異世界球技無双~最強すぎる必殺シュートで伝説のドラゴンや魔王も全てふっ飛ばす!~

空地大乃

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第1章 球技とボール編

第3話 さぁ特訓を始めよう

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 ボールとの出会いから早いもので3ヶ月が過ぎようとしていた。キングは山ごもりを続けており今日もまたボールを使いトレーニングに明け暮れている。

――ドスドスドスドスドス。
 
 スライムは前とは違う形に変化していた。以前の白と黒の入り混じった球ではなく、茶色く大きめの球。

 それを地面でバウンドさせながら進んでいく。キングが今練習していたのは籠球バスケットボールという球技であった。

 籠球バスケットボールを用いたこれは、蹴球サッカーとことなり手で球を操るのが特徴である。

 しかも手にした球はキープ時以外は必ず地面に打ち弾ませ手でバウンドさせ続けないといけないのである。尤もだからこそ生まれる技もあるのだが――

 キングは変化したボールをバウンドさせながら木々の間を縫うように進んでいく。手でボールを跳ねさせながら全速力でだ。そしてある程度進んだところで立ち止まり、構えてボールを投げた。

 遠くに見える断崖の壁に命中し跳ね返って戻ってきたボールをキャッチ、そんな動きを午前中で繰り返す。

 そして午後になってからは今度はボールを手のひらに収まる程度の球に変化させた。

 その上で狙いをつけボールを投げる。投げたボールは、ちょうどボールが変化した球ぴったりにくり抜かれた木の穴目掛け直進。

 そのまま何十本もの穴を通り抜け、一番奥の木に刻まれた的に命中し跳ね返ってきた。勿論跳ね返ってきたとも同じ穴を通って戻ってくる。

 ちなみに、この時ボールは特に自分では何もしていない。球に変化した時は完全に球そのものになり、挙動にしてもそのままだからだ。最初はキングに気を遣って自分の意志である程度動いたりしていたがそれもキングにバレて、それでは意味がないからと注意された。

 その際は落ち込んだボールだが、キングは自分が成長するために必要なことであり、ボールを友だちと思っているからと説得した結果、より絆は深まり今に至るわけである。

「ふぅ、これでまた一つ球技について理解が深まった。これもボールの協力あってこそだな。ありがとうボール」
「キュ~♪」

 キングがボールの頭を撫でると嬉しそうにプルプルと震えた。キングに可愛がられボールも上機嫌である。

 一頻り撫で回した後、キングは紙を一枚取り出した。それには魔法陣が描かれており、手に持ったまま意識を集中させ呪文を唱えると、魔法陣の中心に数字が浮かび上がってきたわけだが。

「お、これは――」

 キングが使ったのは経験紙という特殊な魔法の紙であった。これを手に持ち呪文を唱えながら念じることで己のレベルがわかる仕組みである。

 そしてここに来てキングは一つの変化に気がつく。

「レベルが……21に上がっている――」

 そう、レベルが上っていた。超早熟という成長特性を持つキングは25歳の頃にはレベル50まで達成していたが、そこから一気に下り坂となり32歳になったころにはレべル20まで下がっていた。

 超早熟はある年齢まで成長が異様に早い代わりに、ピークを過ぎると逆にどんどんレベルが下がっていくというリスクがあった筈なのだが、しかし上がっていたのだ。

「驚いたな。確かに最近下がっていないなと思ったが……」

 特に経験紙で調べたわけではなかったが、レベルは一つでも下がると全身が気だるくなり動きも鈍る。故に体感的に下がった時というものはわかるものなのである。

 しかし、確かにここ最近はそういった感覚がなく、むしろ五感が優れ動きも軽やかになった気がしていたものだ。

「キュ~♪」
「ふむ、確かにこの異世界の球技を始めてから調子がいいし、肉体的にも成長している気がする」

 なんとなくだがボールがこれまでの特訓を評価してくれた気がした。それが嬉しくてついついボールを撫で回してしまうが、それをボールも喜んだ。

 そしてキングは改めて異世界の本を手に取り、感慨深い目で表紙を眺めた。最初はただこの本の内容に感化されただけで、根拠なんてものはなく始めたことだが、キングの直感は間違っていなかったようである。

