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ミニマム・モンキーの逆襲(一話読み切り)
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「いらっしゃい、いらっしゃい。可愛い可愛いミニマム・モンキーが入荷したよ」
とある街のペットショップ。店主が呼び込みをすると、動物大好きな子供たちが駆け寄ってくる。
今日の目玉のペットケージには『ミニマム・モンキー』と書かれた名札が貼ってある。
「出せ! ここから出せ!」
ケージの檻を囚人のように揺さぶっているのは、小さな猿。これがミニマム・モンキーだ。
ミニマム・モンキーはとっても賢い猿の一種。人間の言葉を覚えるし、簡単な計算をしたり、道具を使ったりすることも出来る。子供たちの人気者だ。
「ねえママ、僕この子欲しい!」
小学生のタイチくんはすっかりこのミニマム・モンキーに夢中だ。
「ええ? ダメよ、ペットなんて」
「お願い、一生のお願い!」
「タイチは一生のお願いを何度使ってきたのかしらね」
ママは呆れた顔で笑っている。
「だって、友達みんなミニマム・モンキーを飼ってるんだもの。僕も友達とバトモンしたい!」
巷ではミニマム・モンキーに武器を持たせて戦わせる闘猿(バトルモンキー)が流行っているのだ。略してバトモン。ちなみにミニマム・モンキーはミニモンと略される。
「しょうがないわねぇ。ちゃんと命を大切に飼うのよ」
「うん! ママのお手伝いもちゃんとする!」
ママに許可をもらって、タイチくんは大喜びだ。
「毎度あり」
「離せ! 俺に触るな!」
店主がミニマム・モンキーをケージから出すと、ミニマム・モンキーは暴れ出す。でも、ミニマム・モンキーは足が遅いし力も弱い。おまけに猿のくせに木登りも下手くそなんだ。店主の手の中で暴れてもちっとも痛くないので、店主は平気な顔で新しいケージにミニマム・モンキーを移した。
「それにしても、随分口の悪いお猿さんねえ」
ママは教育上大丈夫かしら、と首を傾げた。
「へえ、タイチもミニモン買ったんだ」
翌日、タイチくんの家には友達が集まった。友達の中にはタイチくんと同じようにミニマム・モンキーを飼っている子もいて、ケージを持ち寄ってワイワイと喋っている。
「ミニモンって本当に毛がないんだね」
ミニマム・モンキーを飼っていないおうちの子は物珍しげにミニマム・モンキーを見つめている。ミニマム・モンキーは一部を除いてほとんど毛が生えていない。その分、寒さをしのぐためなのか、彼らはケージの中にある新聞紙や綿なんかを使って器用に服を作って身に纏う習性があるのだ。
「なあなあ、タイチのミニモンと俺のミニモンでバトルしようぜ!」
友達のカズヤくんがケージから自分の飼っているミニマム・モンキーを取り出す。
「いいけど、怪我しないかな」
「するに決まってるだろ、バトルなんだから」
「ええ? じゃあダメだよ、命は大切にってママに言われてるんだ」
「ちぇっ、なんだよ、意気地なし」
カズヤくんはつまらなそうに口を尖らせる。
「ねえ、タイチくんのミニモン、触ってもいい?」
友達のサオリちゃんがタイチくんに尋ねた。
「いいよ」
タイチくんはサオリちゃんが好きだから、ミニモンを飼っていて良かったと心の底から思ったそうだ。
そうして、タイチくんはケージからミニマム・モンキーを取り出したが、
「イテッ」
ミニマム・モンキーはタイチくんの手を思いっきり噛んだのだ。
ミニマム・モンキーに噛まれてびっくりしたタイチくんは思わず手を放してミニマム・モンキーを逃がしてしまった。
「何やってんだよ、タイチ!」
「ご、ごめん。いきなり噛まれたから……」
「それより、早く捕まえなくちゃ!」
タイチくんたちはミニマム・モンキーを追いかける。ミニマム・モンキーは足は遅いが身体が小さいので狭い隙間にも入り込める。あっという間に見失ってしまった。
