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第二章 サムジャともふもふ編
第82話 ルンとパピィのコンビネーション
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「はは! どうだ木っ端微塵だろうが! 偉そうに能書き垂れていたが、私が本気を出せばこんなも――」
魔法による爆発を引き起こし、随分と得意になっていたマジルだったが、語りの途中で声が止まった。
いや、ぐふっ、という呻き声に変わっていた。ローブは伸びてきた影に貫かれていた。更に大量の炎の礫がマジルを蹂躙する。
「ぐはぁあぁああ!」
「どんなもんよ!」
「ワンッ!」
煙が晴れ中から姿を見せたのは平気な顔で立つルンとパピィであった。爆発のダメージもまるで感じさせない。
「ぐ、ぐふぅ、で、ディアラーゼ!」
マジルは右手を傷口に当て回復魔法を唱えた。瞬時に怪我が治り、平然と立ち上がる。これだけの傷を受けても治療できてしまうとは妙に回復力が高い。
「はぁ、はぁ、今のは少し焦ったぞ。だが、驚いたな。一体どうやった?」
「……答えるわけないじゃない」
「そうかよ――フレイムショット!」
マジルの手から火球が放たれる。しかし、それをルンは少々大げさにも感じられる動きで避けた。
その表情には焦りも感じられる。
「……なるほど。どうやら今のも一度切りだったということか。恐らく、何らかの道具……身代わり石でも持参していたか?」
ルンの眉がピクリと跳ねた。それをマジルは見逃さなかった。
「やっぱりそうか。だがあれはそう簡単に手に入るものでもない」
マジルが口にした身代わり石は文字通り死ぬような大ダメージを受けた際に身代わりになってくれる石だ。一度身代わりになると割れる消耗品でもあるが、一度は命が助かるとあって、市場価格も高く、元が希少だけに数も多くはない。
「逆に言えばそれらのアイテムに頼らないといけない程にお前らは追い詰められているということだ。その状況でよく私に偉そうなことが言えたものだな」
「……自分以外の誰かの魔法に頼らないと戦闘もこなせない人間に言われたくないわね」
「ふん、好きなだけ言え! パワーウィンド!」
「くっ!」
「ガウ!」
強風が二人に向けて吹き荒れた。飛ばされないように踏ん張るので精一杯な様子でもある。
「はは、どうだ!」
「何がどうだよ。この程度の風を起こすのがあんたの魔法? やっぱり予想通りね。さっきの爆発するのは確かに威力が高かったけど、それだけ魔力も多く消費するはず。どうせもう撃てないんでしょう?」
「――言ってろ! ウォーターガム!」
更に続けてマジルが魔法を行使。水球が飛んできてルンの足元に命中した。
「外れたわよ。一体どこを狙っているのよ」
「いや狙い通りさ」
風がやみ、マジルの声からは妙な自信が感じられた。怪訝に思うルンだったが、移動しようとしてその意味がわかった。
「これ、足が地面に引っ付いて!」
「はは、粘着性抜群のガム化する魔法だ。それでそこから動けまい」
「くっ!」
短く呻くルン。その表情には焦りが見られた。
「さて、さっき貴様はこう言ったな? 私がもう爆破の魔法は使えないと。だが残念だったな。それぐらいの余裕はまだまだあるんだよ!」
「え? 嘘?」
「ワンワン!」
「駄目パピィ来ちゃ!」
「ははは! 馬鹿め纏めてくたばれ! クレイジーダイナマイト!」
刹那二度目の爆発がルンとパピィを呑み込んだ。激しい熱と衝撃。轟音が鳴り響き、それが徐々に小さくなっていく。立ち込めた煙も少しずつ薄れていき――晴れた視界の中でルンが地面に倒れているのが見えた。
「はは、やはり次はなかったようだな! あの子犬は跡形もなく吹っ飛んだか! はは、ザマァないな!」
ピクリとも動かないルンと、完全に消えたパピィを見てマジルが歓喜の声をあげた。
「さて、早速ステータスでも見てみるか。これで私も刻印魔法が使えるように、くく」
そして自らのステータスを確認するマジルであったが。
「さて、魔法、魔法、何だと? 馬鹿な! 何故刻印魔法が!」
「そんなの生きてるからに決まってるでしょうが!」
ガバッ! とルンが上半身を起こし、突き出した杖から竜の息吹を思わせる炎を吹き出した。
「な、くそ! パワーウィンド!」
しかし、マジルは風の魔法で自らを飛ばし、ルンの炎から逃れてしまった。
「な、避けられた!?」
「はは、甘いんだよ! だが、何故だ! 何故貴様生きてる! 身代わりの石はなくしたはずだろう!」
「……ば~か。そんなの最初から持ってないわよ」
だが、疑問を投げかけるマジルに返したルンの答えはマジルの想定外のものであった。
「もって、ないだと? 馬鹿な! だったら何故!」
