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第1章 球技とボール編
第7話 ゴンダーラの加工の為、工房へ
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キングは素材を手に入れてすぐ、とある山へ向かった。この山は以前依頼の関係で訪れたことがあるのだが、その時にこの山に工房を持つ鍛冶師と知り合ったのだ。
今日やってきたのは勿論その鍛冶師に会うためだった。早速工房に顔をだすキング。奥の作業場からカキーン、カキーンと鉄を打ついい音が聞こえてきた。まるでスポ根漫画で敵の攻撃をバットという特殊なメイスで打ってるかのようだなどとも考えた。勿論バットとメイスでは用途が全くことなるが。
「スミスいるかい?」
「うん? その声は」
声をかけると鉄を打つ音がピタリと途切れ、のっしのっしという足音を響かせドワーフのスミスが顔を見せた。
「おお! やっぱキングじゃねぇか。この野郎、冒険者を引退したと聞いて心配してたんだぞ!」
「あぁ、知ってたのか耳が早いな」
ムスッとしているような顔でスミスが近づいてきてキングの胸のあたりをゴツンっと叩いた。もっともドワーフという種族は基本普段からこんな顔で接している。それをよく知っているキングは特に気にはしない。
キングは改めてスミスを見やる。スミスは背が小さくキングの半分程度しか無い為どうしても見下ろす形となってしまう。しかし、体中に纏われる筋肉は非常に発達しておりずんぐりむっくりという表現がピッタリとハマる体型をしていた。
これはドワーフ特有の体型である。そう、キングの知りあいである鍛冶師のスミスはドワーフの男であった。
ドワーフは三度の飯より鍛冶作業が好きと言われるほどであり、一日ハンマーを持たないだけで震えが出るとさえされているほどだ。だからこそ、鉱山の多い場所に工房を持つことが多い。
そんなドワーフだからこそ、今回の依頼にはぴったりだとキングは考えた。
「しかし、引退したと聞いて軟弱になってないかと心配してたが、なんだか前より逞しくなったんじゃねぇか?」
豊富に蓄えられた灰色の髭を擦りながらスミスが言った。ドワーフは髭を伸ばしているものも多い。
「そうかい? 自分ではそこまで変わったとは思ってないんだがな」
「ふむ、それで、今は何をして暮らしてるんだ? 畑でも耕しているのか?」
「はは、最初はそれもいいかなと思ったんだが、思うところがあって今は山に篭ってるんだ」
「山にだって? おいおい隠居するような年じゃあるまいし」
そう言ってスミスが肩をすくめる。キングはははっと笑ってごまかすが。
「キュ~キュ~」
「うん? そういえばさっきから気になってたがそのスライムは一体どうしたんだ?」
「あぁ、わけあって仲良くなってな。ボールという名前で俺の友だちなんだ」
「は? と、友だち? お前、どうしちまったんだ……本当に大丈夫か?」
何故か心配されてしまった。スライムが友だちなのはそんなにおかしいかな? と思いつつも、キングは本題に入ろうと話を変える。
「実はスミスに作成して欲しい物があってきたんだがいいかな?」
「作成? 冒険者を引退したってことは、装備じゃないんだよな?」
「まぁ装備とは違うんだが、素材にはこれを使って欲しい。ボール頼む」
「キュー!」
そしてボールが床の上にゴンダーラ石を出していく。流石に全部は多いので見てもらう分だけだが。
「うん? お、おいおいおいおい! こいつはゴンダーラ石じゃねぇか! どうしたんだよこいつは!」
「あぁ、ちょっとゴンダーラを狩る機会があってな」
「は? ゴンダーラを……狩った?」
スミスは目を丸くさせてキングとゴンダーラ石を交互に見る。
「……お前、冒険者を引退したんだよな?」
「ま、まぁそうなんだが思うところがあって山に篭って修行は続けてたんだ」
「修行って……それにしたってお前、こんな大物よく倒せたな……まさか一人でやったのか?」
「いや、このボールも一緒だ」
「キュ~!」
「は? こ、このスライムがか? というかそもそもこんなの体の中に入れて置けるってスライムにそんな能力があったか?」