「ど、どうしよう。ママに怒られちゃう!」
「外に逃げ出す前に家の中で捕まえるんだ!」
「どうやって?」
「餌で誘い出してみたらどうかしら」
そんなわけでタイチくんたちはバナナを用意してみたが、ミニマム・モンキーは賢いのでそんなあからさまな罠には引っかからない。
さて、ミニマム・モンキーは何処に行ったかというと、パパの寝ている寝室に迷い込んでいた。ベッドによじ登り、サイドテーブルにたどり着くと、パパがタバコを吸うのに使っているライターやマッチが置いてある。
「ライター……はダメだ、俺には大きすぎて扱えない。マッチならいけるか……?」
ミニマム・モンキーは、マッチをこすって火をつけると、そのまま火のついたマッチをベッドに放り投げた。
「ぐー……ぐー……ん? アチチチ! な、なんだ!?」
ベッドでグースカ眠っていたパパは、熱さで飛び起きる。
「うわあ、火事だ!」
パパは慌てて消火器で火を消し止めようとするが、燃え広がった炎はもう消すことが出来ない。
「ざまあみろ!」
ミニマム・モンキーは手を叩いて笑っている。
「こ、この猿! なんてことをするんだ!」
「それはこっちのセリフだ、この化け物ども! 俺たち人間をペット扱いしやがって!」
「猿のくせに人間を名乗るなんて生意気な!」
「俺たちは人間だ! 突然地球に現れて我が物顔で支配者を気取ってるのはそっちだろ!」
ミニマム・モンキーはそのまま寝室を飛び出して、マッチで家のあちこちに火をつけていく。
ミニマム・モンキーを捜していたタイチくんたちはびっくり仰天。パパを手伝って消火活動をしていたが、これは無理だと諦めて家族と友達みんなで家から逃げ出した。
タイチくんの家から発生した火事は、隣の家にも燃え移り、やがて街全体が大火事になった。その隙にミニマム・モンキーはケージから仲間たちを救出し、街から脱出したそうな。
しかし、ミニマム・モンキーたちが一斉蜂起して巨人たちに逆襲するのは、ここから始まる話なのである。
〈了〉
とある街のペットショップ。店主が呼び込みをすると、動物大好きな子供たちが駆け寄ってくる。
今日の目玉のペットケージには『ミニマム・モンキー』と書かれた名札が貼ってある。
「出せ! ここから出せ!」
ケージの檻を囚人のように揺さぶっているのは、小さな猿。これがミニマム・モンキーだ。
ミニマム・モンキーはとっても賢い猿の一種。人間の言葉を覚えるし、簡単な計算をしたり、道具を使ったりすることも出来る。子供たちの人気者だ。
「ねえママ、僕この子欲しい!」
小学生のタイチくんはすっかりこのミニマム・モンキーに夢中だ。
「ええ? ダメよ、ペットなんて」
「お願い、一生のお願い!」
「タイチは一生のお願いを何度使ってきたのかしらね」
ママは呆れた顔で笑っている。
「だって、友達みんなミニマム・モンキーを飼ってるんだもの。僕も友達とバトモンしたい!」
巷ではミニマム・モンキーに武器を持たせて戦わせる闘猿(バトルモンキー)が流行っているのだ。略してバトモン。ちなみにミニマム・モンキーはミニモンと略される。
「しょうがないわねぇ。ちゃんと命を大切に飼うのよ」
「うん! ママのお手伝いもちゃんとする!」
ママに許可をもらって、タイチくんは大喜びだ。
「毎度あり」
「離せ! 俺に触るな!」
店主がミニマム・モンキーをケージから出すと、ミニマム・モンキーは暴れ出す。でも、ミニマム・モンキーは足が遅いし力も弱い。おまけに猿のくせに木登りも下手くそなんだ。店主の手の中で暴れてもちっとも痛くないので、店主は平気な顔で新しいケージにミニマム・モンキーを移した。
「それにしても、随分口の悪いお猿さんねえ」
ママは教育上大丈夫かしら、と首を傾げた。
「へえ、タイチもミニモン買ったんだ」
