侍と忍者の記憶を持ったまま転生した俺は、居合と忍法を組み合わせた全く新しいスキル『居合忍法』で無双し異世界で成り上がる!

空地大乃

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第二章 サムジャともふもふ編

第111話 サムジャはパピィが何を見たか知る

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「アンッ! アンッ!」

 さて、領主様が目覚める前に、俺はパピィが何かを必死に訴えてきていることに気がついた。

 そう言えば、パピィはハデルの後を尾けていった後、ピンチに陥っていたんだったな。

 色々ゴタゴタしていて、その時のことをまだ詳しく聞いていなかった。先ずはパピィの怪我を癒やすことも大事だったしな。

「パピィちゃん。何かを伝えようとしているみたいですね」
「へ? そうなの?」

 セイラの発言にルンも反応を示した。

「あぁ。パピィはハデルについて何かを知ったのかもしれない」

 そして俺はパピィの訴えに耳を傾ける。

「……どうやらハデルは邪教の信徒だったようだな。しかもそれなりの立場にいるのかもしれない」
「え! 邪教の?」
「……なるほど。やはりあの連中を差し向けたのはハデルだったようだな」

 話を聞きマスカは得心が行ったように頷いた。彼女は話を聞いてからずっと教会を怪しんでそうだったからな。

 教会がというよりは、ハデルが一人怪しかったといったところなんだろうけど。

「そんな、まさかあのハデル大神官が邪教徒だったなんて……」

 話を聞いたセイラは少なからずショックを受けているようだ。彼女は教会に所属する聖女だし、複雑な気持ちだろう。

「セイラ。悪いのはハデルだ。聖天教会はむしろ被害者だろう」

 ハデルが邪天教会所属なのは間違いないだろう。そう考えたらジャックとも何か関係していたのかもしれない。

「とにかく、そうと決まればすぐにでも教会に乗り込むべきではないか」

 マスカが腕を組み考えを述べた。確かにそれもそのとおりだが、素直に調べさせてくれるかが問題だ。現状はパピィから聞いたという点があるが恐らく一番手っ取り早いのは領主様に起きてもらい話を聞くことだ。
 
 そこでハデルの仕業だとわかれば正式に教会への調査許可を出してもらえることだろう。
 
「う、う~ん……」

 その時だった。領主のマルキエル伯爵がうめき声を上げ、首が揺れた。これまでの苦しげな物とは違う。

「こ、ここは、私の部屋か――」

 おお。いよいよ伯爵が目を覚ましたぞ。良かったしっかり呪いは断ち切れたようだ。

「お父様!」
「む、ミレイユか! それにメイシル、と、彼らは?」

 ミレイユが父である伯爵に飛びつき涙を流した。伯爵は戸惑っているようだが、メイシルも感慨深そうな顔を見せている。

 その後は伯爵がミレイユを落ち着かせ、これまでの出来事を彼女の口から聞いていた。

「そうか……ダミール。あの馬鹿が……奴のためにならないと援助は断ったのだが……」

 伯爵は残念そうにため息をついた。やはりダミールを信用しているようには見えないな。

「それならやはり、貴方が残した手紙というのは偽造されたものなんだな」
「当然だ。あの男に領主の代理など務まるわけがないし、私が認めるわけもない。それならミレイユに任せる。まだまだ未熟だが先を見る目は持っているからな」
「そんな、勿体ない言葉です」

 すっかり落ち着きを取り戻したミレイユが遠慮した感じに答える。

「いや、俺もそう思うぞ。領主様が倒れたことにも疑いを持ち、教会も怪しんだ。その慧眼があったからこそ、父親を助けることが出来たんだろう」
「はい。ミレイユ様はとても立派でした」
「そんな。それを言うならメイシルの協力も大きかったのですよお父様」
「うむ。色々と苦労をかけたな。やはり私の目に狂いはなかったか。メイシル本当にありがとう」
「勿体ないお言葉です」

 メイシルが恭しく頭を下げる。しかし領主様はすっかり元気を取り戻したようだ。

「ところでハデルについてなんだが」
「あぁそうだな。私もだんだんと思い出してきた。確かに私は一度体調を崩した。ただの風邪だと思ったが、そこにダミールがやってきてハデルという大神官を紹介してきた。最初は私に迷惑を掛けるようなことを言ったお詫びだという話でな」

 なるほど。あんな男でも一応は弟。しかも自分を心配してきてくれたとあれば無下には出来ない。そこを逆に付け込まれたわけだな。

「だが、そこから先は意識が朦朧としてしまい、記憶がおぼつかない。しかし、呪いか……そう聞けば納得も行く」
「お父様。それであればあのハデルという不届き者を罰するためにも、立ち入り調査の許可を。ここにいる皆さんは信頼に足る人物です」
「うむ。そうであるな。ならばすぐにでも――」
「――ワンワン! グルルルルウゥウ!」

 領主が決意した顔を見せたその時、パピィが吠え唸り声を上げた。これは――

「早くこっちへ! ミレイユも離れるんだ!」
「え?」
「何をボヤボヤしている!」

 俺はベッドに寝ていた領主を引き上げマスカもミレイユの腕を引いた。
 
 刹那――伯爵の寝ていたベッド近くの窓が割れ、火球が着弾し部屋が炎に包まれた。
 
 パピィのおかげで難を逃れたな。

「邪魔ナ人間殺ス――」
 
 そして窓と壁がふっ飛ばされ開いた穴の向こう側から声を発したのは、赤い肌をした悪魔――それを目にしたマスカが口を開く。

「ふん、レッサーデーモンか――」
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