「ボールには出来るんだ。変身も出来たりするから確かにちょっと珍しい種類かもしれないが」
「それちょっと珍しいで済む話じゃなさそうだが……」
スミスがマジマジとボールを見てると、キュ~? とボールが首を傾げるような仕草を見せる。
「加工は出来そうかな?」
「うん? あ、あぁそりゃ頼まれればどんなものでも加工して作ってやりたいが、ただすまん。実は今ちょっとバタついていてな、直ぐにでも武器の作成を再開させないといけないんだが……」
そう語りつつ、沈んだ顔を見せるスミスであり、何かあったのかもしれないとキングは察する。
「武器の注文でも? 納期が厳しいのかい?」
「いや、注文じゃねぇんだが実は鉱山の一つがダンジョン化しちまったんだ。しかもわりと重要な鉱山でな」
「ダンジョン化か。前もあったな」
「あぁ、お前とはその時に出会ったんだったな」
懐かしそうにスミスが目を細める。スミスとは7年ほど前にダンジョン化した鉱山の解放という依頼で出会っていた。まだキングのレベルも高かったころである。
「しかし、またダンジョン化か」
「まぁ、鉱山の宿命みたいなところもあるけどな」
ダンジョンは世界に突如生み出される存在で迷宮としても知られる。これまでどうしてダンジョンが出来るのか不明であり、今でも未知の部分も多いが、それでも学者の研究によりある程度発生条件が判明されている。
ダンジョンが発生する条件で一番大きいのは魔素溜まりが出来ていることである。魔素とは魔力に繋がる元素の一つだ。魔法はこの魔素を魔力に変換して行使する。
魔素は目に見えないが、ある程度高位の魔法使いなら魔素を感じることが出来る。その魔素はある程度密閉された空間に溜まりやすい。
それ故かダンジョンは山に出来た洞窟などに発生しやすいとされ、その結果鉱山もダンジョン化の影響を受けやすいのである。
尤も最近ではそれを防ぐために魔素溜まりが出来ない仕掛け(魔素を外に逃がす排気口など)を施すことも多いが、それでも発生してしまうことはあり――
「一度ダンジョン化してから魔素溜まりが出来ないよう対策は施してきたつもりだったんだが、鉄が掘れなくなって廃鉱になったとこがどうやらダンジョン化したようで、そこから隣の鉱山に侵食しちまったんだ。
ダンジョン侵食はダンジョン発生後、放置することでその規模が拡大する現象だ。古くには山がまるまる一つダンジョン化し大量のモンスターが溢れ出たという記録も残されている。
「ダンジョン化も悪いことばかりじゃないんだがな……しかしモンスターが出ると作業がままならねぇし」
ダンジョンは放置すると確かに危険な存在だ。ダンジョンでは地上よりモンスターが生まれやすく増殖するとダンジョンから出てきて外の生物を脅かす。勿論それには人間も含まれている。
ただ、スミスの言うように良い面もある。先ずダンジョン化すると周囲の資源に変化が起きやすい。特に鉱山の場合、採掘できる鉱石に大きな変化が起き、銀であれば魔素を多く含んだミスリル、鉄も同じように魔素を含んだルフタンという金属に変化することがある。
これらは当然通常の金属より高価で、加工すれば性能の良い装備や魔法道具の材料にもなる。
それにダンジョンでは定期的に宝箱が現れたりする。中にはお宝が詰まっているのでそれ狙いの冒険者も多い。
こういった理由があるのでダンジョンが生まれても定期的な間引きに留め残し続けることも少なくなく、また自らダンジョンを生み出そうと考える領主などもいるほどだ。
とは言え、鉱山のダンジョン化はデメリットも多いのが事実であり。
「厄介なのはブッカブが大量に湧いていることだ。あれのおかげで鉱山の鉱石は食われるし、駆除に他の鍛冶師が動いてたりするんだが武器や防具はすぐ食われちまう」
ブッカブはゴブリンにたモンスターである。だが腹が出ていて体型はより丸っこい。推定レベルは15であり、レベルだけ見ればD級の冒険者でも相手できるほどだが実際はレベル以上に厄介な相手である。
その理由は今スミスが語ったことに現れていると言っていいだろう。ブッカブは鉱石や金属を食べるのだ。つまり金属の装備で挑んでも食べられ台無しになってしまう。これが厄介なのである。
