毎日!アルスの日常365

星月

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卯月

存在・衣替え申し立ての回(全2話)

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【存在】~ナタモチ~

数学の授業が始まる前、斎藤先生は教卓の上に荷物を置くと、授業の準備を始めた。

資料の入ったファイルを取り出し、中身を整理していると、どこからかチリーンといった音が聴こえてきた。

辺りを見渡すと、窓側のカーテンのレールに風鈴がかかっていた。

斎藤先生「あれ!風鈴ある!?」

風鈴を指差し、思わず声を上げる。

藍夏「どっかのバカが涼を感じたいんだとよ」

腕を組み、黒板にもたれて友人と話していた藍夏が、設置の経緯を教えてくれた。

斎藤先生「なるほど、確かに最近暑いからね~。」

まだ4月だと言うのに、絶賛稼働中の扇風機。
首を振る様子を見てそう呟いた。

斎藤先生「...って、ちょっと!背中汚れるよ!?」

黒板にもたれているという事柄を危うくスルーするところだった。

藍夏は「いいって別に」と言うが、斎藤先生は彼女を黒板から引き離した。



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【衣替え申し立ての回】~アルスの日常~

数学の授業が終わると、アルスは席を立ち上がり教壇へと向かった。

アルス「先生、もうポロシャツ解禁しましょうよ。」

黒板の前に立つ斎藤先生に、制服の衣替えについての議論を立てる。

斎藤先生「そうだね、最近暑いし流石に長袖じゃキツいよね。」

あっさりと、同意がもらえた。
この人は話が分かってくれるので良かった。

浜瀬先生「暑いがなんだ、男がそんなことで根を上げるんじゃない。」

そこへ、次の授業を担当する浜瀬先生がやって来た。
今のやりとりを聞いていたのか、斎藤先生とは真逆の見解を示す。

やはり、一筋縄ではいかないようだ。

アルス「じゃあ先生は熱いスープに氷入れないんすか?」
浜瀬先生「いや、入れない。」

アルスの問いに、浜瀬先生は即答する。

斎藤先生「僕は入れるよ!アルス君も氷入れるんだね!」
アルス「入れないっすけど」
斎藤先生「入れないんかい!」

この流れは、氷を入れるくだりだろうが。

アルス「じゃあ、フーって冷まさないんすか?」
浜瀬先生「それはするが」

腕を組み、そう答える浜瀬先生。

アルス「男なら黙ってそのままいきましょうよ」

先ほど浜瀬先生が言った言葉を逆手に取ると、浜瀬先生は若干姿勢が崩れる。

浜瀬先生「ぐ...言いたいことは分かったから、俺からも上へは言っておく。」

そう言われた浜瀬先生はひるみ、教卓の前まで逃げるように移動した。
いや、潔すぎるでしょ。
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