「よし、この調子で訓練を続けよう。一緒に付き合ってくれるかボール?」
「キュ~♪」

 肩の上でキングと一緒に本を眺めていたボールは頬に擦り寄りながら鳴いてくれた。任せてと言ってくれているようだった。

 改めてボールの頭を撫でる。ひんやりとしていて気持ちが良い。山ごもりは当初一人でやる予定だったが思いがけない仲間、いや友だちが増えた。

 だが、孤独ではないというものもいいものだなとキングの心境にも変化があった。何よりボールはキングがこれから球技を極めていく上で欠かせない存在でもある。

「よし、午後からも頑張るか!」
「キュッ!」

 こうしてキングはボールと共に来る日も来る日もトレーニングに明け暮れた。季節はめぐり、夏が過ぎ秋が過ぎそして――

「おぉ、積もったな~」
「キュッキュッキュ~」

 冬到来。この辺りは四季もはっきりしており、冬になれば雪も降る。山はすっかり辺り一面銀世界の様相を醸し出していた。

 冬というのは他の季節と比べると少々特殊だ。特に雪が降ったり気温が大きく低下する地方ではそれが顕著であり例えば一部のモンスターは冬には活動を止め冬眠したりする。一方で冬になってから活動が活発化するモンスターもいる。

 人間にとっても冬はなかなかに厄介な季節だ。防寒具を身に着けていないと外で活動するのも厳しいし、積もる雪に足を取られる。地面が凍っていれば足を滑らせることもあり、戦闘中であれば思わぬ隙を作りかねない。

 なので冒険者の中には秋までにしっかり稼ぎ蓄えを用意した上で冬には仕事をしないというのもいるほどだ。このあたりは冬眠する生物に通ずるものがある。

 だが、キングに関して言えばそんなことは関係なかった。いや、寧ろ冬こそ体を鍛える絶好のチャンスと考えている節もある。

 脛まで埋もれるほど積もった雪山をキングはボールを蹴りながら走っていた。
 これは蹴球サッカーの基本走法でもある。

 雪が降り積もった山でのトレーニングは足腰への負担が増す分より過酷となる。しかし、だからこそ肉体的にも技術的にもそして精神面でもさらなる強化が望めるのだ。

 キングのレベルは今もなお上がり続けていた。以前経験紙で調べた時には21にあがっていたものだが、今は25まであがっていた。たかが4レベルと中には思うものもいるかもしれないがされど4レベルでもあり、着実に力は上がってきているとキングは手応えを感じていた。

 尤も超早熟であることを考えればレベルが上って違いを感じるのは何らおかしいことでもないが。

「今日はこの山をまず軽く数周流そう」
「キュ~!」

 そんなことを口にしながらランニングを続けるキングとボールである。なお山と言っているが実際の名称はボランチ山脈であり最大標高4141m、全長は3412kmに及ぶ。軽く流せる規模ではないが、キングは涼しい顔でそれをこなしていく。

 途中、食料となるユキノトウなども採取した。ユキノトウはふわふわした綿のような見た目が特徴でとても冷たいが独特の甘みがある。

 食料となるモンスターや獣も狩っていく。そして解体した食材はボールが取り込んでいった。ボールもキングとトレーニングを繰り返す内に球に変化する能力以外に、取り込んだ物を収納し保存しておく能力も身についたのだ。

 これにより袋などなくてもボールに任しておけば収納出来るようになった。ちなみに生きているものは収納できないようだ。

 こうして半日でランニングを終えたキングであったが、帰り道、魔物に襲われている馬車を見つけた。

 正直、こんな雪の積もった冬に馬車で来るような山ではない。冬は確かにモンスターや獣の数は減るがその分冬でも活動しているモンスターは手強いのである。

「普通なら迂回ルートで進むと思うのだが……」
「キュ~?」

 ボールがどうするの? と体を傾げるようにしている。見るに一応護衛は雇っていたようだが相手が悪い。

 対峙していた護衛は全身が真っ白で着ている外套からは氷柱が垂れ下がっているほどだ。まだ命は無事なようだが膝をついてガクガクと震えておりとても戦える状態ではない。

 身動きのとれなくなった護衛の正面には白い毛で覆われた巨大な熊の姿があった。

 スノーグリズリーだ。レベル35のモンスターで圧倒的なパワーとタフさを兼ね添えている。その上このモンスターは口から冷たい息吹を吐き出してくる。雪混じりの息吹は相手の体温をあっという間に奪ってしまい動きを封じてしまう。

 そして抵抗できなくなった獲物を喰らう。そんなモンスターだ。

「放ってはおけないな。助けよう」
「キュ~」

 ボールが白と黒の混ざった蹴球球サッカーボールに変化した。既にモンスターは大口を開け獲物を食べようとしている。こうなると直接、相手を狙うほかない。

 キングは頭を切り替え、狙いを定めた。そしてボールを思いっきり蹴弾シュートする――
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