毎日!アルスの日常365

星月

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文月

タイムリープの回・デザートはなし(全2話)

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【タイムリープの回】~アルスの日常~

近藤「なあ、もしタイムリープができるとしたらいつに戻りたい?」

1限目が始まる前、隣の教室へ遊びに来ていた近藤がサトシに尋ねる。

サトシ「あ?んだよいきなり。」

椅子の背もたれに腰掛け、紙パックのいちごオレを飲むサトシ。
コンビニで買ってきたのか、レジ袋やおしぼりが机の上に置いてあった。

サトシ「戻りてぇってくらい人生経験してねぇだろ」
近藤「いーからいーから」

質問の意図が読み取れないのか、眉を潜めるサトシを、近藤は答えるよう催促する。

サトシ「あ~...なら中学の頃のてめぇをボコしに行くわ。」
近藤「なんで!?」

なにか、恨まれるようなことしただろうか。
心当たりはあるようでない。

ないようであるとも言えるが。

近藤「まあ...そんな君に、ほい。」

そう言うと、近藤は右手を差し出してきた。

サトシ「あ?ガチ?」

少々戸惑いながらも、出された手と握手を交わす。
しかし、当然なにも起こらなかった。

サトシ「ホンマにてめぇの目的はなん、うぉっ!?」

怪訝そうな表情を浮かべた直後、握手をしていた右手に痛覚が走る。

近藤が強く、握り始めたからだ。

近藤「はっはっ!これでオメーに勝てる...ぐわぁあ!!」
サトシ「てめぇ俺より握力弱いだろ」

しかし、サトシの方が力は強かったようで。
近藤はあっさりと返り討ちに遭ってしまった。



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【デザートはなし】

クレ「今日のデザートはなにかな~!」

弁当を食べ終えたクレは、デザートが入った小さな箱の蓋を開けた。
中には、切り分けられた梨が入っていた。

クレ「わ~いラフランス!」
厚史「梨じゃねぇのかよ!」

厚史がツッコむが、飛鳥は冷淡と「ラ・フランスは梨だけど?」と言い放った。

厚史「どっちも一緒じゃね?」
飛鳥「って言ってるじゃん」

そんなやり取りをしていると、カヤサも話に参戦する。

カヤサ「俺にもラフランスくれよ」
厚史「いやラフランスってなんだよ!」
飛鳥「だから梨のことだってば」

だめだ、この空間にいると頭が痛くなる。
デジャヴにデジャヴが重なって、訳が分からなくなってきた。

飛鳥が頭を抑えていると、カヤサは弁当箱を掲げながら椅子の上に立ち上がった。

カヤサ「俺のデザートは無しかよ!」

教室に静寂が訪れた。
しかしそれは、言わば信頼と理解の沈黙であった。
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