桃猫秌式短編集

小川文芸同好会

文字の大きさ
上 下
1 / 5

明るい未来

しおりを挟む
 俺は今、人生の真っ暗闇の中にいる。そんな俺は、占いに縋ることにした。

 息苦しさを感じるほど閉め切った室で、占い師の老婆が囁く。
「あんたの未来はねぇ...明るいねぇ」
「どういう事だ!?」
 俺は意気ごんで問い糺す。老婆は俺の顔をじっと見ながら、少し微笑んで言う。
「どういう事も何も、言った通りさね。あんたには、明るい未来が待ってる」
 それを聞いた俺は、天を仰いだ。今まで辛い事ばかりだったが、ようやく希望が訪れるのか!それを聞くと、俺は嬉しくてたまらなかった。

 彼は幼少期に病気により失明。三十代に生きる希望を失いかけ、人生を辞める事すらも考えた。しかし突如希望を見出し、成功率数%の手術と辛いリハビリに耐え、見事視力を回復させた。今はなんと大会社の社長となっている。
 彼は昔出会った占い師の言葉を思い出す。
「ばあさん...あんたの言うことは当たったよ」
 彼の目は、数十年ぶりに「闇」ではなく「光」を映していた。
しおりを挟む

処理中です...