侍と忍者の記憶を持ったまま転生した俺は、居合と忍法を組み合わせた全く新しいスキル『居合忍法』で無双し異世界で成り上がる!

空地大乃

文字の大きさ
83 / 125
第二章 サムジャともふもふ編

第82話 ルンとパピィのコンビネーション

しおりを挟む
「はは! どうだ木っ端微塵だろうが! 偉そうに能書き垂れていたが、私が本気を出せばこんなも――」

 魔法による爆発を引き起こし、随分と得意になっていたマジルだったが、語りの途中で声が止まった。

 いや、ぐふっ、という呻き声に変わっていた。ローブは伸びてきた影に貫かれていた。更に大量の炎の礫がマジルを蹂躙する。

「ぐはぁあぁああ!」
「どんなもんよ!」
「ワンッ!」

 煙が晴れ中から姿を見せたのは平気な顔で立つルンとパピィであった。爆発のダメージもまるで感じさせない。

「ぐ、ぐふぅ、で、ディアラーゼ!」

 マジルは右手を傷口に当て回復魔法を唱えた。瞬時に怪我が治り、平然と立ち上がる。これだけの傷を受けても治療できてしまうとは妙に回復力が高い。

「はぁ、はぁ、今のは少し焦ったぞ。だが、驚いたな。一体どうやった?」
「……答えるわけないじゃない」
「そうかよ――フレイムショット!」

 マジルの手から火球が放たれる。しかし、それをルンは少々大げさにも感じられる動きで避けた。

 その表情には焦りも感じられる。

「……なるほど。どうやら今のも一度切りだったということか。恐らく、何らかの道具……身代わり石でも持参していたか?」

 ルンの眉がピクリと跳ねた。それをマジルは見逃さなかった。

「やっぱりそうか。だがあれはそう簡単に手に入るものでもない」

 マジルが口にした身代わり石は文字通り死ぬような大ダメージを受けた際に身代わりになってくれる石だ。一度身代わりになると割れる消耗品でもあるが、一度は命が助かるとあって、市場価格も高く、元が希少だけに数も多くはない。

「逆に言えばそれらのアイテムに頼らないといけない程にお前らは追い詰められているということだ。その状況でよく私に偉そうなことが言えたものだな」
「……自分以外の誰かの魔法に頼らないと戦闘もこなせない人間に言われたくないわね」
「ふん、好きなだけ言え! パワーウィンド!」
「くっ!」
「ガウ!」

 強風が二人に向けて吹き荒れた。飛ばされないように踏ん張るので精一杯な様子でもある。

「はは、どうだ!」
「何がどうだよ。この程度の風を起こすのがあんたの魔法? やっぱり予想通りね。さっきの爆発するのは確かに威力が高かったけど、それだけ魔力も多く消費するはず。どうせもう撃てないんでしょう?」
「――言ってろ! ウォーターガム!」

 更に続けてマジルが魔法を行使。水球が飛んできてルンの足元に命中した。

「外れたわよ。一体どこを狙っているのよ」
「いや狙い通りさ」

 風がやみ、マジルの声からは妙な自信が感じられた。怪訝に思うルンだったが、移動しようとしてその意味がわかった。

「これ、足が地面に引っ付いて!」
「はは、粘着性抜群のガム化する魔法だ。それでそこから動けまい」
「くっ!」

 短く呻くルン。その表情には焦りが見られた。

「さて、さっき貴様はこう言ったな? 私がもう爆破の魔法は使えないと。だが残念だったな。それぐらいの余裕はまだまだあるんだよ!」
「え? 嘘?」
「ワンワン!」
「駄目パピィ来ちゃ!」
「ははは! 馬鹿め纏めてくたばれ! クレイジーダイナマイト!」

 刹那二度目の爆発がルンとパピィを呑み込んだ。激しい熱と衝撃。轟音が鳴り響き、それが徐々に小さくなっていく。立ち込めた煙も少しずつ薄れていき――晴れた視界の中でルンが地面に倒れているのが見えた。

