4 / 369
睦月
(再)人混み・温泉の回(全2話)
しおりを挟む
【人混み】 ~ナタモチ~
初売りセールをやっているショッピングモールへ遊びに来たはいいが、普段とは比にならないくらい混雑している。
美優「すごい人だね...」
小さな子供や若い女性、おじいさん等といった、幅広い年齢層でいる団体が多い。
このことから、親戚や親族とのお出掛けで来たという世帯が多いのが分かった。
隼士「人混みがすげぇな...」
油断したらこの波に飲まれ、私達3人はバラバラにはぐれてしまいそうだ。
美優「2人とも!はぐれないように手を繋ごう...あれ?」
私が先頭にいたので、振り向いて2人を確認しようとしたが、そこに姿はなかった。
今の一瞬でなにがあったというのだろうか。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
【温泉の回】 ~アルスの日常~
アルスは地元にある、とある温泉へと来ていた。
アルス「遂にみんなにここを紹介する日が来たな」
そう、普段のメンツを連れて。
エルは、アルスの隣に立ち、自身の両手を絡める。
エル「アルス君、みんなで来たいっていつも言ってたもんね。」
アルス「ああ、一度は入ってもらいたくてな。」
エルも実は温泉がすきだったりする。
昔はよく、家族でここへ入りに来ていたそうだ。
サトシ「ちっこい建てもんやな。銭湯レベルなんじゃねぇの?」
近藤「失礼極まりねぇぜそれは」
サトシの呟きに、近藤が指摘する。
アルス「確かに、パッと見は小さいだろう。入ってみると分かるけど、売店とか色々あるし意外と広いぞ。」
そう言って、施設の入り口へと歩き出す。
優奈「温泉なんて私久しぶりよ」
テル「楽しみだね!」
後ろを歩くテルから、期待の声が上がる。
アルス「そういやテルはどっちに入るん?」
テル「だから男湯だって言ってるでしょ!!」
受付や脱衣を済ませ、いざ入浴へ。
アルス達は身体を洗い終え、湯船に浸かっていた。
アルス「やっぱ最高やな。日々の疲れが癒える。」
ミニタオルを頭に乗せ、脱力状態となる。
サトシ「だからじじいかて」
その様子を見て、サトシはツッコんだ。
近藤「いやでも、確かにそう感じるな。」
アルス「せやろ?流石俺の親友や。」
サトシ「え、俺は?」
白く熱い湯気が俺達を包み込み、たちまち辺りが見えなくなっていった。
一方女湯では...
優奈「はぁ~気持ちいいわ~」
颯太「お湯熱いね~」
2人は背中を浴槽の壁にもたれさせ、首を寝かせた体制で浸かっている。
エル「そろそろ露天風呂行こうよ~」
外にもいくつか風呂があるので、エルはそちらにも行こうと誘っている。
優奈「寒いからやだ!」
しかし、先程から優奈はこのように、寒いのは嫌いなので室内だけでもいいと言い張る。
颯太「でも外にあるお風呂は気になるよ。」
颯太は温泉に来たことがなく、室外にあるということが珍しいと思っている。
エル「じゃあ行ってみよっか!」
エルは颯太の手を引き、外へと繋がる出入り口の前へ立った。
エルがドアノブを掴み、出入り口を開けた途端...。
外の冷気が、容赦なく肌を突き刺す。
颯太は悲鳴を上げ、湯船まで引き上げてしまった。
颯太「お外寒い...無理...」
体を震わせながら、再度お湯に浸かる。
どれだけ寒さに弱いと言うのか。
次第に表情が和らいでいく様子が微笑ましい。
エル「入っちゃえばいいんだけどなぁ...」
やれやれといった様子でそう呟くエル。
杏姉「湯船に浸かったら、寒さって...感じなくなるんですか?」
興味を持っているのだろうか、尋ねてくる杏姉。
エル「そう!温度は高めだし、熱気もあるからね。入るまでを我慢しちゃえば、あとは娯楽!」
説明からすでに楽しそうなエル。
エル「外でしか味わえないこともたくさんあるし、是非一度は試してほしいんだよね!」
かなり推してくる。
そこまで言われたら、入らないわけにはいかなかった。
杏姉「じ、じゃあ...一緒に行っても、いいですか?」
エル「もちろんだよ!早速行こう!」
エルは杏姉の手を持ち、2人で外へと向かった。
扉を開け、外へと踏み出した。
エル「ひゃ~寒い!とりあえず一番近いとこに避難避難!」
エルと杏姉は、外に出てすぐ左にある、白く濁った湯船へ入る。
肩まで浸かり、全身が温まるのを感じる。
熱気が漂っているので、顔周りが冷えることもない。
エル「ふ~...ほら、寒いのなんて一瞬だったでしょ?」
杏姉「そ、そうですね...。」
彼女の言った通り、最初さえ耐えられればいいだけの話だった。
それはそうと、私はある違和感を覚える。
杏姉「このお湯、なんだかぬかるみがありません?」
自身の腕を撫でながら、そう言った。
エル「そう感じるよね~。実はこれ、お湯自体はそんな粘性とかないんだよ。」
両手で白いお湯をすくい、隙間から流す。
エル「自分の皮膚にある、古いタンパク質が剥がれることでそう感じるみたい。これは別に悪いことじゃなくてね、単純に言うと綺麗な肌になる過程なんだよ。」
むしろいいことなのか。
よく見ると、小さな看板に「美肌の湯」と書いてあった。
エル「私はこれが目的でもあったからね~。ちょうどよかった!」
お湯をすくい、頬にもそのお湯をかけるエル。
あなたは十分綺麗ですよ。
その頃男湯では...
