復習

詩織

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復習

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いつか復習をする。

全てを復習に捧げる。

そう思い続け12年。私は40になっていた。

28歳のとき、会社の帰りに強姦にあった。3人の男で多分20代の前半だろう。その時に付き合ってた恋人に逃げられ、会社にも知られ、私は今誰もわたしのことを知らない街で、工場で勤務している。

そしていつか復習したい!その気持ちだけで生きている。

鎌田多惠子かまたたえこ、両親は幼い頃に蒸発し私は施設で育った。

親戚もいなければ、友達も誰もいない。

あの時までは、友達も恋人もいたけど皆避けるようになってそれからは、1人で生きている。

復習したいといっても、調べることは出来なかった。被害届けは出しても犯人は見つからない。正直泣き寝入りだ。

それでも、いつかそいつらに…、という気持ちだった。

仕事が終わり、原付のスクーターに乗って自宅のマンションに着く。

夕飯を食べ、ネットで面白い動画をみてる。毎日がそんな日常だ。



「えっ?なに?」

ダイレクトメール?

ポストに怪しい手紙?それにしては可愛い便箋だなー、私の名前も可愛く書いてるし

部屋に入って中をあけると

「貴方を待ってました。お迎えにあがります」

と書いてある。

な、なに!?これなに!?

なんのイタズラ?気味が悪い。

そう思ってゴミ箱に捨てた。

それから数日後

うちのマンションの前に、高級車が止まっていた。

いつもの通り、スクーターを止めマンションに入ろうとすると

「お待ちしてました」

と、車のドアがあいた。

「えっ?」

きれいな顔をした若い男性がいる。そして

「私の大切な人。待ってましたよ」

「な、な、なに!?」

驚きのあまり言葉が籠る。

「多惠子さん、行きましょう」

は?なんで私の名前を…

そしてそのまま、頭がボーとして







「えっ!?」

ここどこ!?

大きな部屋のベットで寝てた私。

左右にキレイな花が生けられてる。

優しい香りに、真っ白な壁。

「お目覚めですか?」

「あっ」

さっきの、車から出てきた人だ。

「あのー、なんですかこれは…、誘拐?私を誘拐しても誰も何もお金なんか」

「何言ってるんですか。私は貴方を妻として迎えにきたんですよ」

「つ、妻!?」

新手の詐欺!?

「ここは、どこですか?」

「ここは、多惠子さんが一番落ち着く所です」

意味解らない。何言ってるの!?

「少し外出てみますか」

部屋を出ると、すぐに大きな庭がみえて、明るい日差しで緑がキレイにみえて池もある素敵な庭だった。

夜…だったよね?夢?

庭の先にはリビングが見える。窓をあけてリビングに入る。

「こういう家に住みたかったんですよね?」

「…え?」

住みたかった!?

あっ、そういえば昔、家の真ん中に庭があって、庭からリビングや自分の部屋とかに行けるような感じの家に憧れるって言ってたきがする。これってそのときの理想通り?

「朝食しましょうか」

優しい笑顔で言う男性。

すると、2人の女性がきてテーブルの上に朝食が準備された。

「ああ」

こんな風にゆっくりと朝食を誰かと食べるのが夢だったな。

「多惠子さん、出掛けますか?」

「え?」

「多惠子さんは、紅茶の葉が好きでしたよね?これから買いに行きませんか?」

確かに好きだった。紅茶の葉の種類をいっぱい買った。その香りを楽しみながら飲むのが幸せにだった。でもそれはあの出来事以降してない。

これは、夢なんだろうな…

「あの…、名前は何て言うんです?」

なら、夢の中なら私の一時の幸せを満喫したい。

「シュウです」

そう言って笑顔を見せる。

家から出ると不思議な空間を感じた。

日本でもない。海外の異国の田舎町なそんな感じもする。でも何か違和感も感じた。

だって日本人?じゃない。東洋人?西洋人?色々いる。

まぁ、夢だしな。

「多惠子さんは、こういう所好きなんだよね?」

「…はい」

好きだけど、夢ってこんなに何でもありなの?好きなものばかり。

そして紅茶の専門店にいき、そこでも好きなものばかり。

大量に購入して店を出ると

「居てもいいんですよ!」

「…え?」

「ここに、ずっといてください」

「あ、あの」

「ここは多惠子さんの世界です。そして俺は貴方を待ってました」

そうだ、シュウさんからは私を待っていたと言われて

「あ、あの、私を何で待ってたんですか?」

夢でも聞いてみたくなった。

「こんな素敵な人はいないから」

どうみても私より10以上は若い。

「会ったことないです」

「私はずっと貴方を知ってます」

ストーカー!?なわけないか。

2人で街を歩きながら丘の木陰に座る。

「俺と結婚してくれませんか?」

「え?」

「ここで貴方と一緒にいたいから」

「本当に貴方を知らない」

知らない男の人にプロポーズ?

