毎日!アルスの日常365

星月

文字の大きさ
上 下
16 / 369
睦月

仕返しの回・イタズラ(全2話)

しおりを挟む
【仕返しの回】~アルスの日常~

齋藤先生「サトシ、お前また再試だぞ。」

俺の回答用紙を突き付けてくる、国語担当の齋藤先生。
俺を含め、クラスのほぼ全員がこいつを嫌ってるだろう。

サトシ「でもよ、たんねんは書けてただろ?」

得意気に、回答用紙に書かれた「たんねん」という単語を指差す。

齋藤先生「じゃあたんねんはどれか指差してみろ」

ため息をつき、問題用紙の文章問題を見せる。

サトシ「んなもんとっくに忘れとるわ」

忘れたというか、そもそもたんねんがどの漢字のことなのかを俺は知らない。
それもそのはず、気付かれないよう試験監督に読み上げさせたものだ。

自分で勉強するわけがないだろう。

齋藤先生「それじゃあ意味がないよ」

あかん、今すぐこいつをしばきたい。
その眉を潜めて口が半開きな表情どうにかしろ。

齋藤先生「んで、再試はいつ受けるんだ?」
サトシ「明後日やるわ」

ここで俺は、こいつに仕返しすることにした。

サトシ「てか思ったんだけどさぁ」

ゆらりと、窓際へ移動する。

サトシ「先生、いつも換気しろだの言ってんやんか。」

解錠した窓を、そのまま全開にする。

サトシ「自分はしないんだな、都合のいいやつ。」

開いた窓から、強風が差し込む。

サトシ「明後日、再試頼んますわ。」

教務室を出ようとする俺を、後ろから呼び止める声が響いたが、それは全て無視しておいた。
さて、部活に行くとするか。



■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■



【イタズラ】~ナタモチ~

放課後、サッカー部は外で活動をしていた。

隼士「いや寒い寒い!」

腕をこすりながら、アップメニューを延々と繰り返している。
しかし、いくら体を動かしても、寒いという事実に変わりはない。

隼士「こんな日はミーティングにしてくれよ!あぁ、熱々のコーンスープが飲みたい...。」

グラウンドには風を防ぐようなものが無いので、寒さをしのげない。

隼士「ん?あれは...。」

ふと校舎を見やると、一階の部屋にサトシの姿が見えた。

隼士「あそこは教務室...ははーん、さては再試のことだな?」

俺はこっそりと窓の外まで近付き、様子を伺った。
そこには、サトシと国語担当の齋藤先生がいたので、間違いはないようだ。

隼士「う~わ、この中とか絶対暖かいじゃん、ズルいぞあいつめ...。」

こっちは極寒の中耐えながらやっているというのに。
でも、あの先生の説教を食らうとなったら、そっちもそっちで嫌ではある。

窓が閉まっているので、内容を聞き取ることができず、見ることしかできなかった。

しばらくして、サトシが窓際へと近付いてきた。
もしかして、気付かれた?

サトシは窓を開けたのち、廊下側へと去っていった。

齋藤先生「おい、閉めろ!逆恨みか!」

齋藤先生の声が響く。
なんとなくの予想だが、嫌気をさしたサトシが窓を開けたのちに、その場をあとにしたのだろう。

隼士「やるな、あいつ。」

俺はその開けられた窓を押さえた。

齋藤先生「ぐ、ぐぐ...なんだこれ、閉まらないぞ!?」

俺の存在に気付くことなく、先生は必死になって窓を閉めようとしていた。
僕らはいつも換気で寒い思いをしているのに、自分だけいい環境でいられると思わないでほしいぜ。
しおりを挟む

処理中です...