俺で妄想するのはやめてくれ!

元森

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29 夢の中でもヤるとか…あり得ない…ッ

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 俺が身構え―――身体をかたまさせていると、栗須は目を細める。何かを考えているようだったが、心の声は聞こえない。そのことを不思議に思っていると、栗須は突然自分の浴衣をキッチリと整え始めた。
 急な行動に目をパチクリさせていると、栗須は俺のはだけた浴衣も整え始めた。素早い手さばきに目を奪われている間に、いつの間にか俺のあんなに乱れていた浴衣が綺麗に着させられていた。
 意味がわからずに呆然としていると、栗須の心の声がやっと聞こえた。
『…寝よう』
「え?」
 思わず栗須を二度見してしまった。俺の間抜け顔を栗須は無表情に見ている。
「もう遅いし…」
 栗須は少し視線を俯かせて声をつむぐ。俺は驚きの声をあげる。ちょっと拍子抜けしてしまった。
「えっ」
 何を言ってるんだ?
 と、すぐに思ったがはたと気づく。これじゃあ俺が栗須のこれからやることに期待してるみたいじゃないか。俺は慌てて驚いた顔をやめて、ひかれた布団に寝っ転がる。
「そ、そうだな! もう寝ようぜ。もう12時過ぎてるし、明日早いからなっ」
 言いながら寝っ転がった部分が汗やら体液やらで濡れていて、急に恥ずかしくなってきた。今が修学旅行中だってことをやはり実感する。栗須もきっとここでいたすことに、恥ずかしく思えてきたのだろう。
 きっとそうだ。そうに決まっている。
 隣で栗須が横になった気配がする。ちらりと横を見ると栗須の顔が間近にあった。
「っ」
 目があい、心臓が飛び跳ねる。やっぱり栗須の顔は武骨ながらもカッコいい。意識すると、同じ布団で寝ることが急に恥ずかしくなってきた。
 どくんどくんと鼓動が鳴り響く。栗須が小さく瞬きして、俺をじっと見ていた。
『増栄と一緒に寝れて嬉しい』
「…っ」
 俺は赤くなった顔を隠せもせず、ぎゅっと目をつぶる。
 するとしばらくして、頬に何かが触れた。目を開けると、栗須の指先が俺の頬をつついていた。
「子供かよ…」
 栗須がこんなことをするとは思わなくて、思わず笑ってしまう。いや枕投げも意外と楽しそうにしていたし、案外子供っぽいところもあるかもしれない。
 栗須が俺へのつつきをやめると、栗須は小さく口角をあげた。その笑顔はとても幸せそうに笑っていた。
『おやすみ増栄…』
「おやすみ…」
 栗須がゆっくりと目をつぶったのを見て、俺もゆっくりと目を閉じる。栗須って結構物わかりのいいやつだな――…。
 俺は疲れがピークに達していたのか、すぐに寝入ってしまった。…――だから気づかなかった。目を閉じていたと思っていた、栗須が俺の寝顔を見ていることに―――。
 
