毎日!アルスの日常365

星月

文字の大きさ
上 下
265 / 369
長月

2つの名・本来の名前の回(全2話)

しおりを挟む
【2つの名】~ナタモチ~ 

藍夏「そういえばクレさ」

昼休み、フルーツサンドを食べるクレに藍夏は話を切り出した。

藍夏「あんたちはちゃんって呼ばれるけど、あれってミドルネームとかなの?」

他クラスの友達だろうか、ある休み時間にクレと話している生徒がいた。
その時、クレをちはちゃんと呼んでいたのだ。

私が尋ねると、クレは食べていた物を飲み込むと、「千春は名字だよ!」と告げた。

事実を明かすと、藍夏は「えっ!?」と声を上げて驚く。

彼女の本名は千春 クレイアネ。
名前のような名字に、初対面の人は惑わされることが多いようだ。



■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■



【本来の名前の回】~アルスの日常~

エル「私の名前、本当はなんていうか知ってる?」

話をするクレと藍夏の間に入り、エルは自分の名前についてを問う。

藍夏「なんだっけ、なんかエレメントみたいなのだったような。」

藍夏にくすりと笑い、エルはアルスの方へと視線を向ける。

エル「アルス君は知ってるよね!」

付き合いの長いアルスは、当然知っているはずだ。

しかしアルスは、少し考えたのちに「忘れた」と言った。

エル「ちょっと!」

冗談めかして呟くアルスに、エルはズイッと顔を近付けた。

クレ「呼んであげないとエルちゃん、悲しい気持ちになっちゃうよ~!」

笑いながら泣くジェスチャーをするクレ。
エルはクレの腕に抱きつき、潤った瞳をアルスに向けた。

アルス「え~、なにゼントだった?」
エル「もうそれ知ってるから!」

ボケを挟むアルスに、エルのツッコミが炸裂した。

アルス「分かったって、エルゼント。」

アルスは彼女の名前を口にすると、パッとなにか閃いた表情を浮かべた。

アルス「なんか久々に呼んだな。いつもエルって呼んでるからこっちに定着してるわ。」

そう言うと、同意見だという藍夏も「呼びやすいからね、エルの方が。」と同調した。

アルス「...ん?どうしたんだエル、具合でも悪いのか?」

エルを見ると、うつむいて黙り込んでいた。
さっきまであれだけ笑っていたというのに、一体どうしてしまったのだろう。

アルスはクレと一緒に顔を覗き込むと、エルは顔を赤くして汗をかいていた。

アルス「え、マジでどしたん!?熱あるのか!?」
クレ「大変!保健室連れてかないと!」

2人は急いで、エルを保健室へと連れて行った。

藍夏「...名前呼ばれて照れただけでしょ。」

教室から去っていく3人を静かに見届ける藍夏。
フッと微笑み、携帯をいじり始めた。
しおりを挟む

処理中です...