「ウォーターベアって可愛いよな」

ジルが俺の感想を聞きたそうにしているので答えた。
ウォーターベアは別名青熊、池などで潜れたり水遊びをしている事が多いのでその名前がついた。ちなみにCランク。
そんな魔物の相手を学生が出来るわけがない。

「でも、なんでウォーターベアがいるんだろう?」

サリア先輩が困惑した。そりゃそうだ、ここはFランクとEランクしかいないからな。
Cランクがいるのは学校側の不手際か、調査不足。
しかしそれはおそらく無いだろう。

「課外活動の前に池に近付かないようにって言ってましたよ?あれはウォーターベアの注意を促す言葉だったんですよ」

そう、課外活動の前に散々言っていたから聞いていない生徒はいないはず。
学校側はちゃんと注意した。
それでも近付くシード・カシエルが悪い。ちなみに、さっきの声はシード・カシエルのものなので捨てて来ました。

「おーい、兄さーんどこだーい」

何やら声が聞こえる。この声はレイン・カシエルか奴はまだどうするか決めていない。何を?それは命を俺も差し出すかだ。

そしてちょうどばったり会う。どうやら向こうはシード・カシエルとはぐれたらしい。なので今はシャル・カシエルとレイン・カシエルしかいない。

「あ、レ、レイン副会長だ…ほら、挨拶挨拶!」

サリア先輩は少しレイン・カシエルに苦手意識があるのだろうか…少し挙動不審になっている。

俺達は渋々この副会長さんに挨拶してやった。すると副会長さんはとても驚いていた。
まぁこの前殺されかけた相手に頭下げられるんだもん、そりゃあ驚くよ。

「あ、か、顔を上げてくれ、それより兄さ……生徒会長を見なかったか?」

俺はさっき捨ててきた事は言わずに知らないと答えた。
ここで死んでくれた方が俺的には楽だからな。

「そうか・・・実は今兄さんはウォーターベアに襲われてて、はぐれてしまったんだ」
「それよりお兄様は森の入り口に辿り着けるかしら?そうしないと死んでしまいます…」

おそらく森の入り口に着くことはない。理由は森の奥地の方に逃げていったからだ。

「そうだな、死ぬことを祈ろう」
「ちょっと!クロ!なんて事言うの!」

俺の言葉に怒る先輩、まぁ自分の家が未来の話だし当たり前か…

「ほら!レイン副会長も叱ってください!」
「う、ク、クロくん、そういうのは…」
「レイン副会長、シード・カシエルの場所に転移してその場で死の森に転移させていいですか?」

レイン副会長は怒らずに黙り込む…何故なら俺は単純に同じ事をしようとしてるだけだから何も返せないのだ。
カシエル家が俺にした事をな…

すると、レイン副会長は突然跪き、頼み始めた。

「すまない…頼むクロ。兄さんを救ってやってくれ…」
「俺がシードの場所を知らないとは思わないのか?」
「いや、知ってるはずだ…転移ってのはその人の居場所が分からないと出来ないものだ、だからお前は知っている。だから…頼む…」

チッ、さっきの言い方は失敗したか…さて、どうするか…

「…」
「お兄様!なんでこんな奴にそこまでして頼むんですか!」
「…シードがもし、救った恩を仇で返した場合は…わかるか?」

俺は少々殺気を出しながら条件をだした。もちろん救った恩を仇で返した場合はレイン・カシエルにも理解できるだろう。

「それでいい…だから兄さんを…」
「サファイヤ先輩」

俺はサリア先輩に声をかけるが、ボケーッとしていて何故レイン・カシエルが謝るのか理解ができていない様子だった。

「ジル、先輩が意識を取り戻したらすぐに帰るって言っといてくれ」
「オーケー、行ってこい」
「転移―――



―――ふぅ、着いた」
「もう、ダメか…さようなら…」

その時はちょうどウォーターベアが腕を振り下ろそうとしてる所だった、観察しておきたかったが約束したので助ける事にした。

俺は剣に魔力を少しだけ注ぎ、ウォーターベアの首に向かって魔力の斬撃を放った。
ウォーターベアの首は見事に切断された。俺は首から下の胴体を剣で探り水の精霊石取り出した、するとウォーターベアは血まみれでその場に倒れた。

「よし、これなら売れるか」

シードを見ると気絶している。そのうえ漏らしてる…汚い

「…汚い…まぁいいか…転移」

そして、課外活動は終了した…

漏らした馬鹿の事は俺だけの秘密にしよう(笑)
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