フィーネ・デル・モンド! ― 遥かな未来、終末の世界で失われた美味を求めて冒険を満喫していた少女が、なぜか魔王と戦い、そして……

Evelyn

文字の大きさ
71 / 108
第3部 カレーのお釈迦様

第12話 紛争勃発?(と、BLTサンドイッチ) ☆☆

しおりを挟む


 翌朝、私が朝食を摂りに行こうと部屋を出た時、ゼブルさんが廊下を息せき切って駆けて来た。
 何だろう、この人がこんなに慌てるなんて?
 あの飛蝗(トビバッタです! イナゴではありません)の時でさえ妙に落ち着いてたのに。

「アスラ様。大事出来しゅったいです!」

(ほう。ゼブルが慌てるとは珍しいな)

 そうだね。でも、「大事」はわかるけど、シュッタイって何だ?
 ああ、そう言えば夢でソフィアさんが「シュクダイ作者註:宿題」とか言ってたけど、あれと似てるなあ。あれは何だったんだっけ? 食べ物の名前だったっけ。これも…… じゃないよねえ。だって表情が切迫してるもの。

 とか、ぼんやり思ってると、ゼブルさんはそれには構わず

「とにかく急いで執務室に参りましょう。寸刻も惜しいので、アスラ様の転移で!」

 ということで、ゼブルさんも一緒に、私の瞬間転移で魔王の執務室にひとっ跳び。
 机の上には地図が広げてあって、その1点を指差してゼブルさんが言う。

「事件が起こったのはこの場所です。アスラ様は、ここがどういう所か御存じの筈」

 ああ、シュッタイって、つまり何かが「起こる」とか「起こった」っていうことなのね。だったら、わざわざ難しい言い回しにしないで、簡単にそう言えばいいのに、全くこの人は。

(おい、……)

 はいはい。あの場所だね。
 で、「御存じの筈」ってことは、私たちが以前ここの遺跡を攻略したのも、この人にはバレてるって訳だ。
 きっとまた使い魔の報告だろうけど、少しは 前期乙女ロリータ の個人情報を尊重して欲しいなあ。今更言っても遅いけどさ。あ~あ。

 それにしても、何でこんなに食事どき近くに限って事件が起こるかなあ。
 今日もまた朝食抜きかよ。
 それどころか、この分じゃあ昼食もどうかなあ……

「のんびり構えている場合ではございません! もしもガイア様がこの場所で大規模な爆裂魔法などを使われたら、一体どうなります?」

 え? それはヤバいぞ!

「大事出来と私より先に聞かれて、飛翔魔法で急行されたのです。詳しい事情を説明したり供の者を揃えている暇はないのです。申し訳ありませんが、アスラ様お一人でこの地に向かって頂きたい! 今ならまだ間に合う筈。事態の詳細は先方で」

 と、ここでドアにノックの音がして、ファフニール君(うん,私も人の名前を覚えられるようになってきたぞ!)が紙袋に入れた何かを持ってきた。これはもしかして

「朝食代わりのサンドイッチです。行先でお食べ下さい」

 やったー! 気が利くなあ。
 これで私は気分一転、元気一杯にゼブルさんに言った。

「わかりました!」
「正確な場所はお分かりでしょうから、瞬間転移が可能ですな」
「大丈夫です。行って来ま~す」

 そう答えると、ゼブルさんは、やっと力が抜けたかのように執務室のソファーに座り込んだ。

「ふぅ――――」

 という、まだ少し不安そうな溜息を聞きながら、私は現地へ跳ぶ。


 その赤茶けた荒野には多くの兵士さんが集まっていて、最前線に大きなテントが張ってある。良かった。間に合ったみたいだ。
 でも、魔族軍だけじゃなくて、エルフやドワーフの完全武装の兵士も大勢いるぞ。
 しかも、その2隊は何だか睨み合ってるみたいな険悪な雰囲気。

(ここは、魔族とエルフ、そしてドワーフ3国の国境が接している場所なのだ)

 え、そうなの?

(ああ。必要が無かったので、以前来た時は言わなかったがな。言わば、3つの勢力の均衡地帯だ)

 ふーん。魔王領の内情も、けっこう複雑なんだねえ。

(しかも、魔族はともかく、エルフとドワーフは昔から仲が悪い。その勢力の接点に、あのようながあるのだからな。おそらくは、その遺跡に何かが起こったのだろうよ)

 もちろん、この時、私は既に袋を開いてサンドイッチを食べていた。
 この際、歩きながら食べるもぐもぐもぐ行儀の悪さは許してもらおう。
 薄切りのベーコンとレタス、それにトマトのサンドイッチ。古代文化で言うBLTだ。
 いつも通り、新鮮なレタスのシャキシャキ感と、トマトの皮と果肉を噛んで果汁がはじける瞬間の甘酸っぱい美味しさは、 あっはっは! やっぱり、思わず笑えてくるぐらいの絶品だ。
 ベーコンは昨日のカルボナーラに使ったのと同じ物だろう。それをサンドイッチにはちょうどいい、カリカリと柔らかめの中間に焼いてある。
 パンはトウモロコシを入れて焼いたコーン・ブレッドのトーストだ。うん、コーンのほのかな甘味と、ぷっちんぷつぷつの食感がいいねえ。
 ソースはケチャップとマヨネーズを混ぜたオーロラソース。最後に軽く塩と粗挽きの黒胡椒を振ってある。
 うん、ファフニール君、今日も絶好調。

