標識しか召喚出来ない無能と蔑まれ召喚師の里から始末されかけ隣国に逃げ延びましたが、どうやら予想以上に標識の力は凄まじかったようですよ

空地大乃

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第二章 新天地での活躍編

第43話 真犯人

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「まさか、あの洞窟の壁が崩れたのも全て貴方の仕業だったのですか?」

 格子の向こう側に立つアグレイに問いかけた。とはいえ我ながら間の抜けた質問だとは思う。

 この状況では疑いようがない。違うといったところでここに自分を閉じ込めた以上無関係である筈もない。

「今更気がつくとは鈍い奴だな」

 アグレイが唇を歪めて答えた。これで確実に真犯人が判明した。同時に腹も立った。

 これまで散々僕を疑う発言を繰り返してきたけど、疑っていた本人がこの自体を引き起こした張本人だったのである。

「全く。自分の馬鹿さ加減に嫌になるよ。だけど、一体どうやってこれだけのゴブリンを使役したんだい」
「そんなもの俺が魔物使いだからに決まってるだろう」

 アグレイがニヤリと不敵な笑みを零した。魔物使い――アニンは獣を使役する獣使いだったがこの男は魔物を使役する魔物使いだったということか。

「狩人と語っていたのは偽りだったのか」
「別にそれも嘘じゃないさ。確かに元は狩人だったわけだしな」

 元は狩人――つまり魔物使いになれたのは後から手にした力によるものということか。

 どちらにしても魔物使いであることを隠していた理由は明白だろう。当たり前だけどゴブリンが突如溢れたタイミングで魔物使いだと言えばアグレイは間違いなく犯人候補に上がっていたことだろうし。

「おしゃべりはここまでだ。そのゴブリンジャイアントはパワーだけならゴブリンロードをも凌ぐ。それが三体もいるんだお前一人じゃどうしようもないだろうさ」

 通常種のゴブリンとは比べ物にならないほどの巨体を誇るゴブリンジャイアントが詰め寄ってきた。

 見上げるほど高く、一歩歩くだけでも一気に距離が近づく。迷ってる暇はない。僅かな逡巡も命取りになることだろう。

「グォォオォォオォオオ!」

 ゴブリンジャイアントの一体が腕を振り回してきた。そのまま竜巻でも発生するんじゃないかと思える程の勢いだ。

「標識召喚・指定方向以外禁止!」

 そんな中、僕が選んだ標識はこれだ。矢印の描かれた標識で効果は相手の行動を指定した方向に限定させる。

 つまり僕に向けられたゴブリンジャイアントの攻撃の方向も強制的に変えられることとなり――

「ガッ!?」
「ンゴ?」

 見事にゴブリンジャイアントが仲間に攻撃を加えた。やられた方も攻撃した方も驚き戸惑っていた。

「馬鹿! 何味方を攻撃してやがる!」

 アグレイが叫んだ。しかしその後続けて攻撃を仕掛けてていたゴブリンジャイアントも僕の標識効果で攻撃の軌道が変わり次々と同士討ちとなり、遂には互いに切れて標識の力なくとも仲間同士による殴り合いに発展してしまった。

「くっ、されはそれも召喚魔法の力か。サポートするだけが能じゃなかったのかよ!」

 悔しそうなアグレイの声が聞こえた。そうか多少は標識召喚による攻撃も試みていたけど、基本サポートに回ることが多かった。

 だからアグレイは僕の魔法は直接攻撃に向いていないと判断したのだろう。

「そうだ! お前ら同時だ! 同時に攻撃しろ! そいつの魔法も数には勝てない筈だ!」

 アグレイがゴブリンジャイアントに命じた。いい点をついてると思う。標識は同時に二つしか召喚出来ない。

 三方向からこられたら今の標識だけで対応するのは確かに難しい。

 だけど僕の標識はその一つだけではない。賭けに近いけど――

「標識召喚・飛び出し注意!」

 前も使った標識だけど、危険標識と同じくランダム要素が強いようで標識に描かれたマークで何が出るか決まるようだけど――

「な、なんだよこれ――」

 標識に描かれていたのは巨大なイモムシのような模様だった。そして出てきたのは絵柄通りの巨大なイモムシ型の魔獣――ワームだった。

 地下に存在する凶悪な魔獣だが、この状況では心強い。出現したワームはあっという間にゴブリンジャイアント三体を丸呑みして土中に潜っていった――
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