「本当に知らない?」

そういうと、ネックレスを私にみせた。

「これ、覚えてない?」

ネックレスってよりも首輪!?





「ごめんね、飼いたいけど飼えないの。これくらいしか出来ない」

近くのペットショップで首輪を買ってつけた。

捨て犬だと保健所に連れていかれるからせめて…

「私ね、この街をでるの。貴方も1人なの?私もずっと1人。そして皆に汚物のような目で見られ、復讐したくっても誰かも出来ない…」

仔犬を抱き締めながら泣く。

「ごめんね、何もしてあげられなくって」

買ってきたドックフードをあげ、何度も頭を撫で

「聞いてくれてありがとう」





「あの仔犬!?」

笑顔で返される。

あの街を引っ越す前日にあった子犬。本当に一緒に連れていきたかった。

「だから、これからは一緒に」

夢にも度がすぎる…でも

「ずっと一緒に…」

抱き締められて

「結婚して一緒にいよう」

仔犬と!?でも、夢だし、こんな若いイケメンと

「夢の中でこんな素敵な…」

「夢じゃないですよ。この世界は多惠子さんがいる世界とは別です。俺はあの時貴方と一緒にいたいと思いました。そしてこの世界で一緒に幸せになりたいと」

私の顔をみて

「この世界では私は貴方を、多惠子さんを守ることができる。」

「でも、私はあの世界で復讐したい人が…」

と言うと

「それなら大丈夫です」

「えっ!?」

「ずっと苦しんでたこと私が代わりにやりましたので」

ど、どういう…!?










「や、やめてくれ!わ、悪かった!昔のことだろう!!時効だろ!」

「いやー!!助けて!!」

1人の女性が囲まれて強姦されてる。そして傷だらけで動けない男が

「わ、悪かったよ!あのときは、ツレがやろうって言い出して言われただけなんだ!真紀まきは、関係ない!」

「今の女性と同じように、昔そう叫んで貴方に襲われた人がいましたよね?」

「ち、違う!俺はやってない!!真紀はやめてくれ!頼む」

「同じように大事な人をあんた達に犯されたんだ!あんただけ幸せになるなんて不公平だろ!」

サングラスをかけ、黒づくめの男が言う。

「あーーー!!!やめろぉーー!!」









「貴方の旦那さんは、昔女性を犯したんです」

「う、嘘よ!そんな…」

「では、こちらを」

写真をみせ、DMAの証拠をみせる。

「被害者の女性の体液から旦那さんのDMAが検出されてます。当時一緒に強姦した人からも証拠はもらってます。これから貴方達家族を社会的に抹殺します。」

「!?」

「1人の女性の人生が変わったんだ。貴方の旦那のせいで。覚悟しといてください」









「殺すことはしません。生き地獄を味わってもらいます」

「な、なにするんだよ!俺はしらねーよ!」

「大丈夫ですよ!みんな同じように苦しませてますから、貴方だけではありませんよ」

「や、やめろ!!俺は知らない!」

「では、お願いします」

「行きましょう」

「おい!やめろ!!連れていくな!」

黒い車に乗せられた男は、この先裏の世界の下働きでしか生きていけないだろう。死ぬまで逃げることが出来ない。






「多惠子さん、凄い綺麗」

「…ありがとう」

私達の結婚式、2人だけで教会に行き式をあげた。

「永遠にこの愛を誓います」

「俺も誓います」

そう言ってキスをする。

この世界で一生生きて行こう!

シュウと一緒にずっとこの世界で…





「では、次のニュースですが40代の女性が行方不明になってます。名前は鎌田多惠子さんです。前日まで仕事を定時まで仕事し、その後スクーターで自宅に向かってることは確認されてます。その後は誰も目撃者はいません。」

「そして、同日に行方不明者が続々と発生しています。松川勇志まつかわゆうじさん、29歳。交際している有本真紀ありもとまきさん、27歳。そして一家でも行方不明の情報があります。道山紀一みちやまきいちさん、30歳、妻の葉子ようこさん、28歳。長女のはるかちゃん、5歳。三上隆二みかみりゅうじさん、29歳。」

「調べによりますと、松川さん、道山さん、三上さんは10年くらい前まではよく交流があったようです。」

「では、その時に何かあったのでしょうか?」

「まだ、その辺は警視庁が捜査中です」

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