「鍛冶師ということは、他のドワーフが動いているのか。確かにドワーフは腕っぷしが強いが、この手の案件は冒険者に頼んだほうが早いのでは?」
「そりゃ頼めたらとっくに頼んでるさ。だが今は冬だ時期が悪い」
「あぁ、そうか――」
ドワーフの鉱山は山の中に存在する。このあたりはそこまで雪は多くないのだが、途中の道には雪が多く積もっていた。それにそもそも町からの距離はかなり離れている。
雪の多い冬では町まで依頼を出しに行くのも大変であり、その上、必ずしも依頼を請けてくれる冒険者がいるとは言い切れない。
「だからって春になるのを待ってたらブッカブのせいで鉱山が枯れちまうからな。だからなんとかしようとしてんだが、俺らは揃いも揃って戦士ばっかだから中々上手く行かないのさ」
確かにブッカブと戦士は相性が悪い。金属を食べられては戦う術がないからだ。スミスの話では怪我をした者はいるそうだが幸い死人は出ていない。
ただこれ以上増えると対処のしようがなくなるという。
「ふむ……わかった。スミスには世話になっているし今回の件もある。俺も鉱山の解放を手伝うとしよう」
「何? お前がか? だがお前冒険者稼業からは引退したんだろう?」
「まぁ今はそうなんだが、修行は続けてきたつもりだ。戦う力はまだ残っているさ」
「ふむ……」
スミスは顎髭を擦り、そしてゴンダーラ石を見やる。
「……これ、間違いなくお前が倒したんだな?」
「あぁ、ただ、一つだけ言っておくと、そのゴンダーラは他の冒険者の手で既に弱っていた可能性が高いんだ。そうでないと俺とボールだけでは厳しかったと思うし、一撃では倒せないだろう?」
「は? 一撃だって? お前、こいつを一撃で倒したのか!」
「あ、あぁ。ボールと協力してではあるが……勿論だからこそ、既に他の誰かの手でダメージが溜まっていたと思うんだが」
キングの言葉を聞き、スミスは唸り声を上げる。スミスは考えていた。確かにその可能性がないとは言えないが、だからといって一撃で倒せるものかと。
それにゴンダーラほどの硬いモンスターがここまで見事に砕けていること自体が異常でもある。倒せたにしても通常はその後の処理に困るものだ。
それらを踏まえた上で――
「わかった。俺らも戦える手は少しでも欲しいと思っていたところだ。ダンジョン攻略の手助けお願いするぜ」
今日やってきたのは勿論その鍛冶師に会うためだった。早速工房に顔をだすキング。奥の作業場からカキーン、カキーンと鉄を打ついい音が聞こえてきた。まるでスポ根漫画で敵の攻撃をバットという特殊なメイスで打ってるかのようだなどとも考えた。勿論バットとメイスでは用途が全くことなるが。
「スミスいるかい?」
「うん? その声は」
声をかけると鉄を打つ音がピタリと途切れ、のっしのっしという足音を響かせドワーフのスミスが顔を見せた。
「おお! やっぱキングじゃねぇか。この野郎、冒険者を引退したと聞いて心配してたんだぞ!」
「あぁ、知ってたのか耳が早いな」
ムスッとしているような顔でスミスが近づいてきてキングの胸のあたりをゴツンっと叩いた。もっともドワーフという種族は基本普段からこんな顔で接している。それをよく知っているキングは特に気にはしない。
キングは改めてスミスを見やる。スミスは背が小さくキングの半分程度しか無い為どうしても見下ろす形となってしまう。しかし、体中に纏われる筋肉は非常に発達しておりずんぐりむっくりという表現がピッタリとハマる体型をしていた。
これはドワーフ特有の体型である。そう、キングの知りあいである鍛冶師のスミスはドワーフの男であった。
ドワーフは三度の飯より鍛冶作業が好きと言われるほどであり、一日ハンマーを持たないだけで震えが出るとさえされているほどだ。だからこそ、鉱山の多い場所に工房を持つことが多い。
そんなドワーフだからこそ、今回の依頼にはぴったりだとキングは考えた。
「しかし、引退したと聞いて軟弱になってないかと心配してたが、なんだか前より逞しくなったんじゃねぇか?」
豊富に蓄えられた灰色の髭を擦りながらスミスが言った。ドワーフは髭を伸ばしているものも多い。
「そうかい? 自分ではそこまで変わったとは思ってないんだがな」