アルス達は、サウナに入っていた。
設定温度は90℃と、まあまあ高い方である。
サトシ「なあアルス...ちょっと長くねぇか?」
サウナに入ってから15分が経過しようとしていた。
すでに全員汗だく状態であるが、アルスは涼しい顔でいた。
アルス「まだだ...ここからが勝負時だぞ。」
近藤「サウナは5分から10分がちょうどいいって聞いたんだが...」
アルス「気のせいだ」
気のせいなわけあるかい。
それはあくまでも一般人の目安だ、とでも言うのだろうか。
テル「ボク...もう出るね。」
かなりしんどそうな顔をしていたテルが、遂に離脱した。
アルス「お疲れ。サトシ達も無理せんでいいぞ。俺は20分までいるつもりだが、先上がりたいなら出ても構わんぞ。」
正気か?こいつは。
ぶっちゃけ、最初の5分でもかなり堪えた方だが...その4倍いくってマジかよこいつ。
ジン「おいサトシ...出るぞ。」
サトシの肩を掴み、ジンが立ち上がった。
ジン「正直俺もしんどいからな。」
サトシが「...わりぃな、先出とくわ。」
サトシも立ち上がり、2人は外へ出ようとした。
サウナに入る前、どちらの方が長く入っていられるか競おうと話していたことを思い出した。
その事だろうか、お互い相手を押し出そうとしたり、抵抗したりしている。
アルス「はよ出て閉めんかい!」
ジンとサトシが出て、残りはアルスと近藤の2人となった。
近藤「...てか、お前すげぇな。20分とかよくいけるよな...。」
アルス「まあな。そっちは平気なんか?」
持参したタオルを小さく畳むアルス。
これに意味はないらしい。
近藤「あー...まあ、残りはたったの5分だろ?俺は最後までおめーについてくぜ。」
アルス「言うねぇ。それでこそ近藤だ。」
アルスは壁にかけてあったタイマーを手に取った。
アルス「じゃ、延長する?」
近藤「勘弁してくれ」
流石にキツいか。
それから数十分が経った、女湯サイド。
露天風呂を片っ端から堪能するエルと杏姉。
まあ、ほぼエルが仕切っていて、杏姉はついて来るだけだったけど。
エル「結構長いこと入ってたね。...そろそろ上がろっか!」
そう言って立ち上がると...
アルス「その声はエルか?」
壁の向こう側から、アルスの声が聞こえた。
エル「えっ!?アルス君!?」
ここは露天風呂のエリアで、一番奥に位置する場所だ。
まさか男湯側に声が届くとは...面白い場所を発見したな、
エル「そっちの湯加減はどう?」
アルス「そりゃもう最高よ。」
温泉に入りながら異性と話す...こんな経験これまでに無かったので、斬新だと感じた。
杏姉「あの、エルさん...これどうなっているか分かりますか...?」
杏姉の手が、私の腕に触れる。
エル「え?なにを...。」
杏姉は、壁の根元の岩を指差している。
そこを見ると、岩と岩の間に若干の通り道ができているのが分かる。
アルス「ここの湯船は繋がっていて、両方均等になってるからな。そっちの湯加減もばっちしってことよな。」
アルスは気にしていないようだが、私達2人は、どんな状態で同じ湯船にいるのかを想像して、顔が真っ赤になった。
エル「...わ、私達...そろそろ出るね...。」
アルス「え、なんでそんなテンション低くなったん?」
因みにあの時、近藤も同じ浴槽にいたそうです。
初売りセールをやっているショッピングモールへ遊びに来たはいいが、普段とは比にならないくらい混雑している。
美優「すごい人だね...」
小さな子供や若い女性、おじいさん等といった、幅広い年齢層でいる団体が多い。
このことから、親戚や親族とのお出掛けで来たという世帯が多いのが分かった。
隼士「人混みがすげぇな...」
油断したらこの波に飲まれ、私達3人はバラバラにはぐれてしまいそうだ。
美優「2人とも!はぐれないように手を繋ごう...あれ?」
私が先頭にいたので、振り向いて2人を確認しようとしたが、そこに姿はなかった。
今の一瞬でなにがあったというのだろうか。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
【温泉の回】 ~アルスの日常~
アルスは地元にある、とある温泉へと来ていた。
アルス「遂にみんなにここを紹介する日が来たな」
そう、普段のメンツを連れて。
エルは、アルスの隣に立ち、自身の両手を絡める。
エル「アルス君、みんなで来たいっていつも言ってたもんね。」
アルス「ああ、一度は入ってもらいたくてな。」
エルも実は温泉がすきだったりする。
昔はよく、家族でここへ入りに来ていたそうだ。
サトシ「ちっこい建てもんやな。銭湯レベルなんじゃねぇの?」
近藤「失礼極まりねぇぜそれは」
サトシの呟きに、近藤が指摘する。
アルス「確かに、パッと見は小さいだろう。入ってみると分かるけど、売店とか色々あるし意外と広いぞ。」
そう言って、施設の入り口へと歩き出す。
優奈「温泉なんて私久しぶりよ」
テル「楽しみだね!」
後ろを歩くテルから、期待の声が上がる。
アルス「そういやテルはどっちに入るん?」
テル「だから男湯だって言ってるでしょ!!」
受付や脱衣を済ませ、いざ入浴へ。
アルス達は身体を洗い終え、湯船に浸かっていた。
アルス「やっぱ最高やな。日々の疲れが癒える。」
ミニタオルを頭に乗せ、脱力状態となる。
サトシ「だからじじいかて」
その様子を見て、サトシはツッコんだ。
近藤「いやでも、確かにそう感じるな。」
アルス「せやろ?流石俺の親友や。」
サトシ「え、俺は?」
白く熱い湯気が俺達を包み込み、たちまち辺りが見えなくなっていった。
一方女湯では...
優奈「はぁ~気持ちいいわ~」
颯太「お湯熱いね~」
2人は背中を浴槽の壁にもたれさせ、首を寝かせた体制で浸かっている。
エル「そろそろ露天風呂行こうよ~」
外にもいくつか風呂があるので、エルはそちらにも行こうと誘っている。
優奈「寒いからやだ!」
しかし、先程から優奈はこのように、寒いのは嫌いなので室内だけでもいいと言い張る。
颯太「でも外にあるお風呂は気になるよ。」
颯太は温泉に来たことがなく、室外にあるということが珍しいと思っている。
エル「じゃあ行ってみよっか!」
エルは颯太の手を引き、外へと繋がる出入り口の前へ立った。
エルがドアノブを掴み、出入り口を開けた途端...。
外の冷気が、容赦なく肌を突き刺す。
颯太は悲鳴を上げ、湯船まで引き上げてしまった。
颯太「お外寒い...無理...」
体を震わせながら、再度お湯に浸かる。
どれだけ寒さに弱いと言うのか。
次第に表情が和らいでいく様子が微笑ましい。
エル「入っちゃえばいいんだけどなぁ...」
やれやれといった様子でそう呟くエル。
杏姉「湯船に浸かったら、寒さって...感じなくなるんですか?」
興味を持っているのだろうか、尋ねてくる杏姉。
エル「そう!温度は高めだし、熱気もあるからね。入るまでを我慢しちゃえば、あとは娯楽!」
説明からすでに楽しそうなエル。
エル「外でしか味わえないこともたくさんあるし、是非一度は試してほしいんだよね!」
かなり推してくる。
そこまで言われたら、入らないわけにはいかなかった。
杏姉「じ、じゃあ...一緒に行っても、いいですか?」
エル「もちろんだよ!早速行こう!」
エルは杏姉の手を持ち、2人で外へと向かった。
扉を開け、外へと踏み出した。
エル「ひゃ~寒い!とりあえず一番近いとこに避難避難!」
エルと杏姉は、外に出てすぐ左にある、白く濁った湯船へ入る。
肩まで浸かり、全身が温まるのを感じる。
熱気が漂っているので、顔周りが冷えることもない。
エル「ふ~...ほら、寒いのなんて一瞬だったでしょ?」
杏姉「そ、そうですね...。」
彼女の言った通り、最初さえ耐えられればいいだけの話だった。
それはそうと、私はある違和感を覚える。
杏姉「このお湯、なんだかぬかるみがありません?」
自身の腕を撫でながら、そう言った。
エル「そう感じるよね~。実はこれ、お湯自体はそんな粘性とかないんだよ。」
両手で白いお湯をすくい、隙間から流す。
エル「自分の皮膚にある、古いタンパク質が剥がれることでそう感じるみたい。これは別に悪いことじゃなくてね、単純に言うと綺麗な肌になる過程なんだよ。」
むしろいいことなのか。
よく見ると、小さな看板に「美肌の湯」と書いてあった。
エル「私はこれが目的でもあったからね~。ちょうどよかった!」
お湯をすくい、頬にもそのお湯をかけるエル。
あなたは十分綺麗ですよ。
その頃男湯では...
