ヤンデレな後輩社員に懐かれてしまった件

永久保セツナ

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第8話 ヤンデレな後輩と遊園地に行った件

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第8話 ヤンデレな後輩と遊園地に行った件

 週末。
 私は九段坂と約束した通り、デートすることになった。
 場所は遊園地。広大な敷地にメリーゴーランドやら観覧車やらジェットコースターやら、遊具がこれでもかと詰め込まれている、夢の宝石箱だ。
「まずはどこに行きましょうか、先輩?」
 キャップをかぶり、Tシャツにパーカー姿の九段坂が私に声をかける。インドア派の印象がある九段坂にしては新鮮な格好だ。
「最初はゆったりしたいかな」
「じゃあ、コーヒーカップなんかどうでしょう」
 九段坂は自然体で私の手を引く。手を繋ぐのはだいぶ慣れてきたようだった。
 しばらくまったりできる乗り物をいくつか乗る。乗っている最中も、九段坂は私の手を握ったり、さわさわと手の甲に触れたりしていた。彼に目をやると、はにかんだ笑顔を向けてくる。うむ、愛い後輩だ。
 次の乗り物を探そうと、マップを見ていると、「カップルのお客様ですか?」と、不意にスタッフに声を掛けられる。
「いや、カップルでは――」
「そうです!」
 私の言葉を遮るように、九段坂が元気よく返事をする。驚いて彼を見ると、九段坂はふんすっ、と言った様子でご満悦であった。うーん……まあいいか。
「カップルの方向けに簡単な催し物がありまして……」
 話を聞くと、どうやらカップルの片割れにクイズを出題し、もう片方のことをどれだけ詳しく知っているか、というイベントらしい。内容によってはカップルの存続の危機のような気もするが、まあ私たちはそもそもカップルじゃないし大丈夫だろう。
「それでは彼氏さんに質問です! 彼女さんの血液型は?」
「A型」
「彼女さん、正解ですか?」
「正解です」
 私はスタッフに渡され、あらかじめ正解を書いたボードを見せた。
「素晴らしい! では次の問題、彼女さんの誕生日は?」
「9月27日天秤座、1時59分」
「……? 1時59分?」
「私が生まれた時間ですね」
「えっ……キモ……じゃなくて、すごく詳しいですね!」
 遊園地のスタッフは、やや引き気味になりながら笑顔で進行を続ける。
 それにしても、血液型も誕生日も星座も生まれた時間も、九段坂に教えた覚えがないのが不思議だった。
 結局、九段坂は全ての設問に完璧に正解し、スタッフはドン引きしていた。
「え、ええと……全問正解、お見事でした!」
「これで終わりですか? なんなら先輩のホクロの数だって答えられますよ」
「いえ、そこまでしなくていいです! 黙って賞品を受け取ってください!」
 スタッフは震えながら賞品を手渡す。
「これは……?」
「全問正解したお客様にはホテルの無料券をお配りしております」
 どうやらこの遊園地に併設されている提携ホテルの宿泊券らしかった。
「ほ、ホテル……!? せ、先輩と念願のホテル……!」
「よかったな、九段坂くん」
 前回のデートといい、九段坂はホテルが好きらしい。もしかしたら趣味でホテルのレビュアーとかしてるのかもしれない。
「先輩! 早速行ってみましょう!」
「パレードとか見なくていいのか?」
「そんなんどうでもいいです」
 九段坂はバッサリと切り捨てる。ホテルに対する情熱がすごい。
 特に断る理由もないので、九段坂についていくことにした。
 ホテルの部屋は、遊園地のキャラクターのぬいぐるみなどが置かれた、実にファンシーな内装だった。可愛いもの好きな女の子ならとても喜ぶだろう。
「ほう、ベッドもフカフカだな」
 家の布団ではこうはいくまい、おそらく高級な羽毛布団に座ると、もう立てないのではと思うほど身体が沈む。
 布団から顔を上げると、九段坂の顔が眼前に迫っていた。頬を紅潮させ、心做しか息が荒い。
「どうした、九段坂くん?」
「せっ、先輩……おれ、もう……」
 九段坂の切羽詰まった声に疑問を抱く暇もなく、ガバッと押し倒される。二人で柔らかいベッドに沈んでいく。
「おいおい、九段坂くん。いくらホテルが好きだからって興奮しすぎだろう」
 私を押さえつける九段坂の手を引き剥がし、横にゴロンと転がす。
「え……?」
 コロンと転がされた九段坂は、呆気に取られたようなキョトンとした顔をしていた。
「せ、先輩……? 俺、結構力を込めてたつもりなんですけど……」
「こう見えて結構鍛えてるんだ」
 実は誰にも言っていないが、週末にはジムに通っている。筋力トレーニングで身体が引き締まるのを実感するのはとても楽しい。
「このベッド、なかなかいいね。九段坂くんのお眼鏡にはかなったかな?」
「お眼鏡……? はあ、まあ、先輩と並んで寝っ転がるのは至福のひとときですけど……」
 九段坂にとっては星いくつ程度の評価なのだろう。
 今度オススメのビジネスホテルとか教えてほしいかもしれない。

 ――とまあ、結局その日のデートはホテルのベッドを堪能して日帰りで帰ったわけである。明日から会社なので泊まるわけにもいかなかったのだ。九段坂は何故かなで肩になるくらい肩を落としていたのであった。

〈続く〉 
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