「ふむ、それで、今は何をして暮らしてるんだ? 畑でも耕しているのか?」
「はは、最初はそれもいいかなと思ったんだが、思うところがあって今は山に篭ってるんだ」
「山にだって? おいおい隠居するような年じゃあるまいし」
そう言ってスミスが肩をすくめる。キングはははっと笑ってごまかすが。
「キュ~キュ~」
「うん? そういえばさっきから気になってたがそのスライムは一体どうしたんだ?」
「あぁ、わけあって仲良くなってな。ボールという名前で俺の友だちなんだ」
「は? と、友だち? お前、どうしちまったんだ……本当に大丈夫か?」
何故か心配されてしまった。スライムが友だちなのはそんなにおかしいかな? と思いつつも、キングは本題に入ろうと話を変える。
「実はスミスに作成して欲しい物があってきたんだがいいかな?」
「作成? 冒険者を引退したってことは、装備じゃないんだよな?」
「まぁ装備とは違うんだが、素材にはこれを使って欲しい。ボール頼む」
「キュー!」
そしてボールが床の上にゴンダーラ石を出していく。流石に全部は多いので見てもらう分だけだが。
「うん? お、おいおいおいおい! こいつはゴンダーラ石じゃねぇか! どうしたんだよこいつは!」
「あぁ、ちょっとゴンダーラを狩る機会があってな」
「は? ゴンダーラを……狩った?」
スミスは目を丸くさせてキングとゴンダーラ石を交互に見る。
「……お前、冒険者を引退したんだよな?」
「ま、まぁそうなんだが思うところがあって山に篭って修行は続けてたんだ」
「修行って……それにしたってお前、こんな大物よく倒せたな……まさか一人でやったのか?」
「いや、このボールも一緒だ」
「キュ~!」
「は? こ、このスライムがか? というかそもそもこんなの体の中に入れて置けるってスライムにそんな能力があったか?」
「ボールには出来るんだ。変身も出来たりするから確かにちょっと珍しい種類かもしれないが」
「それちょっと珍しいで済む話じゃなさそうだが……」
スミスがマジマジとボールを見てると、キュ~? とボールが首を傾げるような仕草を見せる。
「加工は出来そうかな?」
「うん? あ、あぁそりゃ頼まれればどんなものでも加工して作ってやりたいが、ただすまん。実は今ちょっとバタついていてな、直ぐにでも武器の作成を再開させないといけないんだが……」
そう語りつつ、沈んだ顔を見せるスミスであり、何かあったのかもしれないとキングは察する。
「武器の注文でも? 納期が厳しいのかい?」
「いや、注文じゃねぇんだが実は鉱山の一つがダンジョン化しちまったんだ。しかもわりと重要な鉱山でな」
「ダンジョン化か。前もあったな」
「あぁ、お前とはその時に出会ったんだったな」
懐かしそうにスミスが目を細める。スミスとは7年ほど前にダンジョン化した鉱山の解放という依頼で出会っていた。まだキングのレベルも高かったころである。
「しかし、またダンジョン化か」
「まぁ、鉱山の宿命みたいなところもあるけどな」
ダンジョンは世界に突如生み出される存在で迷宮としても知られる。これまでどうしてダンジョンが出来るのか不明であり、今でも未知の部分も多いが、それでも学者の研究によりある程度発生条件が判明されている。
ダンジョンが発生する条件で一番大きいのは魔素溜まりが出来ていることである。魔素とは魔力に繋がる元素の一つだ。魔法はこの魔素を魔力に変換して行使する。
魔素は目に見えないが、ある程度高位の魔法使いなら魔素を感じることが出来る。その魔素はある程度密閉された空間に溜まりやすい。
それ故かダンジョンは山に出来た洞窟などに発生しやすいとされ、その結果鉱山もダンジョン化の影響を受けやすいのである。
尤も最近ではそれを防ぐために魔素溜まりが出来ない仕掛け(魔素を外に逃がす排気口など)を施すことも多いが、それでも発生してしまうことはあり――
「一度ダンジョン化してから魔素溜まりが出来ないよう対策は施してきたつもりだったんだが、鉄が掘れなくなって廃鉱になったとこがどうやらダンジョン化したようで、そこから隣の鉱山に侵食しちまったんだ。
