毎日!アルスの日常365

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霜月

忘れ物・雨漏りの回・手が滑った(全3話)

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【忘れ物】~電脳戦士の理~

サトシは教室に着くと、机の上に鞄をドサッと乗せる。
中からタオルやらプロテインやらを取り出していたが、ピタリと手を止めてしまった。

隣の席に座っていたリリーが「どうしたのぉ?」と尋ねると、サトシは鞄を机の横のフックにかけながら答えた。

サトシ「昼飯のパン忘れたわ、多分玄関に落ちてる。」

どうやら、お昼のご飯を家に置いてきてしまったようだ。

リリー「私のお弁当半分こするぅ?」

身を寄せてそう言うが、サトシは携帯をいじりながら「買うからええて」と冷たく突き放した。

サトシ「てめぇの弁当はてめぇの分だろが、んな俺が忘れたくらいのことで構うな。」

それを聞いたリリーは「分かったよぉ~」と、笑みを浮かべて答えた。

リリーからすれば、今のサトシの言葉は優しいと感じる。
しかし端から見た時、果たしてどのように捉えられるのだろうか。



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【雨漏りの回】~アルスの日常~

藍夏「なんか雨漏りしてない?」

数学の授業中、腕を組み天井を見上げていた藍夏がそう呟いた。

斎藤先生「確かにさっきから、たまに雫が垂れる音がするよね。」

数式を書き終えた斎藤先生が、教卓に手をつき応える。

斎藤先生は「今日雨降ってるもんね」と言ったが、この時まで彼はあることに気付いていなかったようだ。

藍夏「ここ2階だよ」

今いる教室が2階であることを告げると、斎藤先生はハッとした。

斎藤先生「あれ!?あ、本当だ!」
カヤサ「言われてみれば、3階建ての校舎にある2階の教室で、雨漏りが起こり得るはずがないな。」

探偵を真似た口調で、推測を始めるカヤサ。

アルス「4階建てなんですが」

情報に誤りがあったので、アルスがスッと指摘した。

厚史「でも分からんぞ?どの階も雨漏りしてるとこだけが浸水しやすい素材かもしれないからな。」
藍夏「だったら尚更工事しろよ」

あれこれ話していると、アルスは1つの予想を挙げた。

アルス「上の階の誰かが水筒でも倒したんじゃね?」

彼の一言に、クラス中の誰もが納得した。

厚史「次の休み時間に答え合わせしに行くか!」
飛鳥「迷惑でしょ」

因みに、本当に水筒のお茶でした。



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【手が滑った】~ナタモチ~

サトシは昼休み、隼士とカゲを連れて自販機コーナーへと来ていた。

用事としては、サトシがカップ麺とジュースを、付き添いである俺とカゲは飲み物のみを買うくらいだ。

サトシ「たまにはカフェラテ飲んでみるか」

小銭を入れ、カフェラテのボタンを押す。

カフェラテを飲むとなると、カップ麺はカレー味が食べたくなる。
というわけで、サトシはカレー味を選ぶことにした。

カゲ「おっと手が滑った!」

ボタンを押す寸前で、隣からカゲの手が伸びる。

カレー味を選ぶつもりが、醤油味を押してしまった。

カゲの悪意ある妨害に、サトシは「てめぇ」と睨み肩を掴む。

隼士「大胆な滑り方ですなぁ」

その様子を見ていた隼士が、買ったジュースのキャップを開けながらツッコむ。

するとサトシはあることに気が付いた。
カゲは先ほど1,000円札を入れていたのだが、ジュースを買ったはずがお釣りが返ってきていない。

確かこの自販機は、レバーを引かない限りはお釣りが出てこない仕組みだったような気がする。

カゲは飲み物を買ったが、お釣りのレバーを引いていなかったので、まだ800円くらい残っていた。

サトシはカゲを押しのけ、下段にあるよく分からない飲み物のボタンを3つほど押した。

カゲは「お前ー!!」と声を上げながら、サトシの手を押しのける。

サトシ「おーおー、手が滑ったわ。」

慌ててお釣り返却レバーを引いたが、400円ほどしか残っていなかった。

サトシ「流石にやりすぎたか、責任持って頂くわ。」
隼士「俺も飲んであげるからよ!」

カゲはジュースを取り出しながら「いいわそんな優しさ!...いや優しさでもねぇ!」とツッコミを入れた。

これぞまさに、自業自得である。
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