翌日、タイチくんの家には友達が集まった。友達の中にはタイチくんと同じようにミニマム・モンキーを飼っている子もいて、ケージを持ち寄ってワイワイと喋っている。
「ミニモンって本当に毛がないんだね」
ミニマム・モンキーを飼っていないおうちの子は物珍しげにミニマム・モンキーを見つめている。ミニマム・モンキーは一部を除いてほとんど毛が生えていない。その分、寒さをしのぐためなのか、彼らはケージの中にある新聞紙や綿なんかを使って器用に服を作って身に纏う習性があるのだ。
「なあなあ、タイチのミニモンと俺のミニモンでバトルしようぜ!」
友達のカズヤくんがケージから自分の飼っているミニマム・モンキーを取り出す。
「いいけど、怪我しないかな」
「するに決まってるだろ、バトルなんだから」
「ええ? じゃあダメだよ、命は大切にってママに言われてるんだ」
「ちぇっ、なんだよ、意気地なし」
カズヤくんはつまらなそうに口を尖らせる。
「ねえ、タイチくんのミニモン、触ってもいい?」
友達のサオリちゃんがタイチくんに尋ねた。
「いいよ」
タイチくんはサオリちゃんが好きだから、ミニモンを飼っていて良かったと心の底から思ったそうだ。
そうして、タイチくんはケージからミニマム・モンキーを取り出したが、
「イテッ」
ミニマム・モンキーはタイチくんの手を思いっきり噛んだのだ。
ミニマム・モンキーに噛まれてびっくりしたタイチくんは思わず手を放してミニマム・モンキーを逃がしてしまった。
「何やってんだよ、タイチ!」
「ご、ごめん。いきなり噛まれたから……」
「それより、早く捕まえなくちゃ!」
タイチくんたちはミニマム・モンキーを追いかける。ミニマム・モンキーは足は遅いが身体が小さいので狭い隙間にも入り込める。あっという間に見失ってしまった。
「ど、どうしよう。ママに怒られちゃう!」
「外に逃げ出す前に家の中で捕まえるんだ!」
「どうやって?」
「餌で誘い出してみたらどうかしら」
そんなわけでタイチくんたちはバナナを用意してみたが、ミニマム・モンキーは賢いのでそんなあからさまな罠には引っかからない。
さて、ミニマム・モンキーは何処に行ったかというと、パパの寝ている寝室に迷い込んでいた。ベッドによじ登り、サイドテーブルにたどり着くと、パパがタバコを吸うのに使っているライターやマッチが置いてある。
「ライター……はダメだ、俺には大きすぎて扱えない。マッチならいけるか……?」
ミニマム・モンキーは、マッチをこすって火をつけると、そのまま火のついたマッチをベッドに放り投げた。
「ぐー……ぐー……ん? アチチチ! な、なんだ!?」
ベッドでグースカ眠っていたパパは、熱さで飛び起きる。
「うわあ、火事だ!」
パパは慌てて消火器で火を消し止めようとするが、燃え広がった炎はもう消すことが出来ない。
「ざまあみろ!」
ミニマム・モンキーは手を叩いて笑っている。
「こ、この猿! なんてことをするんだ!」
「それはこっちのセリフだ、この化け物ども! 俺たち人間をペット扱いしやがって!」
「猿のくせに人間を名乗るなんて生意気な!」
「俺たちは人間だ! 突然地球に現れて我が物顔で支配者を気取ってるのはそっちだろ!」
ミニマム・モンキーはそのまま寝室を飛び出して、マッチで家のあちこちに火をつけていく。
ミニマム・モンキーを捜していたタイチくんたちはびっくり仰天。パパを手伝って消火活動をしていたが、これは無理だと諦めて家族と友達みんなで家から逃げ出した。
タイチくんの家から発生した火事は、隣の家にも燃え移り、やがて街全体が大火事になった。その隙にミニマム・モンキーはケージから仲間たちを救出し、街から脱出したそうな。
しかし、ミニマム・モンキーたちが一斉蜂起して巨人たちに逆襲するのは、ここから始まる話なのである。
〈了〉
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