 
 俺は白い世界に居た。所謂夢の世界だと、すぐにわかる。夢を夢だってわかっているから、覚醒夢ってやつなのかもしれない。違う、そんな名前じゃなくて『明晰夢』ってやつだった。俺は自分に突っ込みつつ、ふあふあとした世界を見ていた。
 今日は疲れていたから、夢を見るとは思ってなかったんだけど…。白いふあふあとした空間には、栗須と俺がいた。いつものパターンか、と思う。でも少し嬉しいのは、俺の心境の変化なのかもしれない。
 今日はどんな夢なんだろう?と思っていたら、景色ががらっと変わる。浴衣に身に着けた俺と栗須は布団の上にいた。さっきの景色まんまじゃん。夢って今までの記憶に影響されるから、まあしょうがないかもだけど。
 俺と栗須は座って見つめあっていた。熱っぽく、甘い雰囲気が流れている。
 滅茶苦茶展開が読めてきたぞ。何十回も見てるからこの後の夢の俺が恥ずかしい思いをするってことがわかる。
 案の定夢の俺は見たこともないような蕩けた顔になって栗須に抱き着いた。
『栗須…ずっと、伝えられなかったけど…やっと伝えられた…』
 俺だけど俺じゃないものが甘ったるい言葉を吐いている。
 よく俺こんなこと言っちゃってるよな。恥ずかしいし、早く起きたくなってきた。
『増栄…』
 栗須が俺の顔をあげると、唇を合わせた。とろけるような感覚が、こっちまでやってくる。あぁ、気持ちいい…。舌を入れられて、俺は肩で息を繰り返す。時々もれる甘い声はやっぱり俺じゃないものだ。甘すぎてこっちまで耳が溶けそうだ。
 栗須はゆっくりと俺の浴衣を脱がしていく。障子に映る俺たちの二つの影が、妙に生々しい。
 すっかり裸になった俺は恥ずかしそうに顔を赤らめ、目を逸らした。栗須の顔が熱っぽく俺の反応した身体をみている。
『キスだけでこんなになったのか。すごいな…』
『や、やぁ…』
 俺はかぶりを振って否定する。この夢、俺の性格も栗須の性格も全く違うけど、これが俺の期待してる展開ってことか?
 そう思うと滅茶苦茶恥ずかしくなってきた。妙に現実味もあるし、早く起きたい。早く覚めないだろうか。
 そんな考えても仕方ないことを思っていると、栗須は俺の足を拡げ掲げるようにする。その俺の秘部のあっぴろげな光景に、夢の俺は泣きそうに「ひゃあっ」と声をあげる。俺もその光景を見て、思わず叫びたくなった。だが夢は俺の想いと裏腹に勝手に進んでいく。
『増栄のここ…すごいヒクヒクしてる…さっきは見れなかったけど…すごい丸見えだな』
『んっ、やだ…触んなよ…ひいっ』
 栗須が俺も見たことのない部分をまじまじと見ていて、顔から火が出そうになった。
 やめろ、やめろ、やめろーーー!
 そこを見られているとわかると俺の窄まりは収縮を繰り返し、それに合わせて栗須の長い指でなぞられると不可思議な感覚に襲われる。夢にしてはリアルすぎる感覚に、俺は首を振る。
 汗が吹きでて、頭が真っ白になる。こんな夢、夢じゃないみたいだ。こんな夢見たくないのに、なんで俺は見てるんだ。助けてくれ、と誰かに叫んでも夢の栗須と俺は止まらない。
『指…いれていい…?』
 馬鹿、駄目に決まってんだろ…っ!
『あっ、ぁ…っ、ほしい…っ』
 ふざけんな俺!
 俺の甘い声に罵声を浴びせても、ただただ夢は進んでいく。俺は蕩けた表情で栗須にねだり、栗須は俺のそこを重点的に攻める。俺のペニスは勃ちあがり、液が溢れてとまらない。気持ちいいのがこっちにまできて、頭がまとまらない。
 栗須はローションを手にしていた。それは栗須がコンテストでもらったもので、急に現実味を帯びてきた。
 俺は震え、栗須が蓋をあけるのを、自分の脚をもって待っていた。その表情は、まるで発情した雌のようで見てられるもんじゃない。いやだ、こんなの俺じゃない…。
『ひぁっ、つめた…っ…』
 窄まりにたらされたローションは冷たくて俺はかぶりをふる。感じたこともない濡れてぬるついた感触に、腰がどうしようもなく揺れる。栗須はたっぷりとかけたあと、窄まりに塗り込んでいく。その光景がすべて見えて、俺は頭がおかしくなりそうだった。
 栗須の指が、俺の恥かしいところをいじくっている…。
『すぐに慣れる』
 興奮した声が脳に響く。こんな夢あってたまるか。狂いそうな感覚は、リアルで本当にあるかのようだった。
『ぁ…っ、っ』
 焦らされているように、表面をカリカリと爪を立てられ首を振る。もっと深い刺激が欲しい。俺が知っている求めているのはもっと……。
『…ッあぁっ』
 ふいに指を中に侵入させられ、俺は呻いた。深く中を探るように拡げさせられる。ぐちゅぐちゅと聞こえるはずもない部分から聞こえ、結合部まで見え、羞恥で頭が煮えたぎるようだった。
 欲しかった刺激が与えられ、俺は狂ったように声をあげる。もうこれ以上は聞きたくない。夢にしては、リアルすぎる。まるで本当に刺激を与えられているような―――。
『気持ちいい?』
『…っ、ぁ…っ…っ』
 コクコクと馬鹿みたいに首を振る俺は見てられない表情をしていた。涙と唾液と汗でグチャグチャで、顔も気持ちよさそうにゆがめている。それを見る栗須はとても愉しそうで。夢の二人と俺は狂乱の渦に巻き込まれていた。
『もっと気持ちよくなりたい?』
 栗須は悪魔の言葉をささやいた。指を動かしながら、俺のイイところをひっかき続けている。そんなことをされてそう言われれば、期待で腰が疼いてしまうではないか。喘ぎながら大きくうなづいた。もっと、もっと、ほしい。そう上目遣いで訴えると栗須はふいに動いた。
『…っ、ん、んぅうっ! ぁっ、ダメ…っ、ぁ~っ』
 腰がガクンと揺れるほどの快感だった。俺の性器に温かいものが包まれる。栗須が、俺のペニスを口に含んだのだ。その倒錯的な光景に目がくらむ。腰が浮き、強烈な快感に涙が首をいやいや振るたび飛び散る。俺の顔がだらしくなくゆがんだ。
『ひ…っ、あ…っ! ぅ、っ……』
 栗須が俺を気持ちよくさせようと、口を動かし、舌を先端へ刺激する。頭がおかしくなる。気持ちよすぎて腰がくずれてしまう。こんなの、夢じゃ普通にありえない。早く目が覚めないと、このまま夢のなかにいたら自分がどうなるかわからない。焦った俺はどうにかして理性を働かせ、起きろ起きろと念じる。
 栗須が喉奥まで興奮した表情でいれたのを見ると、その想いは強くなる。喉奥の温かい感触と締め付けに、今にも達してしまいそうだ。与え続けられる快楽の波に白目になって俺は喘ぎ続ける。
 根元を擦られ、秘部に気持ちいいところをいじくれられ――脳が蕩けそうな快感だった。
 栗須が俺がイくように大きくじゅるりと吸われ、俺はもう我慢ができなかった。
『ぁ…っ、ん…っ、ぅう…っ、ッ…ッ』
「ぁ…っ、ぁ、んふ・・・っ」
 頭のヒューズが飛んだ。自分の声が二重に聞こえる。頭が真っ白になった感覚を味わい、俺は腰を浮かせる。訪れ続ける絶頂感に、身を震わせる。急に目の前が真っ暗になって、自分が気絶したのかと思った。だが何かおかしい気がして、ゆっくりと瞼を開ける。
「……は、…ぅ…ぁ?」
 自分の腰が痙攣しているのがわかる。目の前の景色は、茶色い天井だった。荒く息をしているのは、まぎれもなく俺だ。
 混乱した俺は首を動かし下を見る。するとそこには栗須が、俺のモノを口に含み、音をたて吸っているところだった。
 俺は思わず目が覚め、事態がまるで飲み込めず「…………はぁ?」と目を瞬いて驚愕の声をあげたのだった。
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