「はは、やはり次はなかったようだな! あの子犬は跡形もなく吹っ飛んだか! はは、ザマァないな!」

 ピクリとも動かないルンと、完全に消えたパピィを見てマジルが歓喜の声をあげた。

「さて、早速ステータスでも見てみるか。これで私も刻印魔法が使えるように、くく」

 そして自らのステータスを確認するマジルであったが。

「さて、魔法、魔法、何だと? 馬鹿な! 何故刻印魔法が!」
「そんなの生きてるからに決まってるでしょうが!」

 ガバッ! とルンが上半身を起こし、突き出した杖から竜の息吹を思わせる炎を吹き出した。

「な、くそ! パワーウィンド!」

 しかし、マジルは風の魔法で自らを飛ばし、ルンの炎から逃れてしまった。

「な、避けられた!?」
「はは、甘いんだよ! だが、何故だ! 何故貴様生きてる! 身代わりの石はなくしたはずだろう!」
「……ば~か。そんなの最初から持ってないわよ」

 だが、疑問を投げかけるマジルに返したルンの答えはマジルの想定外のものであった。

「もって、ないだと? 馬鹿な! だったら何故!」
「パピィのおかげよ。ふふ、さて問題です。私を助けてくれたパピィは、今どこに?」
「何?」
「ワンワンワンワンワン!」

 その時、影の中からパピィが飛び出し、マジルを背後から狙った。

「な、影の中だと! ま、まさか!」

 ルンの口元が緩む。そう、身代わりの石などではなかった。理由はパピィの影潜りにあった。パピィは影潜りであれば触れた相手も一緒に引き込めるようになっていた。

 だからこそ咄嗟にルンのローブに噛みつき、影の中に引き入れ爆発をやり過ごしたのである。

 そしてそれを悟らせないために一度目は思わせぶりな態度をとることで、アイテムの効果だと誤認させた。

 そして二回目には影潜りでルンとやり過ごし、その後は影移動でマジルの背後に移動した。

 背後からのパピィの強襲――だが、マジルは横に飛びその一撃を避けきった。

「はは、やったぞ! 貴様らは千載一遇のチャンスを不意にしたな! その手はもう二度とくわんぞ!」
「いえ、狙い通りよ」
「――何?」

 怪訝な声を上げるマジル。するとルンの側に着地したパピィの影がその頭上に伸び、何かを見せびらかすように揺れ動かした。

「な! ま、まさかそれは!」
「へぇ、こんな小さい杖を持っていたんだ。ま、あんたの魔法で小さくしたのかもだけどね」

 パピィがルンにそれを渡す。手のひらに収まる程度の小さな杖であった。パピィはこれを影を操りマジルの手の中から奪ってみせた。

「妙だと思ったのよ。クレイジーダイナマイトにしろディアラーゼにしろ他の魔法に比べて効果が高すぎる。そしてあんたはずっと左手を握りしめていた。それでピンっと来た。あんたが自分の意志で魔法を強化できる何かを持っているとね。それが小さくしたこの杖ってわけ。考えたわね。杖を手にしていたら効果を真っ先に疑われて奪われたり壊されるかも知れない。だから隠していた」
「あ、あぁ……」

 マジルは明らかに動揺していた。そしてそれこそがルンの言っていることが正しいという証明でもあった。

「さて、この杖を失ったら貴方の回復魔法はどれぐらいにまで効果が、落ちるのかしら? そしてこの杖を使えば、私の魔法はどれぐらい、強化されるのかしらね!」
「や、やめ――」
「はぁああぁああ!」
「アオォオォォオォオォオン!」
 
 ルンの手から生まれた巨大な火球がマジルを呑み込み、そして直後パピィの旋風爪牙で全身がズタズタに引き裂かれた。顔につけていた仮面もバラバラに砕け散り、完全に意識ごと狩られてしまっていた。回復魔法を使う様子も感じられない。

「……何だやっぱり醜悪な顔じゃない」
「ワン!」

 こうして仮面が剥がれたマジルの顔は予想通り醜いものだったという――

 ルン、パピィコンビ。マジルに完全勝利――
しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~

伽羅
ファンタジー
 物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。

【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。

いな@
ファンタジー
【第一章完結】映画の撮影中に死んだのか、開始五分で処刑されるキャラに転生してしまったけど死にたくなんてないし、原作主人公のメインヒロインになる幼馴染みも可愛いから渡したくないと冤罪を着せられる前に死亡フラグをへし折ることにします。 そこで転生特典スキルの『超越者』のお陰で色んなトラブルと悪名の原因となっていた問題を解決していくことになります。 【第二章】 原作の開始である学園への入学式当日、原作主人公との出会いから始まります。 原作とは違う流れに戸惑いながらも、大切な仲間たち(増えます)と共に沢山の困難に立ち向かい、解決していきます。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

処理中です...