 ゆっくりと味わいながら兵士さんたちの間を歩いてたら、あらら、もうテントの前だ!  残念。
 急いで残りを食べ終えて、と飲み込んだ。うっ、ちょっとむせそう。
 中に入ると3つの机と椅子が据えてあり、その三角形の一番奥の頂点にガイアさんが座っている。
 右の机には顎までの長い髭を生やした、いかにも頑丈そうな鎧を着た、でも小柄なドワーフらしき男性。ん? チャウチャウ犬に似てるぞ。
 左には見るからにエルフっぽい、色の真っ白な尖り耳の女の子。こちらも軽武装ではあるが鎧を着けている。耳だけじゃなくて、鼻も「つん」と尖っって、目は驚くほど大きくて、そうだ(!)、人間の子供サイズの、ちょっとぽっちゃりめのチワワみたい。

(おい……)

 それぞれが種族のお偉方、代表なのか?
 2人ともこちらをちらっと見ただけで、それどころではない、いかにも不機嫌そうな表情だ。
 ガイアさんだけが私を見て表情をゆる

「おお、来たか! さすがに早かったな」

 なんて、場違いな明るい声で言う。
 それを聞いて、チャウチャウ犬、ではない、たぶんドワーフ族の偉い人が尋ねた。

「ガイア様、この娘御は?」
「おお、紹介しよう。この娘こそが妾が新たに選んだ魔王、アスラじゃ」

 すると

「何ぃ!」(チャウチャウ・談)
「何じゃと!」(チワワ・談)

 あーあ、いきなり二人揃って立ち上がって大声で。
 なーんか、また面倒臭いことになりそう。

 今度は ぽっちゃりチワワエルフの責任者かな~ が勢い込んで言う。

「私はまだ新たな魔王など認めておらぬ! しかもこんな年端もいかぬヒト族の少女など、もってのほかじゃ」

 いやいやいや、ヒト族はともかく、年端もいかぬ少女はそっちでしょう。
 私の方がずっと背も高いし、顔だってクールビューティーで大人っぽいじゃん実は若さの割に、そうなんざーます。おほほ

 しかも、ガキンちょの癖に大人ぶって「私」とか。生意気だなあ。
 子供はもっと可愛らしく、自分のことは名前で呼んで、例えば、「アスラね~♡うう、実は自分でも気色悪いかも…」とか言おうよ。あ、でも私も一人称は「私」か……

(ふぅ。とにかく、エルフの年齢を見かけで判断せぬ方が良いぞ。長命だからな。おそらくお前の何倍も長く生きている筈だ)

 え~、そうかなあ。怪しいなあ。
 と、ここでガイアさんが

「認めるか認めぬかなど、どうでも良い。妾が選んだのだからな。それだけで既に魔王じゃ! それに、魔王云々より、緊急の問題は眼前の遺跡の件ではないか」

 と、きっぱりと言う。そうか、そっちが問題だったよね。
 で、私はここで初めて口を開いた。

「遺跡ですけど、
「何じゃと!」(旧魔王兼現顧問・談)
「!」(チャウチャウ氏・談(?))
「!」(チワワ嬢・談(?))
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

勇者召喚の余り物ですが、メイド型アンドロイド軍団で冒険者始めます

水江タカシ
ファンタジー
28歳独身、一般事務の会社員である俺は、勇者召喚に巻き込まれて異世界へと転移した。 勇者、聖女、剣聖―― 華やかな肩書きを持つ者たちがもてはやされる中、俺に与えられたのは聞いたこともないスキルだった。 【戦術構築サポートAI】 【アンドロイド工廠】 【兵器保管庫】 【兵站生成モジュール】 【拠点構築システム】 【個体強化カスタマイズ】 王は落胆し、貴族は嘲笑い、俺は“役立たず”として王都から追放される。 だが―― この世界には存在しないはずの“機械兵器”を、俺は召喚できた。 最初に召喚したのは、クールな軍人タイプのメイド型戦闘アンドロイド。 識別番号で呼ばれる彼女に、俺は名前を与えた。 「今日からお前はレイナだ」 これは、勇者ではない男が、 メイド型アンドロイド軍団と共に冒険者として成り上がっていく物語。 屋敷を手に入れ、土地を拠点化し、戦力を増強しながら、 趣味全開で異世界を生きていく。 魔王とはいずれ戦うことになるだろう。 だが今は―― まずは冒険者登録からだ。

追放料理人とJKの異世界グルメ無双珍道中〜ネットスーパーは最強です〜

音無響一
ファンタジー
わーい、異世界来ちゃった! スキルスキル〜何かな何かな〜 ネットスーパー……? これチートでしょ!? 当たりだよね!? なになに…… 注文できるのは、食材と調味料だけ? 完成品は? カップ麺は? え、私料理できないんだけど。 ──詰みじゃん。 と思ったら、追放された料理人に拾われました。 素材しか買えない転移JK 追放された料理人 完成品ゼロ 便利アイテムなし あるのは、調味料。 焼くだけなのに泣く。 塩で革命。 ソースで敗北。 そしてなぜかペンギンもいる。 今日も異世界で、 調味料無双しちゃいます!

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

処理中です...