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第二章 サムジャともふもふ編

第67話 サムジャ、疑われる?

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 領主代理のダミールと大神官のハデルがやってきて、俺の功績にイチャモンをつけてきた。

 ギルド長が心配していたとおりのことに見事になったな。ここまであからさまだと逆に感心する。

「それで、何の根拠があってうちに因縁つけて来たんだ?」

 オルサが改めて聞いた。俺は通り魔事件の犯人であるジャックを倒してギルドに引き渡した。死体だってギルドが保管している。
 
 その状況でそれでも違うというのなら、この二人には明確な根拠が必要だろう。

「それについては私からお話いたしましょう」
 
 すると大神官のハデルが前に出てきて話を始めた。

「実は私はダミール卿から相談を受けていましてね。冒険者ギルドに通り魔事件の依頼を出しているのだがやる気があるのかないのか、遅々として調査も進まず解決の兆しも見えない。教会の力で何とかならないのか、とね」

 ハデルがオルサに説明してくるが、オルサの顔は疑心に満ちていた。

「言っている意味がわからんな。うちの仕事が遅いという点は、取り敢えず置いておくとして、何で教会にそんな相談を持ちかける? 教会の仕事とまるで関係ねぇだろうが」
「おやおや、それは随分と狭い見解をお持ちですな。教会は困っている人の相談には乗るものですよ」

 胡散臭い笑みを浮かべ、ハデルが答える。
 相談、確かにそういう面もあるだろうが、それはあくまで教会内で片付く場合のみだろう。

 相談を受けたからと殺人も絡む事件に首を突っ込むなんていうのはオルサの言う通り教会の行う仕事ではない。

「それに今回の事件は十分教会に関係あると私は考えている」

 だが何だこのハデルの妙な自信は?

「よく言うぜ。大体さっきも言ったが犯人自体はもうここのいるシノの手で片付けられた。噂が出回って納得いってないらしいがそれが事実だ」
「その犯人は生け捕りにされたのですかな?」

 ハデルが問う。

「……死んだよ。だが文句を言われる筋合いでもないぜ。生死を問わずって話だったんだしな」
「馬鹿が。生死を問わずというのは最大限配慮してそれでも殺してしまった場合は致し方なしという意味だ。そこまでしたのか貴様らは!」

 オルサの説明にまたわけのわからない理屈でダミールが噛み付いていた。

「そんな話は聞いてねぇなぁ。すくなくとも本来の領主様の意図は違うと思うぜ?」
「今は私が領主だ!」
「ただの代理だろうが」
「今は代理でもいずれは私が領主になるのだ! 同じことだ!」

 いずれは? 確かに領主は今は体調が悪いと聞くが、何故こいつはそこまでいい切れるんだ?

 俺が思った疑問は、オルサも感じ取ったように思える。訝しげにダミールを見ているぞ。

「ダミール卿、ここは少し抑えて。所詮冒険者などという荒くれ者集団に配慮というものを求めるのが間違っているのですからな」
「あぁそうだな。俺らは荒っぽいから、今すぐ二人ばかし叩き出したくなるぐらいにな」
「パパ、そこはせめて抑えて」

 ルンも流石に力づくで叩き出すのは不味いと思っているんだろう。頬は引きつっているが。

「どちらにせよ死体にくちなし。おや? 倒したというそこの冒険者にとってはとても都合のいい状況ではありませんかな?」
「まるで最初からシノを疑って掛かってるような言い草だが、鑑定結果は既に出ている。それを見る限りジャックが犯人なのは間違いないんだよ。残念だったな」

 オルサが鼻を鳴らす。しかし、ジロリとハデルがオルサを見やり。

「何故鑑定結果が出たから間違いないと?」
「ふぅ。私から説明させていただきますが、先ず鑑定結果で出た天職、そしてスキル、それらが普通とはことなるものでした。ギルドにも守秘義務があるのでそこを詳しく話すわけにはいきませんが、鑑定で見たステータスだけでも犯人である可能性は高いと考えてます」

 はっきりと言わないのは闇の天職絡みだからなのかもしれない。俺が知っていたことにも驚いていたしな。

「なるほど。だがだとしたらこのギルドの能力は低いと言わざるをえませんな」
「どういう意味だ?」
「そうですね。たとえはこう考えてみては? そこの男が倒した相手は確かに何かしらの犯罪行為に及んでいたかも知れない。だからこそそこの男が犯人を仕立て上げるのに好都合だったと」
「は? 仕立て上げるだと? シノが? お前、本気で言っているのか?」

 呆れたようにオルサが問う。俺からしてもまさかそんな話を持ち出してくるとは思わなかった。

「根拠はあるのですよ。そう、貴方、天職はサムジャでしたね。だけど、妙だと思いませんか? サムジャなどという天職でこれだけの被害を出した犯人をあっさり倒せてしまうことが」
「だから嘘だと言いたいのか?」

 目つき鋭くオルサが更に質問を続ける。

「そこまではっきりとはいいませんが、ですが私は知っている。そこの男が持っている刀が呪われた妖刀の類であることを。つまり私が言いたいのは実際の犯人は自分でありながら、別の犯人を仕立て上げた真の犯人がいるということなのです」

 そう言ってハデルの指が俺に向けられた。

「そう、連続通り魔事件の真の犯人は冒険者シノお前だ!」

 ビシッと指を突きつけ、ハデルがわけのわからないことを言った。

「クゥ~ン……」

 パピィも怒りを通り越し呆れたといったような顔を見せている。

「はぁ、一体何を言い出すかと思えば」
「本当ね。流石に呆れてものも言えないわ」
「ほう? ならば一つ聞くが、シノが持っているその刀の入手ルートはわかっているのかね?」

 ハデルの話題が俺の刀に移った。シエロが答えあぐねている。俺に気を遣ってるのかも知れない。

「これはダンジョンで手に入れたものだ」

 だから俺から答えた。既に知ってる物も多いことだ。隠していても仕方ない。

「なるほど。だが、そんなものがそう簡単に手に入るとは思えない。私の予想では隠された通路の先にでもあったのでは?」
「まぁそうだな」
「やはりか」
「ほう、やはりというとハデル大神官よ。なにかわかったのか?」
「ん~ん~ん……そうですねぇ~」

 するとハデルが額を押さえながら妙な唸り声を上げた。

「いまので大体わかりました。貴方自ら墓穴をほりましたねぇ。ふふ、真実はいつも一つ。大神官の名にかけて貴方が犯人だと証明して見せましょう」
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