13 / 16
第13話 運動会の幽霊
しおりを挟む
十一月。
この王馬小学校では、この時期、運動会があった。
アタシは保健委員なので、曜子先生といっしょに運動会でケガをした生徒の手当てをすることになっている。
――のだが、この運動会も、なにやらおかしなことが起こっているようで……?
「いででで! 春風、もっと優しくしろよ!」
「消毒なんだから仕方ないでしょ。それに鬼丸くん、ケガしすぎ。何回転んでるの?」
鬼丸くんの傷の手当てをしながら、アタシはあきれていた。
もともと鬼丸くんは目立ちたがり屋なところがあり、先生の気を引こうと変な行動やイタズラを繰り返すクセがあったのだ。
「わざと転んでるわけじゃねえって! なんか足にからまって転んじまうんだよ!」
そう言われてみると、今年の運動会はやけにケガをする生徒が多い。
いつもなら元気に走ってるはずの子たちが、なぜかバタバタと転んで、泣いている。
誰も見てないはずの場所で、足を引っかけられたように見える子もいる――
曜子先生に目配せすると、先生は黙ってある一点を指さす。
半透明の男の子――おそらく幽霊らしきものが、走っている生徒の足を引っぱって転ばせていたのだ。
……あの男の子のしわざ?
そんな運動会の昼休み、お昼ご飯を済ませたアタシは、曜子先生のところへ向かった。
「この子、運動会に参加したいらしいのよ……」
曜子先生は困ったような顔をしている。
なにしろ、幽霊はふつうの人には姿が見えないのだ。
運動会に参加したいと言われても、誰にも見えない存在が参加するのは難しい。
でも、この男の子はまだ一年生くらいの頃に死んでしまったらしく、曜子先生が言い聞かせても納得してくれる年齢ではないのだ。
「ボク、去年の運動会、熱出して出られなかったんだ……」
「そっか。じゃあ、今年こそ出ようね!」
アタシは、運動会のプログラム表をめくった。
「じゃあ、これに参加してもらうのはどうですか?」
曜子先生と男の子の幽霊は、プログラムをのぞき込む……。
「――次のプログラムは騎馬戦です」
アタシは騎馬戦で一番上に乗って、敵チームのハチマキを取るという大切な役目を任されていた。
そのアタシの背中に、さらに男の子の幽霊が乗っかっている。
幽霊だから、全然重くない。
さらに、その男の子の活躍で、どんどんハチマキを奪っていく。
騎馬戦はごちゃごちゃしていて、誰が何をしているのか分からないほどだった。
幽霊がハチマキを取ったって、わかりはしない。
「おっと、ここで春風こころ選手、怒涛の勢いでハチマキを奪っていく~! これはまさに、ひとり無双状態だーっ!」
運動会の実況も熱が入った。
そして、アタシの乗った騎馬は、一位を取ったのである。
幽霊の男の子は、にこっと笑って、小さく手を振った。
男の子の体は、風に吹かれるようにふわりと宙に浮き、そのまま光の粒になって空に消えていった。
それだけで、アタシには「ありがとう」の声が聞こえた気がした――。
きっと成仏したのだろう。
「助かったわ、こころちゃん」
曜子先生が頭をなでてくれて、アタシも満足したのである。
〈続く〉
この王馬小学校では、この時期、運動会があった。
アタシは保健委員なので、曜子先生といっしょに運動会でケガをした生徒の手当てをすることになっている。
――のだが、この運動会も、なにやらおかしなことが起こっているようで……?
「いででで! 春風、もっと優しくしろよ!」
「消毒なんだから仕方ないでしょ。それに鬼丸くん、ケガしすぎ。何回転んでるの?」
鬼丸くんの傷の手当てをしながら、アタシはあきれていた。
もともと鬼丸くんは目立ちたがり屋なところがあり、先生の気を引こうと変な行動やイタズラを繰り返すクセがあったのだ。
「わざと転んでるわけじゃねえって! なんか足にからまって転んじまうんだよ!」
そう言われてみると、今年の運動会はやけにケガをする生徒が多い。
いつもなら元気に走ってるはずの子たちが、なぜかバタバタと転んで、泣いている。
誰も見てないはずの場所で、足を引っかけられたように見える子もいる――
曜子先生に目配せすると、先生は黙ってある一点を指さす。
半透明の男の子――おそらく幽霊らしきものが、走っている生徒の足を引っぱって転ばせていたのだ。
……あの男の子のしわざ?
