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2話 救世の聖女
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私の頭は混乱した。このゲームはトキメキ学園だったはずだ。だけどパクリゲームのドキドキ学園のメイン攻略対象であるラインハルトもいる。
それに、私の中にある記憶はラインハルトを隣国の王子とちゃんと認識していた。
つまり、この世界は、この国がトキメキ学園で隣国がドキドキ学園の舞台だったのだ。
「お前こそ誰に剣を向けている。俺はこの国の王子だぞ?」
レオンは首筋に突きつけられた細剣をジロリと睨みつけ鼻で笑う。斬りつける気がない細剣を邪魔だと左手で弾いてレオンは私の拘束を解いた。
「姫を助けるのは王子の役目だからね」
ラインハルトはそう言うと細剣を鞘に収めると両手を上げてこれ以上戦う気がないことを示した。
だが邪魔をされたレオンの気はおさまらず、左手の手袋を外すとラインハルトに投げつけた。
「決闘だ!」
「本気かい? 僕と君が決闘なんかしたら、それこそ問題になると思うのだけれど?」
「臆したかラインハルト、さっさと手袋を拾い決闘を受諾しろ」
「こんなことをしてなんの意味があるののかい?」
「意味はある! お前がクラリスに気があるのは知っている。婚約者として邪魔者を排除するのは当然だろうが!」
「その婚約者様とやらはクラリスから嫌われているようですけど?」
そう言うとラインハルトは足元に落ちたレオンの手袋を拾った。決闘は受諾されたのだ。
このままではどちらに転んでも戦争は避けられない。自国の王子が決闘で負けたとなれば国民は王室への信頼を無くす。
失った信頼を取り戻すためには戦争で勝つしかないのだ。
戦争は私的にもNGだ。平和な世の中で悠々自適に暮らしたいから。
「貴様、人の婚約者を馴れ馴れしく名前で呼ぶとは……」
レオンとラインハルトが同時に細剣を抜く。私は咄嗟にレオンの腰の短剣を奪い二人の間に入り切先を自分の喉仏に押し付けた。
「これ以上、私のために争わないでください! 原因は……、悪いのは私です、どうかお二人とも仲良く――」
「クラリスなにを!」
「クラリスおやめください!」
短剣を握る手に力が入る。だが短剣は私の首を貫くことはなかった。
二人が細剣を捨て素手で刃を握りしめ私の命を救ったのだ。短剣の切先からポタポタと血が流れ落ちる。
それは刃を握ってきれた二人の血だった。
その血が私の服にかかり純白のドレスを朱色に染め上げる。
私が短剣から手を離し右手で刃を握ると肌が切れた痛みが伝わってきた。私の手から流れ落ちる血が二人の血と混じり合う。
なにが起きたのか理解できなかった二人はすぐに私の手を短剣から離させる。
短剣はカランと音をたてて地面に落ちた。短剣を離した血塗れの手で二人の手を取り、上から合わせた。
「今、私の血と二人の血が混じり合い、レオン様とラインハルト様は兄弟になられました。ですから、どうかお二人とも仲良くしてくださいまし」
これは賭けだった。トキメキ学園 花の貴公子で語られる伝説の一節を再現したのだ。
昔、海の神と大地の神は一人の少女を巡って争っていた。海は津波を起こし陸を削り、大地は地を噴火させ海を奪った。
当然、天変地異に人々は困惑し、恐ろしい災害の前に人はなすすべなく死んでいった。
少女は喧嘩をする神の前に跪き、短剣を自らの喉の刺すと自死をした。
少女の血は大地に染み、海に流れた。彼女は死の間際に言った。
『私の血が混じり合い、お二方は兄弟になられました。ですからどうか仲良くしてくださいまし』
その言葉を最後に少女は事切れた。
大地の神と海の神は少女を失い気がついた、自分達がいかに愚かだったかを。
だが、それに気がついた時には愛しの君はすでにいない。
二体の神は少女を失った悲しみでの心を閉ざした。そして大地や海は凍った。
それを不憫に思った太陽の神が少女の魂を神にして蘇られた。空の神として。
二体の神は泣いた。大地の神の涙は川となり、海の神の涙は空に上り雨となって氷を溶かした。
かくして人々は救われ、少女は救世の聖女と言われ語り継がれた。
誰でも知っているお伽話、私はそれを利用して二人の争いを止めたのだ。
「聖女だ! 救世の聖女の再来だ!!」
「聖女様だわ! クラリス様は聖女様だわ!」