アルス達は、サウナに入っていた。
設定温度は90℃と、まあまあ高い方である。
サトシ「なあアルス...ちょっと長くねぇか?」
サウナに入ってから15分が経過しようとしていた。
すでに全員汗だく状態であるが、アルスは涼しい顔でいた。
アルス「まだだ...ここからが勝負時だぞ。」
近藤「サウナは5分から10分がちょうどいいって聞いたんだが...」
アルス「気のせいだ」
気のせいなわけあるかい。
それはあくまでも一般人の目安だ、とでも言うのだろうか。
テル「ボク...もう出るね。」
かなりしんどそうな顔をしていたテルが、遂に離脱した。
アルス「お疲れ。サトシ達も無理せんでいいぞ。俺は20分までいるつもりだが、先上がりたいなら出ても構わんぞ。」
正気か?こいつは。
ぶっちゃけ、最初の5分でもかなり堪えた方だが...その4倍いくってマジかよこいつ。
ジン「おいサトシ...出るぞ。」
サトシの肩を掴み、ジンが立ち上がった。
ジン「正直俺もしんどいからな。」
サトシが「...わりぃな、先出とくわ。」
サトシも立ち上がり、2人は外へ出ようとした。
サウナに入る前、どちらの方が長く入っていられるか競おうと話していたことを思い出した。
その事だろうか、お互い相手を押し出そうとしたり、抵抗したりしている。
アルス「はよ出て閉めんかい!」
ジンとサトシが出て、残りはアルスと近藤の2人となった。
近藤「...てか、お前すげぇな。20分とかよくいけるよな...。」
アルス「まあな。そっちは平気なんか?」
持参したタオルを小さく畳むアルス。
これに意味はないらしい。
近藤「あー...まあ、残りはたったの5分だろ?俺は最後までおめーについてくぜ。」
アルス「言うねぇ。それでこそ近藤だ。」
アルスは壁にかけてあったタイマーを手に取った。
アルス「じゃ、延長する?」
近藤「勘弁してくれ」
流石にキツいか。
それから数十分が経った、女湯サイド。
露天風呂を片っ端から堪能するエルと杏姉。
まあ、ほぼエルが仕切っていて、杏姉はついて来るだけだったけど。
エル「結構長いこと入ってたね。...そろそろ上がろっか!」
そう言って立ち上がると...
アルス「その声はエルか?」
壁の向こう側から、アルスの声が聞こえた。
エル「えっ!?アルス君!?」
ここは露天風呂のエリアで、一番奥に位置する場所だ。
まさか男湯側に声が届くとは...面白い場所を発見したな、
エル「そっちの湯加減はどう?」
アルス「そりゃもう最高よ。」
温泉に入りながら異性と話す...こんな経験これまでに無かったので、斬新だと感じた。
杏姉「あの、エルさん...これどうなっているか分かりますか...?」
杏姉の手が、私の腕に触れる。
エル「え?なにを...。」
杏姉は、壁の根元の岩を指差している。
そこを見ると、岩と岩の間に若干の通り道ができているのが分かる。
アルス「ここの湯船は繋がっていて、両方均等になってるからな。そっちの湯加減もばっちしってことよな。」
アルスは気にしていないようだが、私達2人は、どんな状態で同じ湯船にいるのかを想像して、顔が真っ赤になった。
エル「...わ、私達...そろそろ出るね...。」
アルス「え、なんでそんなテンション低くなったん?」
因みにあの時、近藤も同じ浴槽にいたそうです。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
0
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる