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第1章 球技とボール編
第9話 ラグビーとバレー
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「おい、随分な大物がいやがるな……」
「ふむ、そのようだな」
ブッカブを倒し、金属を回収していく2人だったが、かなり奥まで進んだところで通常のより巨大なブッカブと遭遇した。
「ブッカブは鉱石を大量に食べると巨大化すると聞いたことがあるが、あれがそうなのか……しかしこれはまずいぜ。巨大化したブッカブはレベルも相当跳ね上がってるようだからな」
確かにこのサイズのブッカブになると通常体の倍以上にまでレベルが上っている。つまり最低でも30は超えているということだが。
「む、動き出したぞ」
すると、巨大なブッカブはキングたちに気がついたようであり、体を鋼鉄に変えた上で体を丸め、更に全身から棘を伸ばし、ゴロゴロと勢いよく転がってきた。
「な! 不味い、狭い隧道じゃこれは避けられないぞ!」
確かに2人が歩いてきたこの道は一本道。しかも巨大化したブッカブは前を塞ぐ程であり、避けられるスペースなどは一切ないわけだが。
「大丈夫だ、それならうってつけの技がある!」
「へ?」
すると今度はボールが楕円形の茶色い球に変化。それを脇に抱きかかえるようにしてキングが向かってくる棘つき球体に向けて飛び出した。
「馬鹿な! 死ぬ気か!」
「大丈夫だ。知ってるか? 橄欖球のタックルは地上最強なんだぜ?」
そういって白い歯を覗かせるキング。ちなみにこれはキングが読んだラグビー漫画の【タックルウォーズ】で主人公が言った台詞だ。
この漫画はラグビー漫画でありながら作中の9割がタイトル通りタックルで占められるという個性的な漫画であり、1話まるごと見開きのみのタックル描写で終わるなどなかなか攻めた内容であった。
監督すらラグビーはタックルで始まりタックルで終わる! などと口にし3600時間耐久タックルなるものをやりだす程でありまさにタイトルに偽りなしであったわけだが、その結果、キングはラグビー≒タックルと認識したのである。
なお、監督曰く、ラグビーのタックルが最強たる所以は、ラグビーボールを脇に抱えることで自然と脇が締まり、理想的なタックルポーズが取れる上、ラグビーボールを強く締めることでより力がこもり、ラグビーボールの刺激で血流が良くなり加速力が増す。更に言えばラグビーボールの重さがタックルに加わることになるので従来のタックルと比べ数十倍のタックル力が生み出せるというとんでも理論であった。
つまりこの漫画ではボールを持っている側がタックルしながら相手選手を吹き飛ばし、そのままトライを決めるというトンデモ展開で話が進んでいったのである。
しかし、これらを読み解いたキングは生真面目な性格も幸いし、なんとこのトンデモ理論を実現させたのだ。
「うぉおぉおおぉおおおーーーーーー!」
「ブゴオォオオォオオオッ!?」
「巨大ブッカブが吹っ飛んだ!?」
結果、キングの強烈なタックルを食らった巨大ブッカブは見事吹き飛んだ。しかも真上に飛んだ為、天井に大きな穴が空いてしまう。
だが、これはまさに漫画と同じ現象とも言える。キングが読んだタックルにおいても、タックルされた選手は軒並み真上にふっ飛ばされた。尤もこれはキングが勉強したサッカー漫画である【キャプテン? 妻さ!】においてもよく見られた現象だが。
「……申し訳ない。少し加減を間違えてしまったようだ」
「キュ~……」
天井の穴を認めた後、キングは冷や汗混じりにスミスを振り返り謝罪した。何故かボールももうしわけなさげだ。そしてキングが頭を下げるのとほぼ同時に巨大ブッカブが落下しダンジョンが揺れた。
「いや、まぁそれは別にいいさ。それにしても、お前、絶対引退前より強くなってるだろ?」
「いや、そんなことはないと思うぞ。前に依頼でダンジョン攻略した時はレベル50だったが今はレベル25だ」
「いや、25の強さじゃないと思うのだが……」
疑問の声を上げるスミスである。だが、確かに経験紙で調べた結果は25であった。
だが、実はこれに関してはキングでも知らない事実があった。キングは超早熟型の人間だ。故に25歳を過ぎてからレベルは上がらなくなり更に28歳を超えて下がり始めた。
実はこの現象はずっと続いていた。しかし実際はキングのレベルは上がっている。一体どういうことか? 単純な話である。つまりレベルの減少を超えるほどの訓練を課したことで、結果的にレベルが向上したのだ。
マイナスの要素をプラスの要素が上回ったといったところか。そしてその結果、本来下がる筈のレベルが上がるという結果に結びついたことで、キングのレベルの重みが増したのだ。
どういうことかといえばキングの今のレベルは結果で見れば25だが、実際はその3倍の価値があるといった状況であり、つまるところ今のキングのレベルは75相当であるということでもある。これは全盛期のキングのレベルを大きく上回る数値だ。
「これだけ大きいと採取できる金属も流石に多いな」
「ただ多いだけじゃねぇ。不純物が完全に抜け落ちている。これはかなりのもんだぜ。全くこんなものを体の中で生み出してくれるならこいつらに食われるのも悪くもないのかも知れないな」
解体して取り出した中身を見たスミスは笑い声を上げ冗談交じりな台詞を吐く。勿論本気ではない。実際は仕事の妨げになったりと弊害の方が多いからだ。
「さて、正直これまではうまく行き過ぎて怖いぐらいだが、こっから先はダンジョンが侵食するもととなった廃鉱だ。気をつけたほうがいいだろう」
スミスが注意を促す。何故なら侵食先のダンジョンよりその要因となったダンジョンの方が当然発生したのが早く、その分強力なモンスターが発生している可能性が高いからだ。
「そうだな。気を引き締めるとしよう」
「キュッ!」
ボールも張り切っている様子だ。キングも更に周囲に警戒しながら前を歩くが。
「おっと、よっ、ふむ――」
「……何かすげーな」
スミスが感心した。ダンジョンにはトラップが配置されていることも多い。そして廃鉱部に足を踏み入れてからその数は明らかに増加した。
だが、キングはトラップによって矢が飛んでこようが、落とし穴が開こうが吊り天井なども全て回避したのである。しかもその上で壊せるものはボールを投げたり蹴ったりといったやり方で破壊している。
おかげでスミスは一切のトラップに引っかかることなく済んだ。
「球技の多くは、敵の攻撃にも敏感でなければいけないからな。自然と警戒心が増したんだ」
「その球技ってのはよくわからないが、大したもんだよ」
改めて感心するスミスである。そしてキングの言うように蹴球にしろ籠球にしろ、ボールを相手から取られないことが大前提だ。
故に結果的にキングは敵やトラップの気配に敏感になったのである。
罠を回避しながら先を急ぐキングたちだが、そこで前から迫る影。
「あいつらは、石兵だな……やたら頑丈な上に、剣での戦いにも長けた厄介な相手だ」
石兵――レベル25程度ある魔物だ。しかし、石でできている為、かなり頑丈であり多少レベルが上の冒険者でも一撃で倒すのは難しい。
「しかし流石に嫌らしいぜ。ここに至るまでにブッカブとの戦いで装備は食われたりしてボロボロになってる可能性が高いし、仲間に魔法使いがいても魔力を大分消費している頃合いだ。そんなときにこんな連中に出くわしたら――」
「フンッ!」
スミスが真剣な顔で語っているが、キングはその間にサッカーボールに変化したボールを蹴り、纏めて倒してしまった。
「……いらぬ心配だったか」
「うん? 何か言っていたか?」
「いや、いい……」
ちなみにキングはモンスターが姿を見せた時点で臨戦態勢に入っていたので、スミスの声は頭に入っていなかったのだった。
こうして石兵も物ともせず先に進むと、いよいよ最奥部の大広間にたどり着いた。
「ふむ、これがダンジョンの核が生み出した番人か」
「こ、こいつはとんでもないな」
「あぁ、石の巨人だな」
「キュ~」
それは見上げるほどに大きな動く石像であった。途中で出会った石兵が大きくなったような存在だが、鎧などはより立派そうに思える。
ちなみにダンジョンは核を破壊すれば消滅する。だが核もただ黙って破壊されるのをまっているわけもなく、こうして番人に守らせているのである。この番人は冒険者の間ではボスと呼ばれることもある。
「石の巨人、いや待てキング。これはちょっとでかすぎるしもしかしたら石の大巨人かもしれ――」
「とりあえず先手を打って実力を見よう。ボール」
「キュ~」
スミスが目の前のボスに疑問を感じたようだが、キングは攻撃あるのみと考えているようだ。それにボスは基本、攻撃を受けたりある程度の距離に近づくまで行動に移らない。この距離、いわゆる範囲はボスによってことなるが、この相手はそこまで広くはなさそうだ。
ならば確かに早い段階で動き出したほうが有利に立ちやすいだろう。サッカーボール大の白い球に変化したボールを手に取り、しっかりと狙いを定める。
「ここは排球で勝負だな」
「いや、だからキング、あれは――」
スミスが一生懸命キングに伝えようとするが、既にキングは集中モードに入っていた。そしてキングはボールを上空高く放り投げ、それにあわせて自分も地面を蹴った。
「な! た、高い!」
その姿にスミスが驚愕する。キングの体格はかなりのものだ。全体的に非常にたくましい。だが、その巨体が空高く舞い上がった。まるで背中に翼が生えたが如く。
「これが排球の跳躍力!」
そう、キングの言う排球はまさに打点の高さが物をいう球技であった。彼が読んだ、【廃部、急!?】 という漫画でもそうであった。ちなみにこの漫画は急遽廃部の決まった排球部で夢を諦めきれない主人公が、一から部員を集め最終的に全国制覇を成し遂げるという中々王道っぽい雰囲気のあるスポ根漫画であった。
だが、それも途中から空中殺法がメインとなり、白い翼の生えた部員や黒い翼の生えた部員が空中を飛び交い必殺アタックを決めまくるという内容に変わっていくわけだが――とにかく、キングはその漫画を見て、排球とはより高いジャンプをしアタックした者が勝利をおさめる球技だと勘違いしてしまった。
そして、キングの跳躍は石の巨人の頭を越え天井すれすれにまで到達し、そこまで至り遂にボールに向けその手を振るった。
「爆烈球撃!」
掛け声を上げアタックすると、ボールは斜め下に向けて突き進み、石の巨人の顔面に命中し、そして見事爆発し木っ端微塵に弾け飛んだ。
「マジかよ……」
スミスも思わず絶句する。
ちなみに、排球とはそもそもバレーボールのことなのだが、作中では主人公がそもそもそのことを知らず、このような技名を名付けたという経緯がある。故にキングもそれに倣った形だ。そして漫画通りしっかり爆発を引き起こしている。
尤も漫画ではこの必殺アタックが完成し主人公は手応えを感じるも、こんなコートを爆破するような連中と試合ができるか! と尽く練習試合が断られるようになってしまったという切ないエピソードが語られていたりもするが――
「ふむ、そのようだな」
ブッカブを倒し、金属を回収していく2人だったが、かなり奥まで進んだところで通常のより巨大なブッカブと遭遇した。
「ブッカブは鉱石を大量に食べると巨大化すると聞いたことがあるが、あれがそうなのか……しかしこれはまずいぜ。巨大化したブッカブはレベルも相当跳ね上がってるようだからな」
確かにこのサイズのブッカブになると通常体の倍以上にまでレベルが上っている。つまり最低でも30は超えているということだが。
「む、動き出したぞ」
すると、巨大なブッカブはキングたちに気がついたようであり、体を鋼鉄に変えた上で体を丸め、更に全身から棘を伸ばし、ゴロゴロと勢いよく転がってきた。
「な! 不味い、狭い隧道じゃこれは避けられないぞ!」
確かに2人が歩いてきたこの道は一本道。しかも巨大化したブッカブは前を塞ぐ程であり、避けられるスペースなどは一切ないわけだが。
「大丈夫だ、それならうってつけの技がある!」
「へ?」
すると今度はボールが楕円形の茶色い球に変化。それを脇に抱きかかえるようにしてキングが向かってくる棘つき球体に向けて飛び出した。
「馬鹿な! 死ぬ気か!」
「大丈夫だ。知ってるか? 橄欖球のタックルは地上最強なんだぜ?」
そういって白い歯を覗かせるキング。ちなみにこれはキングが読んだラグビー漫画の【タックルウォーズ】で主人公が言った台詞だ。
この漫画はラグビー漫画でありながら作中の9割がタイトル通りタックルで占められるという個性的な漫画であり、1話まるごと見開きのみのタックル描写で終わるなどなかなか攻めた内容であった。
監督すらラグビーはタックルで始まりタックルで終わる! などと口にし3600時間耐久タックルなるものをやりだす程でありまさにタイトルに偽りなしであったわけだが、その結果、キングはラグビー≒タックルと認識したのである。