どこに隠れていたのか、成り行きを身もっていた貴族の子弟たちがクラリスの行動を見て騒ぎ出す。
おしゃべりな貴族の子弟たちにより、その日のうちのこの話は全校生徒。
いや、それを飛び越え国王陛下までに伝わり、私はその日、救世の聖女となった。
それに、私の中にある記憶はラインハルトを隣国の王子とちゃんと認識していた。
つまり、この世界は、この国がトキメキ学園で隣国がドキドキ学園の舞台だったのだ。
「お前こそ誰に剣を向けている。俺はこの国の王子だぞ?」
レオンは首筋に突きつけられた細剣をジロリと睨みつけ鼻で笑う。斬りつける気がない細剣を邪魔だと左手で弾いてレオンは私の拘束を解いた。
「姫を助けるのは王子の役目だからね」
ラインハルトはそう言うと細剣を鞘に収めると両手を上げてこれ以上戦う気がないことを示した。
だが邪魔をされたレオンの気はおさまらず、左手の手袋を外すとラインハルトに投げつけた。
「決闘だ!」
「本気かい? 僕と君が決闘なんかしたら、それこそ問題になると思うのだけれど?」
「臆したかラインハルト、さっさと手袋を拾い決闘を受諾しろ」
「こんなことをしてなんの意味があるののかい?」
「意味はある! お前がクラリスに気があるのは知っている。婚約者として邪魔者を排除するのは当然だろうが!」
「その婚約者様とやらはクラリスから嫌われているようですけど?」
そう言うとラインハルトは足元に落ちたレオンの手袋を拾った。決闘は受諾されたのだ。
このままではどちらに転んでも戦争は避けられない。自国の王子が決闘で負けたとなれば国民は王室への信頼を無くす。
失った信頼を取り戻すためには戦争で勝つしかないのだ。
戦争は私的にもNGだ。平和な世の中で悠々自適に暮らしたいから。
「貴様、人の婚約者を馴れ馴れしく名前で呼ぶとは……」
レオンとラインハルトが同時に細剣を抜く。私は咄嗟にレオンの腰の短剣を奪い二人の間に入り切先を自分の喉仏に押し付けた。
「これ以上、私のために争わないでください! 原因は……、悪いのは私です、どうかお二人とも仲良く――」
「クラリスなにを!」
「クラリスおやめください!」
短剣を握る手に力が入る。だが短剣は私の首を貫くことはなかった。
二人が細剣を捨て素手で刃を握りしめ私の命を救ったのだ。短剣の切先からポタポタと血が流れ落ちる。
それは刃を握ってきれた二人の血だった。
その血が私の服にかかり純白のドレスを朱色に染め上げる。
私が短剣から手を離し右手で刃を握ると肌が切れた痛みが伝わってきた。私の手から流れ落ちる血が二人の血と混じり合う。
なにが起きたのか理解できなかった二人はすぐに私の手を短剣から離させる。
短剣はカランと音をたてて地面に落ちた。短剣を離した血塗れの手で二人の手を取り、上から合わせた。
「今、私の血と二人の血が混じり合い、レオン様とラインハルト様は兄弟になられました。ですから、どうかお二人とも仲良くしてくださいまし」
これは賭けだった。トキメキ学園 花の貴公子で語られる伝説の一節を再現したのだ。
昔、海の神と大地の神は一人の少女を巡って争っていた。海は津波を起こし陸を削り、大地は地を噴火させ海を奪った。
当然、天変地異に人々は困惑し、恐ろしい災害の前に人はなすすべなく死んでいった。
少女は喧嘩をする神の前に跪き、短剣を自らの喉の刺すと自死をした。
少女の血は大地に染み、海に流れた。彼女は死の間際に言った。
『私の血が混じり合い、お二方は兄弟になられました。ですからどうか仲良くしてくださいまし』
その言葉を最後に少女は事切れた。
大地の神と海の神は少女を失い気がついた、自分達がいかに愚かだったかを。
だが、それに気がついた時には愛しの君はすでにいない。
二体の神は少女を失った悲しみでの心を閉ざした。そして大地や海は凍った。
それを不憫に思った太陽の神が少女の魂を神にして蘇られた。空の神として。
二体の神は泣いた。大地の神の涙は川となり、海の神の涙は空に上り雨となって氷を溶かした。
かくして人々は救われ、少女は救世の聖女と言われ語り継がれた。
誰でも知っているお伽話、私はそれを利用して二人の争いを止めたのだ。
「聖女だ! 救世の聖女の再来だ!!」
「聖女様だわ! クラリス様は聖女様だわ!」
どこに隠れていたのか、成り行きを身もっていた貴族の子弟たちがクラリスの行動を見て騒ぎ出す。
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