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第二章 新天地での活躍編
第22話 新たな街にて
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兵士の許可を貰ったので、門を抜けて僕たちは新天地で初めての街に立ち入ることが出来た。
「う~ん。何か新鮮な気分にゃ~」
フェレスが爽快そうに口にし、大きく伸びをして見せた。きっと開放感もひとしおだろう。これまでずっと奴隷商人に追いかけ回されていたのだから。
「このまま冒険者ギルドに向かいたいところですが僕たちはまだ街に詳しくなくて」
「あ、そうですよね。私が案内しますので」
母親が道案内をしてくれたので冒険者ギルドまではそう時間がかからなかった。もっとも例えわからなかったとしても案内標識で何とかなったかもしれない。
やってきた冒険者ギルドは石造りの建物だった。箱型で非常にシンプルな作りだがこれぐらいの方が親しみやすいかもしれない。
僕たちは木製のドアを開けてギルドの中に入った。ドアを開ける前から喧騒が外に漏れていたが中に入るとそれが一層際立った。
時間は既に昼に近いからか食事を摂っている冒険者もいる。冒険者ギルドは酒場と併設されることが多い。またギルド自体が酒場を経営する場合もあると聞いたことがある。
仕事を終えた後すぐに酒を飲みたいと考える冒険者が多いからだ。また昼にしてもやはり仕事を終えればお腹も空く。だから食事も提供し冒険者相手の商売で利益を上げているのだと思う。
「うん? 見たこともない連中だな」
「新入りかい? 何かわからないことがあったら聞けよ!」
「にゃ! 凄いにゃ。てっきりギルドに入った途端絡まれたり因縁をつけられるかと思ったのに何だか新鮮にゃ……」
フェレスを見ると目をパチクリさせていた。とんでもないことを言ってるようにも見えるけど他種族への差別が激しいあの王国なら十分ありえるだろうね。
しかし確かにここの冒険者は気さくな人が多そうだ。酒場では既に呑んで出来上がってる人もいるけど、悪い酔い方ではなく陽気に肩を抱き合って歌っていたり踊っていたりと見ていても何となく楽しい気分になる。
「冒険者同士の喧嘩もないにゃ」
「いや嬢ちゃんそれはまぁわりとあるぞ。ま、じゃれ合ってるようなもんだがな」
フェレスの声が聞こえたのか遠くから恰幅のいい冒険者が答えてくれた。とは言えそこまで酷い喧嘩になるわけでもないのだろう。
僕たちは周りの冒険者に軽く挨拶を交わしながらカウンターに向かった。
「いらっしゃませ。ギルドは初めてですか? もし冒険者登録希望でしたらこちらで受け付けますし仕事をお探しでしたらご案内も可能です」
凄く丁重な応対をされた。僕とフェレスは自分たちが既に冒険者なことを伝え。その上一緒に来ている二人の事情も説明した。
「そうですかゴブリンにそれは……お悔やみ申し上げます」
「お気遣い痛み入ります。それであの手続きを進ませていただくことは?」
「はい。ではあちらに専門の受付嬢がおりますのでご案内致しますね」
そして受付嬢の案内で母娘は別の窓口に通された。ここから先は母娘の問題でもある。
「お兄ちゃん、お姉ちゃんありがとう」
「本当にありがとうございました」
母娘からはお礼を言われた。フェレスも助けてよかったと安堵している。
「さて、お二人にもゴブリンを退治したことで報酬が出ます」
受付嬢からそう聞かされた。説明の段階で冒険者証を渡しておいたのでゴブリンを倒したことが確認出来たのだろう。だからこそ母娘の手続きもスムーズに進んだのだけど。
「ありがとうございます。それと実は僕たちこういった物を預かっていて――」
僕は受付嬢に紹介状を手渡した。すると目を丸くした受付嬢が、少々お待ちを、と言って席を離れた。
それから暫くして――
「おや驚いた。アークスの紹介と聞いていたけどこんなに若いとはね。いやそれだけ将来性があるということかな」
受付嬢と一緒にやってきたのは臙脂色の髪の毛を少しだけ後ろで束ね鼻眼鏡をした男性だった。アークスと違いゆったりとしたローブに杖といった出で立ちでいかにも熟練した魔法師といった印象。この人がここのギルドマスターのダンバルなんだね――
「う~ん。何か新鮮な気分にゃ~」
フェレスが爽快そうに口にし、大きく伸びをして見せた。きっと開放感もひとしおだろう。これまでずっと奴隷商人に追いかけ回されていたのだから。
「このまま冒険者ギルドに向かいたいところですが僕たちはまだ街に詳しくなくて」
「あ、そうですよね。私が案内しますので」
母親が道案内をしてくれたので冒険者ギルドまではそう時間がかからなかった。もっとも例えわからなかったとしても案内標識で何とかなったかもしれない。
やってきた冒険者ギルドは石造りの建物だった。箱型で非常にシンプルな作りだがこれぐらいの方が親しみやすいかもしれない。
僕たちは木製のドアを開けてギルドの中に入った。ドアを開ける前から喧騒が外に漏れていたが中に入るとそれが一層際立った。
時間は既に昼に近いからか食事を摂っている冒険者もいる。冒険者ギルドは酒場と併設されることが多い。またギルド自体が酒場を経営する場合もあると聞いたことがある。
仕事を終えた後すぐに酒を飲みたいと考える冒険者が多いからだ。また昼にしてもやはり仕事を終えればお腹も空く。だから食事も提供し冒険者相手の商売で利益を上げているのだと思う。
「うん? 見たこともない連中だな」
「新入りかい? 何かわからないことがあったら聞けよ!」
「にゃ! 凄いにゃ。てっきりギルドに入った途端絡まれたり因縁をつけられるかと思ったのに何だか新鮮にゃ……」
フェレスを見ると目をパチクリさせていた。とんでもないことを言ってるようにも見えるけど他種族への差別が激しいあの王国なら十分ありえるだろうね。
しかし確かにここの冒険者は気さくな人が多そうだ。酒場では既に呑んで出来上がってる人もいるけど、悪い酔い方ではなく陽気に肩を抱き合って歌っていたり踊っていたりと見ていても何となく楽しい気分になる。
「冒険者同士の喧嘩もないにゃ」
「いや嬢ちゃんそれはまぁわりとあるぞ。ま、じゃれ合ってるようなもんだがな」
フェレスの声が聞こえたのか遠くから恰幅のいい冒険者が答えてくれた。とは言えそこまで酷い喧嘩になるわけでもないのだろう。
僕たちは周りの冒険者に軽く挨拶を交わしながらカウンターに向かった。
「いらっしゃませ。ギルドは初めてですか? もし冒険者登録希望でしたらこちらで受け付けますし仕事をお探しでしたらご案内も可能です」
凄く丁重な応対をされた。僕とフェレスは自分たちが既に冒険者なことを伝え。その上一緒に来ている二人の事情も説明した。
「そうですかゴブリンにそれは……お悔やみ申し上げます」
「お気遣い痛み入ります。それであの手続きを進ませていただくことは?」
「はい。ではあちらに専門の受付嬢がおりますのでご案内致しますね」
そして受付嬢の案内で母娘は別の窓口に通された。ここから先は母娘の問題でもある。
「お兄ちゃん、お姉ちゃんありがとう」
「本当にありがとうございました」
母娘からはお礼を言われた。フェレスも助けてよかったと安堵している。
「さて、お二人にもゴブリンを退治したことで報酬が出ます」
受付嬢からそう聞かされた。説明の段階で冒険者証を渡しておいたのでゴブリンを倒したことが確認出来たのだろう。だからこそ母娘の手続きもスムーズに進んだのだけど。
「ありがとうございます。それと実は僕たちこういった物を預かっていて――」
僕は受付嬢に紹介状を手渡した。すると目を丸くした受付嬢が、少々お待ちを、と言って席を離れた。
それから暫くして――
「おや驚いた。アークスの紹介と聞いていたけどこんなに若いとはね。いやそれだけ将来性があるということかな」
受付嬢と一緒にやってきたのは臙脂色の髪の毛を少しだけ後ろで束ね鼻眼鏡をした男性だった。アークスと違いゆったりとしたローブに杖といった出で立ちでいかにも熟練した魔法師といった印象。この人がここのギルドマスターのダンバルなんだね――
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