ダンジョン侵食はダンジョン発生後、放置することでその規模が拡大する現象だ。古くには山がまるまる一つダンジョン化し大量のモンスターが溢れ出たという記録も残されている。
「ダンジョン化も悪いことばかりじゃないんだがな……しかしモンスターが出ると作業がままならねぇし」
ダンジョンは放置すると確かに危険な存在だ。ダンジョンでは地上よりモンスターが生まれやすく増殖するとダンジョンから出てきて外の生物を脅かす。勿論それには人間も含まれている。
ただ、スミスの言うように良い面もある。先ずダンジョン化すると周囲の資源に変化が起きやすい。特に鉱山の場合、採掘できる鉱石に大きな変化が起き、銀であれば魔素を多く含んだミスリル、鉄も同じように魔素を含んだルフタンという金属に変化することがある。
これらは当然通常の金属より高価で、加工すれば性能の良い装備や魔法道具の材料にもなる。
それにダンジョンでは定期的に宝箱が現れたりする。中にはお宝が詰まっているのでそれ狙いの冒険者も多い。
こういった理由があるのでダンジョンが生まれても定期的な間引きに留め残し続けることも少なくなく、また自らダンジョンを生み出そうと考える領主などもいるほどだ。
とは言え、鉱山のダンジョン化はデメリットも多いのが事実であり。
「厄介なのはブッカブが大量に湧いていることだ。あれのおかげで鉱山の鉱石は食われるし、駆除に他の鍛冶師が動いてたりするんだが武器や防具はすぐ食われちまう」
ブッカブはゴブリンにたモンスターである。だが腹が出ていて体型はより丸っこい。推定レベルは15であり、レベルだけ見ればD級の冒険者でも相手できるほどだが実際はレベル以上に厄介な相手である。
その理由は今スミスが語ったことに現れていると言っていいだろう。ブッカブは鉱石や金属を食べるのだ。つまり金属の装備で挑んでも食べられ台無しになってしまう。これが厄介なのである。
「鍛冶師ということは、他のドワーフが動いているのか。確かにドワーフは腕っぷしが強いが、この手の案件は冒険者に頼んだほうが早いのでは?」
「そりゃ頼めたらとっくに頼んでるさ。だが今は冬だ時期が悪い」
「あぁ、そうか――」
ドワーフの鉱山は山の中に存在する。このあたりはそこまで雪は多くないのだが、途中の道には雪が多く積もっていた。それにそもそも町からの距離はかなり離れている。
雪の多い冬では町まで依頼を出しに行くのも大変であり、その上、必ずしも依頼を請けてくれる冒険者がいるとは言い切れない。
「だからって春になるのを待ってたらブッカブのせいで鉱山が枯れちまうからな。だからなんとかしようとしてんだが、俺らは揃いも揃って戦士ばっかだから中々上手く行かないのさ」
確かにブッカブと戦士は相性が悪い。金属を食べられては戦う術がないからだ。スミスの話では怪我をした者はいるそうだが幸い死人は出ていない。
ただこれ以上増えると対処のしようがなくなるという。
「ふむ……わかった。スミスには世話になっているし今回の件もある。俺も鉱山の解放を手伝うとしよう」
「何? お前がか? だがお前冒険者稼業からは引退したんだろう?」
「まぁ今はそうなんだが、修行は続けてきたつもりだ。戦う力はまだ残っているさ」
「ふむ……」
スミスは顎髭を擦り、そしてゴンダーラ石を見やる。
「……これ、間違いなくお前が倒したんだな?」
「あぁ、ただ、一つだけ言っておくと、そのゴンダーラは他の冒険者の手で既に弱っていた可能性が高いんだ。そうでないと俺とボールだけでは厳しかったと思うし、一撃では倒せないだろう?」
「は? 一撃だって? お前、こいつを一撃で倒したのか!」
「あ、あぁ。ボールと協力してではあるが……勿論だからこそ、既に他の誰かの手でダメージが溜まっていたと思うんだが」
キングの言葉を聞き、スミスは唸り声を上げる。スミスは考えていた。確かにその可能性がないとは言えないが、だからといって一撃で倒せるものかと。
それにゴンダーラほどの硬いモンスターがここまで見事に砕けていること自体が異常でもある。倒せたにしても通常はその後の処理に困るものだ。
それらを踏まえた上で――
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