なお、監督曰く、ラグビーのタックルが最強たる所以は、ラグビーボールを脇に抱えることで自然と脇が締まり、理想的なタックルポーズが取れる上、ラグビーボールを強く締めることでより力がこもり、ラグビーボールの刺激で血流が良くなり加速力が増す。更に言えばラグビーボールの重さがタックルに加わることになるので従来のタックルと比べ数十倍のタックル力が生み出せるというとんでも理論であった。
つまりこの漫画ではボールを持っている側がタックルしながら相手選手を吹き飛ばし、そのままトライを決めるというトンデモ展開で話が進んでいったのである。
しかし、これらを読み解いたキングは生真面目な性格も幸いし、なんとこのトンデモ理論を実現させたのだ。
「うぉおぉおおぉおおおーーーーーー!」
「ブゴオォオオォオオオッ!?」
「巨大ブッカブが吹っ飛んだ!?」
結果、キングの強烈なタックルを食らった巨大ブッカブは見事吹き飛んだ。しかも真上に飛んだ為、天井に大きな穴が空いてしまう。
だが、これはまさに漫画と同じ現象とも言える。キングが読んだタックルにおいても、タックルされた選手は軒並み真上にふっ飛ばされた。尤もこれはキングが勉強したサッカー漫画である【キャプテン? 妻さ!】においてもよく見られた現象だが。
「……申し訳ない。少し加減を間違えてしまったようだ」
「キュ~……」
天井の穴を認めた後、キングは冷や汗混じりにスミスを振り返り謝罪した。何故かボールももうしわけなさげだ。そしてキングが頭を下げるのとほぼ同時に巨大ブッカブが落下しダンジョンが揺れた。
「いや、まぁそれは別にいいさ。それにしても、お前、絶対引退前より強くなってるだろ?」
「いや、そんなことはないと思うぞ。前に依頼でダンジョン攻略した時はレベル50だったが今はレベル25だ」
「いや、25の強さじゃないと思うのだが……」
疑問の声を上げるスミスである。だが、確かに経験紙で調べた結果は25であった。
だが、実はこれに関してはキングでも知らない事実があった。キングは超早熟型の人間だ。故に25歳を過ぎてからレベルは上がらなくなり更に28歳を超えて下がり始めた。
実はこの現象はずっと続いていた。しかし実際はキングのレベルは上がっている。一体どういうことか? 単純な話である。つまりレベルの減少を超えるほどの訓練を課したことで、結果的にレベルが向上したのだ。
マイナスの要素をプラスの要素が上回ったといったところか。そしてその結果、本来下がる筈のレベルが上がるという結果に結びついたことで、キングのレベルの重みが増したのだ。
どういうことかといえばキングの今のレベルは結果で見れば25だが、実際はその3倍の価値があるといった状況であり、つまるところ今のキングのレベルは75相当であるということでもある。これは全盛期のキングのレベルを大きく上回る数値だ。
「これだけ大きいと採取できる金属も流石に多いな」
「ただ多いだけじゃねぇ。不純物が完全に抜け落ちている。これはかなりのもんだぜ。全くこんなものを体の中で生み出してくれるならこいつらに食われるのも悪くもないのかも知れないな」
解体して取り出した中身を見たスミスは笑い声を上げ冗談交じりな台詞を吐く。勿論本気ではない。実際は仕事の妨げになったりと弊害の方が多いからだ。
「さて、正直これまではうまく行き過ぎて怖いぐらいだが、こっから先はダンジョンが侵食するもととなった廃鉱だ。気をつけたほうがいいだろう」
スミスが注意を促す。何故なら侵食先のダンジョンよりその要因となったダンジョンの方が当然発生したのが早く、その分強力なモンスターが発生している可能性が高いからだ。
「そうだな。気を引き締めるとしよう」
「キュッ!」
ボールも張り切っている様子だ。キングも更に周囲に警戒しながら前を歩くが。
「おっと、よっ、ふむ――」
「……何かすげーな」
スミスが感心した。ダンジョンにはトラップが配置されていることも多い。そして廃鉱部に足を踏み入れてからその数は明らかに増加した。
だが、キングはトラップによって矢が飛んでこようが、落とし穴が開こうが吊り天井なども全て回避したのである。しかもその上で壊せるものはボールを投げたり蹴ったりといったやり方で破壊している。
おかげでスミスは一切のトラップに引っかかることなく済んだ。
「球技の多くは、敵の攻撃にも敏感でなければいけないからな。自然と警戒心が増したんだ」
「その球技ってのはよくわからないが、大したもんだよ」
改めて感心するスミスである。そしてキングの言うように蹴球にしろ籠球にしろ、ボールを相手から取られないことが大前提だ。