「パピィのおかげよ。ふふ、さて問題です。私を助けてくれたパピィは、今どこに?」
「何?」
「ワンワンワンワンワン!」
その時、影の中からパピィが飛び出し、マジルを背後から狙った。
「な、影の中だと! ま、まさか!」
ルンの口元が緩む。そう、身代わりの石などではなかった。理由はパピィの影潜りにあった。パピィは影潜りであれば触れた相手も一緒に引き込めるようになっていた。
だからこそ咄嗟にルンのローブに噛みつき、影の中に引き入れ爆発をやり過ごしたのである。
そしてそれを悟らせないために一度目は思わせぶりな態度をとることで、アイテムの効果だと誤認させた。
そして二回目には影潜りでルンとやり過ごし、その後は影移動でマジルの背後に移動した。
背後からのパピィの強襲――だが、マジルは横に飛びその一撃を避けきった。
「はは、やったぞ! 貴様らは千載一遇のチャンスを不意にしたな! その手はもう二度とくわんぞ!」
「いえ、狙い通りよ」
「――何?」
怪訝な声を上げるマジル。するとルンの側に着地したパピィの影がその頭上に伸び、何かを見せびらかすように揺れ動かした。
「な! ま、まさかそれは!」
「へぇ、こんな小さい杖を持っていたんだ。ま、あんたの魔法で小さくしたのかもだけどね」
パピィがルンにそれを渡す。手のひらに収まる程度の小さな杖であった。パピィはこれを影を操りマジルの手の中から奪ってみせた。
「妙だと思ったのよ。クレイジーダイナマイトにしろディアラーゼにしろ他の魔法に比べて効果が高すぎる。そしてあんたはずっと左手を握りしめていた。それでピンっと来た。あんたが自分の意志で魔法を強化できる何かを持っているとね。それが小さくしたこの杖ってわけ。考えたわね。杖を手にしていたら効果を真っ先に疑われて奪われたり壊されるかも知れない。だから隠していた」
「あ、あぁ……」
マジルは明らかに動揺していた。そしてそれこそがルンの言っていることが正しいという証明でもあった。
「さて、この杖を失ったら貴方の回復魔法はどれぐらいにまで効果が、落ちるのかしら? そしてこの杖を使えば、私の魔法はどれぐらい、強化されるのかしらね!」
「や、やめ――」
「はぁああぁああ!」
「アオォオォォオォオォオン!」
ルンの手から生まれた巨大な火球がマジルを呑み込み、そして直後パピィの旋風爪牙で全身がズタズタに引き裂かれた。顔につけていた仮面もバラバラに砕け散り、完全に意識ごと狩られてしまっていた。回復魔法を使う様子も感じられない。
「……何だやっぱり醜悪な顔じゃない」
「ワン!」
こうして仮面が剥がれたマジルの顔は予想通り醜いものだったという――
ルン、パピィコンビ。マジルに完全勝利――
魔法による爆発を引き起こし、随分と得意になっていたマジルだったが、語りの途中で声が止まった。
いや、ぐふっ、という呻き声に変わっていた。ローブは伸びてきた影に貫かれていた。更に大量の炎の礫がマジルを蹂躙する。
「ぐはぁあぁああ!」
「どんなもんよ!」
「ワンッ!」
煙が晴れ中から姿を見せたのは平気な顔で立つルンとパピィであった。爆発のダメージもまるで感じさせない。
「ぐ、ぐふぅ、で、ディアラーゼ!」
マジルは右手を傷口に当て回復魔法を唱えた。瞬時に怪我が治り、平然と立ち上がる。これだけの傷を受けても治療できてしまうとは妙に回復力が高い。
「はぁ、はぁ、今のは少し焦ったぞ。だが、驚いたな。一体どうやった?」
「……答えるわけないじゃない」
「そうかよ――フレイムショット!」
マジルの手から火球が放たれる。しかし、それをルンは少々大げさにも感じられる動きで避けた。
その表情には焦りも感じられる。
「……なるほど。どうやら今のも一度切りだったということか。恐らく、何らかの道具……身代わり石でも持参していたか?」
ルンの眉がピクリと跳ねた。それをマジルは見逃さなかった。
「やっぱりそうか。だがあれはそう簡単に手に入るものでもない」
マジルが口にした身代わり石は文字通り死ぬような大ダメージを受けた際に身代わりになってくれる石だ。一度身代わりになると割れる消耗品でもあるが、一度は命が助かるとあって、市場価格も高く、元が希少だけに数も多くはない。
「逆に言えばそれらのアイテムに頼らないといけない程にお前らは追い詰められているということだ。その状況でよく私に偉そうなことが言えたものだな」
「……自分以外の誰かの魔法に頼らないと戦闘もこなせない人間に言われたくないわね」
「ふん、好きなだけ言え! パワーウィンド!」
「くっ!」
「ガウ!」
強風が二人に向けて吹き荒れた。飛ばされないように踏ん張るので精一杯な様子でもある。
「はは、どうだ!」
「何がどうだよ。この程度の風を起こすのがあんたの魔法? やっぱり予想通りね。さっきの爆発するのは確かに威力が高かったけど、それだけ魔力も多く消費するはず。どうせもう撃てないんでしょう?」