そんな運動会の昼休み、お昼ご飯を済ませたアタシは、曜子先生のところへ向かった。
「この子、運動会に参加したいらしいのよ……」
曜子先生は困ったような顔をしている。
なにしろ、幽霊はふつうの人には姿が見えないのだ。
運動会に参加したいと言われても、誰にも見えない存在が参加するのは難しい。
でも、この男の子はまだ一年生くらいの頃に死んでしまったらしく、曜子先生が言い聞かせても納得してくれる年齢ではないのだ。
「ボク、去年の運動会、熱出して出られなかったんだ……」
「そっか。じゃあ、今年こそ出ようね!」
アタシは、運動会のプログラム表をめくった。
「じゃあ、これに参加してもらうのはどうですか?」
曜子先生と男の子の幽霊は、プログラムをのぞき込む……。
「――次のプログラムは騎馬戦です」
アタシは騎馬戦で一番上に乗って、敵チームのハチマキを取るという大切な役目を任されていた。
そのアタシの背中に、さらに男の子の幽霊が乗っかっている。
幽霊だから、全然重くない。
さらに、その男の子の活躍で、どんどんハチマキを奪っていく。
騎馬戦はごちゃごちゃしていて、誰が何をしているのか分からないほどだった。
幽霊がハチマキを取ったって、わかりはしない。
「おっと、ここで春風こころ選手、怒涛の勢いでハチマキを奪っていく~! これはまさに、ひとり無双状態だーっ!」
運動会の実況も熱が入った。
そして、アタシの乗った騎馬は、一位を取ったのである。
幽霊の男の子は、にこっと笑って、小さく手を振った。
男の子の体は、風に吹かれるようにふわりと宙に浮き、そのまま光の粒になって空に消えていった。
それだけで、アタシには「ありがとう」の声が聞こえた気がした――。
きっと成仏したのだろう。
「助かったわ、こころちゃん」
曜子先生が頭をなでてくれて、アタシも満足したのである。
〈続く〉
0
あなたにおすすめの小説
パンティージャムジャムおじさん
KOU/Vami
児童書・童話
夜の街に、歌いながら歩く奇妙なおじさんが現れる。
口癖は「パラダイス~☆♪♡」――名乗る名は「パンティージャムジャムおじさん」。
子供たちは笑いながら彼の後についていき、歌を真似し、踊り、列は少しずつ長くなる。
そして翌朝、街は初めて気づく。昨夜の歌が、ただの遊びではなかったことに。
星降る夜に落ちた子
千東風子
児童書・童話
あたしは、いらなかった?
ねえ、お父さん、お母さん。
ずっと心で泣いている女の子がいました。
名前は世羅。
いつもいつも弟ばかり。
何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。
ハイキングなんて、来たくなかった!
世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。
世羅は滑るように落ち、気を失いました。
そして、目が覚めたらそこは。
住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。
気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。
二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。
全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。
苦手な方は回れ右をお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。
石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!
こちらは他サイトにも掲載しています。
【親子おはなし絵本】ドングリさんいっぱい(2~4歳向け(漢字えほん):いろいろできたね!)
天渡 香
絵本
「ごちそうさま。ドングリさんをちょうだい」ママは、さっちゃんの小さな手に、ドングリさんをのせます。
+:-:+:-:+
ドングリさんが大好きな我が子ために作った絵本です。
+:-:+:-:+
「ひとりでトイレに行けたね!」とほめながら、おててにドングリさんを渡すような話しかけをしています(親子のコミュニケーションを目的にしています)。
+:-:+:-:+
「ドングリさんをちょうだい」のフレーズを繰り返しているうちに、子供の方から「ドングリさんはどうしたらもらえるの?」とたずねてくれたので、「ひとりでお着がえできたら、ドングリさんをもらえるよ~」と、我が家では親子の会話がはずみました。
+:-:+:-:+
寝る前に、今日の「いろいろできたね!」をお話しするのにもぴったりです!
+:-:+:-:+
2歳の頃から、園で『漢字えほん(漢字が含まれている童話の本)』に親しんでいる我が子。出版数の少ない、低年齢向けの『漢字えほん』を自分で作ってみました。漢字がまじる事で、大人もスラスラ読み聞かせができます。『友達』という漢字を見つけて、子供が喜ぶなど、ひらがなだけの絵本にはない発見の楽しさがあるようです。
+:-:+:-:+
未満児(1~3歳頃)に漢字のまじった絵本を渡すというのには最初驚きましたが、『街中の看板』『広告』の一つ一つも子供にとっては楽しい童話に見えるようです。漢字の成り立ちなどの『漢字えほん』は多数ありますが、童話に『漢字とひらがなとカタカナ』を含む事で、自然と興味を持って『文字が好き』になったみたいです。
14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート
谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。
“スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。
そして14歳で、まさかの《定年》。
6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。
だけど、定年まで残された時間はわずか8年……!
――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。
だが、そんな幸弘の前に現れたのは、
「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。
これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。
描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。
このせかいもわるくない
ふら
絵本
以前書いた童話「いいとこ探し」を絵本にリメイクしました。
色んなソフトを使ったりすれば、もっと良い絵が描けそうだったり、未熟な点は多いですが、よろしくお願いします。
独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。
猫菜こん
児童書・童話
小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。
中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!
そう意気込んでいたのに……。
「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」
私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。
巻き込まれ体質の不憫な中学生
ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主
咲城和凜(さきしろかりん)
×
圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良
和凜以外に容赦がない
天狼絆那(てんろうきずな)
些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。
彼曰く、私に一目惚れしたらしく……?
「おい、俺の和凜に何しやがる。」
「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」
「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」
王道で溺愛、甘すぎる恋物語。
最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。
笑いの授業
ひろみ透夏
児童書・童話
大好きだった先先が別人のように変わってしまった。
文化祭前夜に突如始まった『笑いの授業』――。
それは身の毛もよだつほどに怖ろしく凄惨な課外授業だった。
伏線となる【神楽坂の章】から急展開する【高城の章】。
追い詰められた《神楽坂先生》が起こした教師としてありえない行動と、その真意とは……。
「いっすん坊」てなんなんだ
こいちろう
児童書・童話
ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。
自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる