標識しか召喚出来ない無能と蔑まれ召喚師の里から始末されかけ隣国に逃げ延びましたが、どうやら予想以上に標識の力は凄まじかったようですよ

空地大乃

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第一章 追放された召喚師編

第15話 初報酬を受け取る

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「全員溺死してるにゃ……何もないところからあんなに水が出るなんて凄まじいにゃ!」

 洞窟内に転がる盗賊の死体を見てフェレスが耳と尻尾をピーンと立てて驚いていた。
 
 水は標識から出たことになるのだろうか。とにかく標識召喚のおかげで盗賊を全滅させる事が出来た。

 その後はフェレスに聞いていた通り、盗賊の死体に冒険者証を近づけて登録していく。これでギルドに戻って盗賊を倒せた事が証明出来る筈だ。

「なんだか思ったよりあっさりだったにゃ」
「そうだね」
「それにしてもお宝もないとは残念にゃ」

 確かにアジトにはめぼしいものがなかった。次の計画を立てていたあたりからしてこれまで奪った物は全て使ってしまったのだろう。

 とは言えこれだけの盗賊を全滅させたのだからそれなりに報酬は期待できそうだね。

 帰りは途中で休憩してから標識召喚で移動した。この方が早く街に着ける。

「ほ、本当に盗賊を全滅に?」

 冒険者ギルドに向かって受付嬢に報告したけど随分と驚かれてしまった。

「はは……ま、まぁちょっと用事があって一旦離れてますが知り合いの協力もあったもので」

 本当はフェレスが協力してくれたのだけど、ここで存在が知られると後々厄介になるかもしれないからごまかしておく。

 だから報酬は後で山分けすることにして僕が代表して受け取る手筈になってると伝えたんだ。

「Fランクの段階でこれはとんでもないですよ! ここはマスターを呼んで」
「あ、あのマスターとかはちょっと。ただ一点実は砦を超えたくて、その知り合いがカシオン共和国にいて助けに呼ばれてるんです」
「え? つまり国を出ちゃうんですか」
「はい。冒険者なら問題ないですよね?」
「う~ん確かに止められないですがとりあえずマスターには聞いてみます」

 結局ギルドマスターを呼ばれてしまった。

「おう。盗賊を倒したってのはお前か」
「は、はい。今はいませんが仲間と一緒にです。それで許可は貰えますか?」

 僕としては早く切り上げたいので要求が通るか確認する。

「ふむ。よっぽど切羽詰まってるんだな。わかった。ただカシオンのリビアって町で実は俺のかつての戦友がギルドマスターやっていてな。何か困りごとがあるようなんだ。よかったら助けになってくれないか?」
「問題ないですが僕達で役に立てますか?」

 マスターに確認を取る。するとマスターがおおらかに笑った。

「これだけの盗賊を倒せる奴が何言ってやがる。ランクもEに上げておいてやったぞ。しかしその仲間はいいのか?」
「えっと実はちょっと今は顔を出せなくて。ただ僕よりはランクが上なんですが」
「そうなんだな。その助けもあってか」
「はい。なのでいいのかなって」
「問題ない。仲間に恵まれるのも一つの才能だからな。話はわかった。ついでに紹介状も書いておくよ。砦の兵士に渡す分と後はギルドに渡す分だ。俺のダチはダンバルって名前だ宜しく頼んだぜ」

 こうして盗賊退治の報酬として金貨15枚を受け取った。大金貨を混ぜるか聞かれたがフェレスと分け合う必要があるので金貨で受け取ることにした。

 この報酬は大きい。これだけあれば暫くの路銀としては十分だ。

「ありがとうございました」

 ギルドマスターにお礼を言った後ギルドを出た。今回はフェレスはギルドの外で待っていてくれた。

「報酬はどこかで分け合おうか」
「それはマークが持っていてくれていいにゃ」

 僕がフェレスに提案すると、フェレスはそれを断ってきた。こういうのはしっかりさせたほうがいいと思い、受け取ってもらうよう伝える。

「それならマークに預かっておいて欲しいにゃ。すぐに使うこともないしあたしおっちょこちょいだから大金を持ち歩くのは不安にゃ」

 フェレスがそう僕にお願いしてきた。う~ん。そういうことなら僕が預かっておいたほうがいいのかな。

「わかったよ。ただ僕としてもお金をこのまま預かるのは――何かいいのがないかな」

 頭のリストを改めて確認してみる。するとリストに新しい標識が増えているのがわかった。

 その中で目的にあった標識を見つける。

「フェレスちょっと一緒にいい?」
「何にゃ?」

 僕はフェレスと一緒に路地裏に入った。

「マーク、こ、こんなひと目につかないところで、い、一体どうするつもりにゃ?」

 フェレスが顔を赤くさせてそんなことを口にする。もしかして僕がここで変な気を起こさないかって心配してるのだろうか。

「安心して。標識の力を他の人に見られたくなかっただけだから」
「あ、そうなのかにゃ……」

 フェレスを安心させるつもりで言ったのだけど何故か声のトーンが落ちた気がした。

「それとこの標識には壁が必要なんだ。この辺りの手頃な壁に――標識召喚・ATM」

 魔法を行使すると壁に箱型のデザインが施された標識が飾られた。イラストにはATMという文字が刻まれている。

「何か出てきたにゃ!」
「うん。これドアなんだ」

 正面に立つとドアが勝手に開いた。もう一つの魂の知識から自動ドアだとわかる。

「勝手に開いたにゃ!」
「そういう仕掛けなんだ。中は狭そうだからちょっと待っててね」
「わ、わかったにゃ」

 フェレスの許可も貰い僕は自動ドアから中に足を踏み入れる。正面にはATMの機会があった。僕自身は初めて見るものだけどもう一つの知識でどんあものかわかってしまう。

 画面をタッチしてお預け入れを選んだ。とりあえず必要そうな分だけ持っておき金貨だけは全て預金する。

 ちなみに僕に流れている魔力の反応で本人かどうか確認出来るらしい。更に言えばここにあずけておけば月に1%の利息がつくらしい。

 これは1%とは言え何もないよりは嬉しいかもしれない――
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