保健室の曜子先生 笑う猫とオバケの鍵

永久保セツナ

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第13話 運動会の幽霊

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 十一月。
 この王馬小学校では、この時期、運動会があった。
 アタシは保健委員なので、曜子先生といっしょに運動会でケガをした生徒の手当てをすることになっている。
 ――のだが、この運動会も、なにやらおかしなことが起こっているようで……?
「いででで! 春風、もっと優しくしろよ!」
「消毒なんだから仕方ないでしょ。それに鬼丸くん、ケガしすぎ。何回転んでるの?」
 鬼丸くんの傷の手当てをしながら、アタシはあきれていた。
 もともと鬼丸くんは目立ちたがり屋なところがあり、先生の気を引こうと変な行動やイタズラを繰り返すクセがあったのだ。
「わざと転んでるわけじゃねえって! なんか足にからまって転んじまうんだよ!」
 そう言われてみると、今年の運動会はやけにケガをする生徒が多い。
 いつもなら元気に走ってるはずの子たちが、なぜかバタバタと転んで、泣いている。
 誰も見てないはずの場所で、足を引っかけられたように見える子もいる――
 曜子先生に目配せすると、先生は黙ってある一点を指さす。
 半透明の男の子――おそらく幽霊らしきものが、走っている生徒の足を引っぱって転ばせていたのだ。
 ……あの男の子のしわざ?
 そんな運動会の昼休み、お昼ご飯を済ませたアタシは、曜子先生のところへ向かった。
「この子、運動会に参加したいらしいのよ……」
 曜子先生は困ったような顔をしている。
 なにしろ、幽霊はふつうの人には姿が見えないのだ。
 運動会に参加したいと言われても、誰にも見えない存在が参加するのは難しい。
 でも、この男の子はまだ一年生くらいの頃に死んでしまったらしく、曜子先生が言い聞かせても納得してくれる年齢ではないのだ。
「ボク、去年の運動会、熱出して出られなかったんだ……」
「そっか。じゃあ、今年こそ出ようね!」
 アタシは、運動会のプログラム表をめくった。
「じゃあ、これに参加してもらうのはどうですか?」
 曜子先生と男の子の幽霊は、プログラムをのぞき込む……。
「――次のプログラムは騎馬戦です」
 アタシは騎馬戦で一番上に乗って、敵チームのハチマキを取るという大切な役目を任されていた。
 そのアタシの背中に、さらに男の子の幽霊が乗っかっている。
 幽霊だから、全然重くない。
 さらに、その男の子の活躍で、どんどんハチマキを奪っていく。
 騎馬戦はごちゃごちゃしていて、誰が何をしているのか分からないほどだった。
 幽霊がハチマキを取ったって、わかりはしない。
「おっと、ここで春風こころ選手、怒涛の勢いでハチマキを奪っていく~! これはまさに、ひとり無双状態だーっ!」
 運動会の実況も熱が入った。
 そして、アタシの乗った騎馬は、一位を取ったのである。
 幽霊の男の子は、にこっと笑って、小さく手を振った。
 男の子の体は、風に吹かれるようにふわりと宙に浮き、そのまま光の粒になって空に消えていった。
 それだけで、アタシには「ありがとう」の声が聞こえた気がした――。
 きっと成仏したのだろう。
「助かったわ、こころちゃん」
 曜子先生が頭をなでてくれて、アタシも満足したのである。

〈続く〉
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