「――言ってろ! ウォーターガム!」
更に続けてマジルが魔法を行使。水球が飛んできてルンの足元に命中した。
「外れたわよ。一体どこを狙っているのよ」
「いや狙い通りさ」
風がやみ、マジルの声からは妙な自信が感じられた。怪訝に思うルンだったが、移動しようとしてその意味がわかった。
「これ、足が地面に引っ付いて!」
「はは、粘着性抜群のガム化する魔法だ。それでそこから動けまい」
「くっ!」
短く呻くルン。その表情には焦りが見られた。
「さて、さっき貴様はこう言ったな? 私がもう爆破の魔法は使えないと。だが残念だったな。それぐらいの余裕はまだまだあるんだよ!」
「え? 嘘?」
「ワンワン!」
「駄目パピィ来ちゃ!」
「ははは! 馬鹿め纏めてくたばれ! クレイジーダイナマイト!」
刹那二度目の爆発がルンとパピィを呑み込んだ。激しい熱と衝撃。轟音が鳴り響き、それが徐々に小さくなっていく。立ち込めた煙も少しずつ薄れていき――晴れた視界の中でルンが地面に倒れているのが見えた。
「はは、やはり次はなかったようだな! あの子犬は跡形もなく吹っ飛んだか! はは、ザマァないな!」
ピクリとも動かないルンと、完全に消えたパピィを見てマジルが歓喜の声をあげた。
「さて、早速ステータスでも見てみるか。これで私も刻印魔法が使えるように、くく」
そして自らのステータスを確認するマジルであったが。
「さて、魔法、魔法、何だと? 馬鹿な! 何故刻印魔法が!」
「そんなの生きてるからに決まってるでしょうが!」
ガバッ! とルンが上半身を起こし、突き出した杖から竜の息吹を思わせる炎を吹き出した。
「な、くそ! パワーウィンド!」
しかし、マジルは風の魔法で自らを飛ばし、ルンの炎から逃れてしまった。
「な、避けられた!?」
「はは、甘いんだよ! だが、何故だ! 何故貴様生きてる! 身代わりの石はなくしたはずだろう!」
「……ば~か。そんなの最初から持ってないわよ」
だが、疑問を投げかけるマジルに返したルンの答えはマジルの想定外のものであった。
「もって、ないだと? 馬鹿な! だったら何故!」
「パピィのおかげよ。ふふ、さて問題です。私を助けてくれたパピィは、今どこに?」
「何?」
「ワンワンワンワンワン!」
その時、影の中からパピィが飛び出し、マジルを背後から狙った。
「な、影の中だと! ま、まさか!」
ルンの口元が緩む。そう、身代わりの石などではなかった。理由はパピィの影潜りにあった。パピィは影潜りであれば触れた相手も一緒に引き込めるようになっていた。
だからこそ咄嗟にルンのローブに噛みつき、影の中に引き入れ爆発をやり過ごしたのである。
そしてそれを悟らせないために一度目は思わせぶりな態度をとることで、アイテムの効果だと誤認させた。
そして二回目には影潜りでルンとやり過ごし、その後は影移動でマジルの背後に移動した。
背後からのパピィの強襲――だが、マジルは横に飛びその一撃を避けきった。
「はは、やったぞ! 貴様らは千載一遇のチャンスを不意にしたな! その手はもう二度とくわんぞ!」
「いえ、狙い通りよ」
「――何?」
怪訝な声を上げるマジル。するとルンの側に着地したパピィの影がその頭上に伸び、何かを見せびらかすように揺れ動かした。
「な! ま、まさかそれは!」
「へぇ、こんな小さい杖を持っていたんだ。ま、あんたの魔法で小さくしたのかもだけどね」
パピィがルンにそれを渡す。手のひらに収まる程度の小さな杖であった。パピィはこれを影を操りマジルの手の中から奪ってみせた。
「妙だと思ったのよ。クレイジーダイナマイトにしろディアラーゼにしろ他の魔法に比べて効果が高すぎる。そしてあんたはずっと左手を握りしめていた。それでピンっと来た。あんたが自分の意志で魔法を強化できる何かを持っているとね。それが小さくしたこの杖ってわけ。考えたわね。杖を手にしていたら効果を真っ先に疑われて奪われたり壊されるかも知れない。だから隠していた」
「あ、あぁ……」
マジルは明らかに動揺していた。そしてそれこそがルンの言っていることが正しいという証明でもあった。
「さて、この杖を失ったら貴方の回復魔法はどれぐらいにまで効果が、落ちるのかしら? そしてこの杖を使えば、私の魔法はどれぐらい、強化されるのかしらね!」
「や、やめ――」
「はぁああぁああ!」
「アオォオォォオォオォオン!」
ルンの手から生まれた巨大な火球がマジルを呑み込み、そして直後パピィの旋風爪牙で全身がズタズタに引き裂かれた。顔につけていた仮面もバラバラに砕け散り、完全に意識ごと狩られてしまっていた。回復魔法を使う様子も感じられない。
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