故に結果的にキングは敵やトラップの気配に敏感になったのである。
罠を回避しながら先を急ぐキングたちだが、そこで前から迫る影。
「あいつらは、石兵だな……やたら頑丈な上に、剣での戦いにも長けた厄介な相手だ」
石兵――レベル25程度ある魔物だ。しかし、石でできている為、かなり頑丈であり多少レベルが上の冒険者でも一撃で倒すのは難しい。
「しかし流石に嫌らしいぜ。ここに至るまでにブッカブとの戦いで装備は食われたりしてボロボロになってる可能性が高いし、仲間に魔法使いがいても魔力を大分消費している頃合いだ。そんなときにこんな連中に出くわしたら――」
「フンッ!」
スミスが真剣な顔で語っているが、キングはその間にサッカーボールに変化したボールを蹴り、纏めて倒してしまった。
「……いらぬ心配だったか」
「うん? 何か言っていたか?」
「いや、いい……」
ちなみにキングはモンスターが姿を見せた時点で臨戦態勢に入っていたので、スミスの声は頭に入っていなかったのだった。
こうして石兵も物ともせず先に進むと、いよいよ最奥部の大広間にたどり着いた。
「ふむ、これがダンジョンの核が生み出した番人か」
「こ、こいつはとんでもないな」
「あぁ、石の巨人だな」
「キュ~」
それは見上げるほどに大きな動く石像であった。途中で出会った石兵が大きくなったような存在だが、鎧などはより立派そうに思える。
ちなみにダンジョンは核を破壊すれば消滅する。だが核もただ黙って破壊されるのをまっているわけもなく、こうして番人に守らせているのである。この番人は冒険者の間ではボスと呼ばれることもある。
「石の巨人、いや待てキング。これはちょっとでかすぎるしもしかしたら石の大巨人かもしれ――」
「とりあえず先手を打って実力を見よう。ボール」
「キュ~」
スミスが目の前のボスに疑問を感じたようだが、キングは攻撃あるのみと考えているようだ。それにボスは基本、攻撃を受けたりある程度の距離に近づくまで行動に移らない。この距離、いわゆる範囲はボスによってことなるが、この相手はそこまで広くはなさそうだ。
ならば確かに早い段階で動き出したほうが有利に立ちやすいだろう。サッカーボール大の白い球に変化したボールを手に取り、しっかりと狙いを定める。
「ここは排球で勝負だな」
「いや、だからキング、あれは――」
スミスが一生懸命キングに伝えようとするが、既にキングは集中モードに入っていた。そしてキングはボールを上空高く放り投げ、それにあわせて自分も地面を蹴った。
「な! た、高い!」
その姿にスミスが驚愕する。キングの体格はかなりのものだ。全体的に非常にたくましい。だが、その巨体が空高く舞い上がった。まるで背中に翼が生えたが如く。
「これが排球の跳躍力!」
そう、キングの言う排球はまさに打点の高さが物をいう球技であった。彼が読んだ、【廃部、急!?】 という漫画でもそうであった。ちなみにこの漫画は急遽廃部の決まった排球部で夢を諦めきれない主人公が、一から部員を集め最終的に全国制覇を成し遂げるという中々王道っぽい雰囲気のあるスポ根漫画であった。
だが、それも途中から空中殺法がメインとなり、白い翼の生えた部員や黒い翼の生えた部員が空中を飛び交い必殺アタックを決めまくるという内容に変わっていくわけだが――とにかく、キングはその漫画を見て、排球とはより高いジャンプをしアタックした者が勝利をおさめる球技だと勘違いしてしまった。
そして、キングの跳躍は石の巨人の頭を越え天井すれすれにまで到達し、そこまで至り遂にボールに向けその手を振るった。
「爆烈球撃!」
掛け声を上げアタックすると、ボールは斜め下に向けて突き進み、石の巨人の顔面に命中し、そして見事爆発し木っ端微塵に弾け飛んだ。
「マジかよ……」
スミスも思わず絶句する。
ちなみに、排球とはそもそもバレーボールのことなのだが、作中では主人公がそもそもそのことを知らず、このような技名を名付けたという経緯がある。故にキングもそれに倣った形だ。そして漫画通りしっかり爆発を引き起こしている。
尤も漫画ではこの必殺アタックが完成し主人公は手応えを感じるも、こんなコートを爆破するような連中と試合ができるか! と尽く練習試合が断られるようになってしまったという切ないエピソードが語られていたりもするが――
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